IUPAC命名法(あいゆーぱっくめいめいほう)はIUPACが定める化学用語の命名法のこと。
無機化合物・単体
単体
単体は元素名の前にギリシア語数詞をつけることで命名できる。
- 例) O3〔慣用名 オゾン〕は三酸素(trioxygen)となる。
塩
塩の名称は塩を構成する陽イオンの名前をギリシア語数詞(以下参照)とともに置き、陰イオンをギリシア語数詞とともに置くことで得られる。日本語の場合は酸の場合は酸の名称の次に陽イオンの名前を置き、そうでないばあいは(陰イオン名)化(陽イオン名)で命名できる。
- 例) NaClは塩化ナトリウム(Sodium Chloride)となる。
複数種類の陽イオン、陰イオンないし両方のイオンを持つ場合、アルファベット順に並べる。陽イオン、陰イオンを並べる準は普通の塩と同じである。
- 例) KNaSO4は硫酸カリウムナトリウム(potassium sodium sulfate)となる。
酸性塩においては陰イオンの前にギリシア語数詞+hydrogenをくっつけて表す。
- 例) NaHCO3は炭酸水素ナトリウム(sodium hydrogencarbonate)となる。
有機化合物
有機化合物の命名法はA,B,C,D,E,F,Hの部に分かれて定められており、
1990年に最新の勧告が出た。Aの部は
炭素と
水素のみからなる
炭化水素の命名法で、Bの部は炭素以外の
元素が環を構成している場合の命名法について、Cの部は炭素、水素、
窒素、
カルコゲン、
ハロゲンからなる
官能基を持つ
化合物の命名法について、Dの部はCの部に定められていない官能基を持つ化合物について、Eの部は
立体化学の命名法、Fの部は
天然に存在する有機化合物の命名法、Hの部は
同位体による
置換を受けた化合物の命名法について定めている。
命名法の方針
命名は中心となる
母体(環を含むと母核と呼ばれることもある)化合物の水素を置換基で置き換えた
誘導体として命名される。
母体ないしは置換基もより単純な母体の誘導体として命名し、その起点となるのは炭化水素または基本複素環系化合物である。
誘導体として命名はつぎの6つの命名法(置換命名法, 基官能命名法, 付加命名法, 減去命名法, 接合命名法, 代置命名法)のいずれかを使用する。
1951年までのIUPAC命名規則では置換命名法での統一を目指していたが、1969年以降の規則では6つの命名法と慣用名を容認している。
ただし、減去命名法、接合命名法、代置命名法は置換命名法, 基官能命名法, 付加命名法で命名した場合、不必要に複雑な命名になる場合に使用すべきである。
またIUPACでは「置換命名法を他の命名に優先して用いる」ように勧告している。
以上の方針で命名すると、母体と一つないしは複数の置換基が選択されるが、IUPAC命名法で指定された置換基の優先順位にしたがって置換基の中から一つの主基(principal group)が選抜される。
主基は母体の接尾語となり、それ以外の置換基は頭文字の辞書順(ABC順)に接頭語として母体名に連結される。
慣用名は母体名や置換基名として使用が可能であるが、慣用名を使った置換基の一部(たとえばisoprolyl)は、更なる誘導体化の命名が禁止されているものがある(×1-chloroisopropyl- → ○1-chloroprop-2-yl-)。
置換命名法
置換命名法(
ちかんめいめいほう,
substitutive nomenclature)は、母体の水素を
特性基で置換した命名法である。
特性基(characteristic group)とは、官能基を特徴づける原子団(C=0など)で官能基の部分をそのように呼ぶ。
例) ethane + chloro(基)×3 = 1,1,2-trichloroethane
基官能命名法
基官能命名法(きかんのうめいめいほう,
radicofunctional nomenclature)は、置換基の名称と官能基種類の名称を連結する命名法である。
例) methyl(基)+ alcohol(種類名) = methyl alcohol
付加命名法
付加命名法(
ふかめいめいほう,
additive nomenclature)は、母体に他の原子が付加したことを表す命名法である。
例) furan(二重結合) + H×4(水素原子) = tetrahydrofuran
減去命名法
減去命名法(
げんきょめいめいほう,
subtructive nomenclature)は、母体原子が除去されたことを表す命名法である。
例) ribose(五炭糖) - O(酸素原子) = deoxyribose
接合命名法
接合命名法(
せつごうめいめいほう,
conjunctive nomenclature)は、2つの母体のそれぞれから1つの水素を取り除き、そこで接合させたことを表す命名法である。
例)接合命名法例.jpg
註) 置換命名法ではcyclohexylmethanolとなる。
代置命名法
代置命名法(
だいちめいめいほう,
