V-1とは、第二次世界大戦時、ナチス・ドイツにおいて開発された兵器である。正式名称は Fi 103 であり、V-1 はのちに、おそらく宣伝相ゲッベルスが付けたと言われている名前である。 Vとは報復兵器(フェルゲルトゥングスヴァッフェ、Vergeltungswaffen)を表す単語の頭文字であって、V1とV2の2つが存在する。V-1はパルスジェットエンジンを搭載しており、現在の巡航ミサイルの始祖とも言える存在である。パルスジェットエンジンは、1920年代半ばに開発された新型の推進機械であった。V-1はV-2の開発を行っていたHVPのすぐ西隣の施設でつくられており、V-2の製作に携わっていたドルンベルガーやフォン・ブラウンが知恵を貸したことさえあったと言われている V1-20040830.jpgの博物館に展示されるV-1の模型]]
なお、パルスジェットエンジン本体はアルグス社、誘導装置をジーメンス社、発射台をヘルムート・ヴァルターの会社が担当したので、フィーゼラー社が携わったのは機体本体のみである。
1942年12月、Fw 200コンドルより投下実験、同12月カルルスハーゲンよりバルト海に向けて試射。開発を命じてからわずか6ヶ月というスピードであるが、これはV-2と違い、単純な構造であったことと、V-2がそのほとんどを手探りで進まざるを得ない新技術を大量に導入しなければ完成しない兵器であったこととの差である。こうしてこの機体は、V-2のライバルとなった。イギリスに対する長距離攻撃兵器としてV-2とどちらを採用するかは、新たに発足された長距離攻撃委員会にゆだねられることになった。
1942年5月26日、長距離攻撃委員会の委員はペーネミュンデに集まり、討議を行い、結局どちらも生産という結論に達した。その後、委員は発射見学をするが、このときV-2は50%の成功確率であったにもかかわらず2回中2回成功、かたやV-1は2回中ともに墜落という不運に見舞われる。その後、1944年6月実戦配備となる。実にノルマンディー上陸作戦の1週間後である。
最終的には72%が撃墜、または墜落という有様であった。残りの28%も、ロンドンに到達したのはそのうち9%で、残りの19%は他の地域に落ちることになった。なお、全8,564発中1,912発(22%)はイギリス戦闘機により撃墜、1578発(18%)が対空火器によって撃墜、278発(3%)は阻塞気球に衝突している。結局ロンドンに到達したのは2,340発となった。
9月以降は連合軍がカレー地方に進攻したため、陸上発射を断念、空中発射という方式をとることになる。オランダやベルギーから発進したハインケルHe 111に搭載されたV-1はロンドンを目指して飛んだものの、その到達率は陸上発射よりもさらに低く、6.5%となっていた。
10月に連合軍がベルギーのアントワープを奪取すると、今度はこれに矛先を向けることになる。そして年末までに8,698発を発射している。他にベルギーのリエージュに3,141発、ブリュッセルにも151発が発射された。
1945年3月3日からは、オランダから改良され飛行距離の伸びたV-1が再びイギリスにむけて発射される。全275発を発射し、イギリスに到達したのは125発(45%)で、86発(31%)が対空火器で撃墜、4発は戦闘機で撃墜されている。同月28日、2発がロンドンに到達し、翌29日に最後の1発がハットフィールドに落下したのが、V-1の最後の実戦であった。
実際に発射されたV-1は21,770発にのぼり、さらに発射失敗とされているものが2,448発ある。なお、イギリスの被害は死者および重傷者24,165人であり、ヨーロッパ本土での被害は不明。
そのため、V-1については有効的な兵器ではなかったという評価があてはまると思われる。今日でも巡航ミサイルは戦術兵器にあたるものであって、戦略兵器ではない(ただし、通常弾頭を装備している限りは、である)。それをドイツの劣勢挽回のための超兵器に仕立て上げようとしたことに、そもそもの無理があったのかもしれない。その点において、ゲッベルスが付けた、報復兵器、という名前がふさわしいともいえる。
ところが、技術革新がV-1の後継者である巡航ミサイルの価値を飛躍的に高めた。冷戦時、巡航ミサイルは核弾頭を装備した状態で、潜水艦に搭載され、両陣営の抑止戦略に貢献した。一方V-2は弾道ミサイルとなって、大陸をも跨いで核弾頭を直接打ち込む兵器となって、こちらも抑止戦略に貢献した。どちらも、それら子孫を生み出した効果のほうが、大戦中に上げた戦果よりもはるかに大きいものである。
V-1は、戦術兵器として十分な成果を上げている巡航ミサイルの先鞭を付けた、という点から「時代を先取りしすぎた兵器」といえるであろう。
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