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MRSAは、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Methicillin-resistant Staphylococcus aureus)の略。抗生物質メチシリン」に対する薬剤耐性を獲得した黄色ブドウ球菌の意味であるが、実際は多くの抗生物質に耐性を示す多剤耐性菌である。なお、生物種としてはあくまで黄色ブドウ球菌であるので、生物学的な詳細は同記事を参照のこと。

MRSAの特徴


MRSAは常在菌のひとつであり、健康な人でも鼻腔咽頭皮膚などから検出されることがあるが、基本的には無害である。

ただし、手術直後など抵抗力の低下した状態では感染を起こし、肺炎や腎炎、胃腸炎などを呈する。一旦発症するとほとんどの抗生物質が効かないため治療は困難であり、死の転帰をたどる場合もある。日和見感染院内感染の原因菌として恐れられるゆえんである。

代表的な治療薬はバンコマイシンである。ただし2005年現在、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)やバンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌(VRSA)の出現が報告されていることから、その使用には十分な注意が必要とされている(耐性菌は抗生物質の乱用により出現すると言われている)。

要約すると次のとおりとなる。

  • 多剤耐性の黄色ブドウ球菌である。
  • 健康な人には無害であるが、抵抗力が低下した人には感染を起こす。
  • ほとんどの抗生物質が効かないため、感染症は難治性である。
  • バンコマイシンが有効である。

80%エタノールが消毒薬として有効である(エタノール消毒は芽胞を持たない細菌に有効)。

MRSAの耐性機構


ペニシリン系抗生物質をはじめとするβ-ラクタム系抗生物質は、細菌の細胞壁を構成するペプチドグリカンの合成を阻害することで作用する。これに対して、従来のペニシリン耐性ブドウ球菌はペニシリン分解酵素を産生することで薬剤耐性を獲得した。そこでこれらの細菌に対しても有効な、ペニシリン分解酵素によって分解されない薬剤が開発された。これがメチシリンであり、ペニシリン耐性菌の治療に効力を発揮した。

しかしながらMRSAは、従来のペニシリン耐性菌とは別の戦略を採ることでメチシリン耐性の獲得に成功した。MRSAは従来のブドウ球菌とは異なり、β-ラクタム剤が結合できないペプチドグリカン合成酵素(PBP2')を作ることでβ-ラクタム剤の作用を回避する。このPBP2'というタンパク質はmecAという遺伝子にコードされているが、この遺伝子はDNAカセット染色体と呼ばれる部分に、他の薬剤耐性遺伝子とともに集まっており、ある菌から他の菌へ種を超えて伝達されることが解明された。

MRSAの細菌叢調査


  • 各調査報告詳細に関しては、記載論文・抄録を参考にされたい。
    • 上條篤、横尾英子、高橋吾郎 他:医療従事者鼻前庭部MRSA保菌者における鼻疾患の有無についての検討,日本鼻科学会会誌第44巻2号,p.127-130,2005.
    • 阿部哲士、市川日出勝、竹中信之 他:整形外科病棟における院内感染対策としてのMRSAサーベイランスの現状,日本骨・関節感染症研究会雑誌第19巻,p.22-25,2006.
    • 渡辺朱理、佐藤法仁、苔口進、福井一博:歯科医療従事者および歯学部学生におけるメチシリン耐性ブドウ球菌の保菌状況調査,日本環境感染学会 環境感染第21巻Suppl, p.212,2006.
    • 久保裕義、千葉直彦、横山宏 他:療養型病院における入院患者のMRSA保菌のリスクと医療従事者の意識についての調査,山梨医学第33巻,p.84-87,2005.
    • 高橋尚人、崔信明、矢田ゆかり 他:新生児集中治療室におけるMRSA保菌に関する全国調査,日本小児科学会雑誌第109巻8号,p.1009-1014,2005.
    • 小森由美子、二改俊章:市中におけるメチシリン耐性ブドウ球菌の鼻腔内保菌者に関する調査,日本環境感染学会 環境感染第20巻3号,p.164-170,2005.
    • 平林円、川又攻、宮城伸浩 他:周産期病棟におけるMRSA感染,大阪市勤務医師会研究年報第32号,p.49-50,2005.
    • FujimuraShigeru、KatoSeiichi、HashimotoMotoya et al:Survey of methicillin-resistant Staphylococcus aureus from neonates and the environment in the NICU,Journal of Infection and Chemotherapy第10巻2号,p.131-132,2004.
    • 久保真利子、名護博:老人ホームのMRSA保菌者状況,瀬戸内短期大学紀要第35号,p.31-37,2004.
    • 甘庶志帆乃、北元憲利、加藤陽二 他:一病院の患者および医療従事者におけるMRSA分子疫学調査,感染症学雑誌第79巻臨増,p.134,2005.
    • 江藤由紀、田澤悠、花井美幸:MRSA伝播予防に関する意識と行動変容,東京医科大学病院看護研究集録第25回,p.84-89,2005.
    • 柴田弘子、池野貴子、出口由美 他:看護学生の感染症の履歴認識およびMRSA保菌状況に関する調査,日本環境感染学会 環境感染第20巻Suppl,p.123,2005.
    • 小笠原康雄、大野公一、播野俊江 他:MRSA保菌患者への対応に関する意識調査とその問題点 自施設と病診連携のある施設へのアンケート調査の結果,INFECTION CONTROL第14巻4号,p.382-386,2005.
    • 吉谷須磨子:MRSA感染患者に対する感染看護の評価,感染防止第14巻5号,p.27-29,2004.
    • 馬笑雪、伊藤輝代、WalterPedreira 他:ウルグアイにおける市中獲得MRSAのoutbreak調査,日本細菌学会雑誌第59巻1号,p.214,2004.
    • 伊藤重彦、大江宣春、草場恵子 他:病院職員のMRSA鼻腔内保菌率調査とムピロシンによる除菌,日本環境感染学会 環境感染,第17巻3号,p.285-288,2002.
    • 錦利佳、黒岩みゆき、小高香珠代 他:MRSA感染防止に対する看護婦の認識と行動の実態調査,医療第55巻増刊3,p.508,2001.
    • 伊藤重彦、吉永恵、大江宣春 他:救命センターにおけるMRSA感染(保菌)状況,日本臨床救急医学会雑誌第2巻1号,p.152,1999.

関連項目


感染症 | 微生物学

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