replacement nomenclature)は、母体の
炭素骨格を他の元素で置き換えたことを表す命名法である。
例)代置命名法例.jpg
註) DBUを置換命名法+付加命名法で命名すると、2,2,3,3,4,4,5,5,8,8,9,9,10,10,11,11-hexadecahydropyrio*1,3-diazepine
一般規則
官能基の優先順位
化合物の名前において、官能基の優先順位は以下のとおりである。化合物が複数の官能基を持つとき、優先順位の高い官能基が接尾辞となり、優先順位の低い官能基は接頭語として置換命名法を用いてあらわす。
1.カルボキシル基 - 2.無水カルボキシル基 - 3.エステル結合 - 4.アミド結合 - 5.シアン基 - 6. アルデヒド基 - 7.カルボニル基 - 8. 水酸基 - 9.アミノ基 - 10.イミノ基 - 11.エーテル結合 - 12. ニトル基 - 13. ハロゲノ基
主鎖の決定
3つ以上の炭素と結合している炭素があるとき、化合物は複数の
炭素鎖を持つ。このとき、鎖を構成する炭素が最も多くなるような鎖を
主鎖とする。主鎖でない別の炭素鎖は、水素を
アルキル基で置換したものとみなす。
- 例) CH3-CH2-CH2-CH(C2H5)-CH3 は2-ethylpentaneではなく、3-methylhexaneとなる。
位置の決定
複数の原子が連なっている化合物において官能基の位置を示す際、主鎖の官能基のうち、もっとも末端に近いものを選び、その官能基から一番近い末端を1番とし、順に定める。単環であれば2つ以上の官能基を持つとき、官能基の優先順位に従って最も優先順位が高いものの位置を1番と定め、次に優先順位の高い官能基の方向へ順に番号をつけていく。
ギリシア語数詞
置換基の数を示すときに使うギリシア語数詞は以下のとおりである。
| • 1 | モノ | mono-, (hen-;他の桁と組み合わせる場合)
|
| • 2 | ジ | di-, (do-;他の桁と組み合わせる場合)
|
| • 3 | トリ | tri-
|
| • 4 | テトラ | tetra-
|
| • 5 | ペンタ | penta-
|
| • 6 | ヘキサ | hexa-
|
| • 7 | ヘプタ | hepta-
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| • 8 | オクタ | octa-
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| • 9 | ノナ | nona-
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| • 10 | デカ | deca-
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| • 11 | ウンデカ | undeca-
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| • 12 | ドデカ | dodeca-
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| • 20 | イコサ | icosa-
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| • 21 | ヘニコサ | henicosa-
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| • 22 | ドコサ | docosa-
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| • 30 | トリアコンタ | triaconta-
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| • 40 | テトラコンタ | tetraconta-
|
| • 50 | ペンタコンタ | pentaconta-
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| • 60 | ヘキサコンタ | hexaconta-
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| • 70 | ヘプタコンタ | heptaconta-
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| • 80 | オクタコンタ | octaconta-
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| • 90 | ノナコンタ | nonaconta-
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| • 100 | ヘクタ | hecta-
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| • 200 | デクタ | dicta-
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| • 300 | トリクタ | tricta-
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| • 400 | テトラクタ | tetracta-
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| • 500 | ペタンクタ | pentacta-
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| • 600 | ヘキサクタ | hexacta-
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| • 700 | ヘプタクタ | heptacta-
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| • 800 | オクタクタ | octacta-
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| • 900 | ノナクタ | nonacta-
|
| • 1000 | キラ | kilia-
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| • 2000 | ジリア | dilia-
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| • 3000 | トリリア | trilia-
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| • 4000 | テトラリア | tetralia-
|
| • 5000 | ペンタリア | pentalia-
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| • 6000 | ヘキサリア | hexalia-
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| • 7000 | ヘプタリア | heptalia-
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| • 8000 | オクタリア | octalia-
|
| • 9000 | ノナリア | nonalia-
|
- 上記以外は一、十、百、千の桁の該当する数詞をこの順で結合する。
- 例) 2567 = hepta- + hexaconta- + pentacta- + dilia- = heptahexacotapentactadilia-
有機官能基
アルキル基
アルキル基(C
nH
2n+1-)(alkyl)は、等しい炭素骨格を持つ
アルカンの語尾aneをylとすることでその名を得る。n=0のときは単に水素原子という。
- 例) C5H11-(直鎖)は、ペンチル基(pentyl)となる。
アルキレン基
アルキレン基(-C
nH
2n- アルカンの両端の炭素原子からひとつずつ水素原子が抜けた形)(alkylene)は、等しい炭素骨格を持つ
アルカンの語尾aneをyleneとすることでその名を得る。
- 例) -CH2-CH2-CH2-はプロピレン基(propylene)となる。
アシル基
アシル基(R-CO-
カルボン酸から水酸基を取り除いた形)(acyl)は、CO-をCH
3に置き換えた炭化水素の語尾neをnoylとすることで命名できる。
- 例) CH3(CH2)4CO-はヘキサノイル基となる。
脱水素アルコール基
アルコールの
水酸基から水素を取り除いた官能基(R-O-)は、さらに酸素を取り除いた炭化水素基の語尾にoxyと続けて命名する。ただし、メチル、エチル、プロピル及びブチル基についてはメトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシと名づける例外が許されている。
- 例) C5H11O-(直鎖)はペンチロキシ基(pentyloxy)となる。
鎖式有機化合物
飽和炭化水素(アルカン)
アルカン(C
nH
2n+2)(Alkane)は、
炭素の個数により次のように名づけられる。メタンからブタンまでは慣用名を用い、それ以降は
ギリシア語の数字の語尾をaneとすることでその名を得られる。
不飽和炭化水素(アルケン)
アルケン(C
nH
2n)(Alkene)は、同じ炭素数の直鎖アルカンの語尾aneをeneとすることでその名を得られる。ただし、二重結合している炭素原子の位置を数字で表す。この数字はできるだけ小さくしなければならない。対称性を持たないアルケンは、これらの前に幾何異性体を区別するためにcisあるいはtransを置く。
- 例) CH3CH2CH=CHCH3 では、2-ペンテン(2-pentene)となる。
不飽和炭化水素(アルキン)
アルキン(C
nH
2n-2)(Alkyne)は、同じ炭素数の直鎖アルカンの語尾aneをyneとすることでその名を得られる。ただし、
三重結合している炭素原子の位置を数字で表す。この数字はできるだけ小さくしなければならない。
- 例) CH3(CH2)3C≡CCH2CH3 では、3-オクチン(3-octyne)となる。
その他の不飽和炭化水素
二重結合や三重結合を複数含んでいる炭化水素は二重結合又は三重結合している炭素の位置をできるだけ小さい数字で表し、同じ炭素数のアルカンの語尾aneを結合の数のギリシア語(2=di 3=tri 4=tetra 5=penta …)とene又はyneで表す。
- 例) CH3CH2CH=CHCH=CHCH3 では、2,4-ヘプタジエン(2,4-heptadiene)となる。
ハロゲン化アルキル
ハロゲン化アルキル(C
nH
mX
l)(Halogenoalkane)は、ハロゲン化した
炭素の位置を数字で表し、ハロゲンがフッ素であればfluoro、塩素であればchloro、臭素であればbromo、ヨウ素であればiodoを対応する炭化水素の前につける。水素が複数のハロゲンで置換されているのであれば、数詞を用いてあらわす。(置換命名法)
- 例) CH3(CH2)3Clは1-クロロブタン(1-chlorobutane)となる。
あるいは、炭化水素基名の後にFluoride、Chloride、Bromide、Iodideをつけることで命名できる。(基官能命名法)
- 例) CH3(CH2)3Cl は塩化ブチル(butyl chloride) となる。
また、化合物の全ての水素がハロゲンで置換されているときは、Perを用いてそのことを表すことができる。
- 例) CBr3-CBr3 はペルブロモエタン(Perbromoethane)となる。
アルコール
アルコール(ROH)(alcohol)は、OHをHに置換した炭化水素の語尾eをolとすることでその名を得られる。先端以外に
水酸基が結合している場合は結合している炭素原子の位置を数字で表す。複数の水酸基を持つ場合は、OHをHに置換した炭化水素の語尾eを水酸基の数のギリシア語(2=di 3=tri 4=tetra 5=penta …)とolとすることでその名を得られる。
- 例) CH2(OH)-CH(OH)-CH2(OH)〔慣用名 グリセリン〕では、1,2,3-プロパントリオール(propane-1,2,3-triol)となる。
水酸基よりも優先する官能基があるとき、水酸基を置換名として表さなければならない。そのときは、水酸基の位置を数字で表し、水酸基の数を数詞であらわし、ヒドロキシと続けた後に対応する化合物の名前をつける。
- 例) CH3-CH(OH)-CHOは2-ヒドロキシプロパナール(2-hydroxypropanal)となる。
炭化水素の官能基を用い、後ろにalcoholとつけることで命名することもできる。
- 例) CH3-(CH2)2-OHはプロピルアルコール(propyl alcohol)となる。
エーテル
エーテル(R-OR')(ether)は、2つのアルキル基のうち、炭素数の少ない方をアルコールとみなし、そのアルコール名の語尾lをoxyとしもう一方のアルキル基のエーテル結合の部分を水素に置き換えたものを続けることでその名が得られる。
- 例) CH3-O-C2H5〔慣用名 エチルメチルエーテル〕では、メトキシエタン(methoxyethane)となる。
アルデヒド
アルデヒド(RCHO)(aldehyde)は、CHOの酸素をH
2で置換した炭化水素の語尾eをalとすることでその名が得られる。複数の
アルデヒド基を持つ場合はアルデヒド基のある炭素の位置をできるだけ小さい数で表しCHOの酸素をH
2で置換した炭化水素の語尾eをアルデヒド基の数のギリシア語(2=di 3=tri 4=tetra 5=penta …)とalとすることでその名を得られる。
- 例) HCHO〔慣用名 ホルムアルデヒド〕ではメタナール(methanal)となる。
ケトン
ケトン(R-CO-R')(ketone)は、
カルボニル基の炭素の位置の数字を出きるだけ小さい数字で表し、COの酸素をH
2で置換した炭化水素の語尾oneとすることでその名が得られる。複数の
カルボニル基を持つ場合はカルボニル基の数とCOの酸素をH
2で置換した炭化水素の語尾eをカルボニル基の数のギリシア語(2=di 3=tri 4=tetra 5=penta …)とoneとすることでその名を得られる。
- 例) C2H5-CO-CH3 2-ブタノン(butane-2-one)
カルボン酸
カルボン酸(R-COOH)(carboxylic acid)は、
カルボキシル基のOとOHをH
3で置き換えた炭化水素の語尾eをoic acidとすることでその名を得られる。両端がカルボキシル基であれば語尾をdioicacidとして命名できる。あるいは、置き換えた炭化水素の後ろにカルボキシル基の位置をできるだけ小さい数字であらわし、続けてカルボキシル基の数のギリシア語(2=di 3=tri 4=tetra 5=penta …)、最後にcarboxylic acidを添えることでその名を得られる。
- 例) HOOC-(CH2)2-COOHはブタン-1,4-ジカルボン酸(butane-1,4-dicarboxylic acid)となる。
カルボン酸が末端に存在しないとき、あるいはさらに優先する官能基があるときはcarboxyを用いて命名することができる。
- 例) HOOC-(CH2)2-CH(COOH)-C2H5は4-カルボキシヘキサン酸(4-carboxyhexanoic acid)
カルボン酸塩
カルボン酸と
カチオンとの塩(RCOO
-B
+)(Alkanoic salt)は、カチオンの名前の後にカルボン酸のプロトン脱離イオンateに変えてつなげることで命名する。
- 例) C2H5-COO-K+はプロパン酸カリウム(Potassium propanoate)となる。
エステル
エステル(RCO-OR' アルコールと酸が脱水縮合した形)(ester)は、アルコールのOHを取り除いた
アルキル基にカルボン酸の語尾ic acidをカルボン酸のプロトン脱離イオンateに変えてつなげることで命名する。
- 例) C2H5-COO-C2H5〔慣用名 プロピオン酸エチル〕はプロパン酸エチル(ethyl propanoate)となる。
ハロゲン化アシル
ハロゲン化アシル(R-COX)(acyl halide)は、アシル基(上記参照)にフッ素ならばFluoride、塩素ならばChloride、臭素ならばBromide、ヨウ素ならばIodideをつけることで命名できる。
- 例) CH3-COClは塩化エタン酸(ethanoyl chloride)となる。
カルボン酸無水物
カルボン酸無水物(RCO-O-OCR')(alkanoic anhydride)はR=R'のとき、カルボン酸の語尾acidをanhydrideと置き換えて命名する。
- 例) H5C2-CO-O-OC-C2H5はプロパン酸無水物(propanoic anhydride)となる。
加水分解して生じるカルボン酸からacidを取り除き、anhydrideと続けて命名する。
- 例) H3C-CO-O-OC-C2H5はエタノイックプロパン酸無水物(ethanoic propanoic anhydride)となる。
アミン
アミン(R
1-NR
2R
3)(amine)は、
窒素に結合しているアルキル基にamineと続けることでその名を得られる。窒素に複数のアルキル基が結合しているときは置換基を優先順位に基づいてつなげ、最後にamineを添えることでその名を得る。複数の
アミノ基と結合しているときは結合している炭化水素の次にアミノ基と結合している位置を数字で表し、アミノ基の数をギリシア語(2=di 3=tri 4=tetra 5=penta …)をつなげ最後にamineを添えることでその名を得る。
- 例) CH3NH2はメチルアミン(methyl amine)となる。
ニトリル
ニトリル(R-CN)(nitrile)は、
シアノ基を水素に置き換えた炭化水素の名前の前にシアノ基の位置を示す数字を置き、語尾にnitrileをつなげる事でその名を得る。複数の
シアノ基と結合しているときは結合している炭化水素の次にアミノ基と結合している位置を数字で表し、アミノ基の数をギリシア語(2=di 3=tri 4=tetra 5=penta …)をつなげ最後にnitrilを添えることでその名を得る。
- 例) C2H5CH(CN)-C2H5は3-ペンタンニトリル(3-pentanenitrile)となる。
チオール
チオール(R-SH)(thiol)は、SHをHに置換した炭化水素の語尾にthiolと繋げることでその名を得られる。先端以外に
チオール基が結合している場合は結合している炭素原子の位置を数字で表す。複数のチオール基を持つ場合はSHをHに置換した炭化水素の語尾にチオール基の数のギリシア語(2=di 3=tri 4=tetra 5=penta …)とthiolと繋げるこでその名を得られる。
- 例) CH3-CH(SH)-(CH2)2-CH3は2-ペンタンチオール(2-pentanethiol)となる。
チオール基よりも優先する官能基があるとき、チオール基を置換名として表さなければならない。そのときは、チオール基の位置を数字で表し、チオール基の数を数詞であらわし、mercaptoと続けた後に対応する化合物の名前をつける。
- 例) CH2(OH)-CH(SH)-(CH2)2-CH3は2-メルカプト-1-ペンタノール(2-mercapto-1-pentanol)となる。
環式有機化合物
環式飽和炭化水素(シクロアルカン)
シクロアルカン(C
nH
2n n≧3 閉じた環構造)(cycloalkane)は、環を構成する炭素と等しい数の炭素を持つアルカンの名前のまえにcycloを置くことでその名を得る。
- 例) (C4H8 閉じた環構造)はシクロプロパン(cyclopropane)となる。
スピラン
スピラン(R>C
アルカンの名前を語尾につける。そしてそれらの前にスピランであることを示すspiroを前におくことで命名する。
- 例) シクロペンタンとシクロヘキサンが炭素ひとつを共有しているとき、スピロ*ウンデカン(spiro*undecane)となる。
アヌレン
アヌレン((-CH=CH-)n n≧3 閉じた環構造)(annulene)は、環を構成する炭素を大括弧で示し、その後にアヌレンとつなげる事でその名を得る。
- 例) ((-CH=CH-)14 閉じた環構造)は*-アヌレン(*-annulene)となる。
ラクトン
ラクトン(-CO-O-(C2)n 閉じた環構造)(lactone)は、環を構成する炭素数を前に出し、炭素数が等しい炭化水素の語尾にlactoneをつけることでその名を得る。
- 例) (-O-CO-(CH2)6- 閉じた環構造) 〔慣用名 ε-カプロラクトン〕は6-ヘキサンラクトン(6-hexanelactone)
ラクタム
ラクタム(-NH-CO-(C2)n 閉じた環構造)(lactam)は、環を構成する炭素数を前に出し、炭素数が等しいアルカンの語尾にlactamをつけることでその名を得る。
- 例) (-NH-CO-(CH2)6- 閉じた環構造) 〔慣用名 ε-カプロラクタム〕は6-ヘキサンラクタム(6-hexanelactam)
命名の実際
有機化学編
IUPAC命名法がどのように適用されるかを理解する為に、Penicillin Gの命名を段階を追って説明する。
構造式Penicillin G.JPG
Step1 母核の決定
チエナム環が中心なので、これを基幹にして命名する。チエナムは、慣用名(trivial name)で且つIUPAC非推奨なので、組織名(systematic name)を使用する。azete環とthiazole環との縮合複素環に水素を置換しても組織名にはなるが(2,2,3,3,4,5,5,6,6,7-nonahydro*azetothiazole)、不必要に長くなるので採用しない。
したがって二環系炭化水素に代置命名法(Replacement nomenclature)を適用する。母核となる炭化水素は
IUPAC命名step1.jpg
になる。
Step2 代置命名法の適用
二環系炭化水素にthiaとazaを置換したラクタムなので、命名は次のようになる
IUPAC命名step2.jpg
位置番号は、最大原子番号のSを起点にNに振られる位置番号が小さくなる向きに回すので、上の図のようになる。
Step3 置換基の命名(その1: チエナム環の命名)
Penicillin Gは、チエナム母核のフェニル酢酸誘導体なので、まずチエナム環の命名を完成させる。
2位に二つのメチル基、3位にカルボキシル基そして6位にアミノ基があるので、
IUPAC命名step3.jpg
である。
この段階で3,6,7位の立体配置が決まるが、側鎖の命名が完了していないので立体配置の命名をしてはならない。
Step4 置換基の命名(その2: 誘導体の命名)
6位のフェニル酢酸アミド基を命名すると
IUPAC命名step4.jpg
となる。これで立体配置以外は決定した。
Step5 立体配置の命名(命名の完成)
立体配置を決定するルールの適用を判りやすくする目的で、ルールに関与する原子と結合だけ抜き書きを示す。
まず3位の立体配置から決定する。
これまでの図の配置だと、最小の置換基が手前に来るので、いったんひっくり返して図示すると、
IUPAC命名step5c.jpg
と判る。
次に図の6,7位は最小の置換基が奥を向いていたので、
IUPAC命名step5a.jpg IUPAC命名step5b.jpg
以上を纏めて命名の先頭に立体配置命名を付けると次のようになる。
IUPAC命名step5.jpg
話題の展開上、ラクタムのカルボニルが主基(principal group)の様に扱ったが、置換基間には優先順位があり、この場合はカルボン酸が主基にふさわしい。
したがって、5位のカルボニルを接頭語に回し、3位を主基にすると、
(3S,6R,7R)-6-phenylacetylamino-2,2-dimethyl-5-oxo-1-thia-4-azabicyclo*-heptan-3-carboxylic acid
となる。
IUPAC命名法の一覧
外部リンク
化学
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