Honda IMAシステム(ホンダ・アイエムエー・システム、Honda Integrated Motor Assist System)とは、本田技研工業が開発した小型・普通乗用車用ハイブリッドシステムである。
概要
Honda IMAシステム(以下、IMA)は、
ガソリンエンジン(以下、エンジン)と
電気モーター(以下、モーター)の双方の動力源を持つハイブリッドシステムである。このIMAは、ハイブリッドシステムの種類としては、エンジンとモーター両方が並行して駆動する、いわゆる
パラレル型に分類される。モーター駆動に必要な
電力は、自動車の制動、巡航運転時に発生するエネルギーを回生、余剰エネルギーをモーターが
発電機となって回収し、
バッテリーに
充電する形で得るため、外部から充電する作業は必要としない。よって日常のエネルギー補給は、従来の
自動車と同様、
ガソリンの給油のみである。
IMAは、主動力源はエンジンであり、モーターは必要に応じてアシストする形で作動する。具体的にはトルクを要求する発進、加速時、つまりエンジンではトルクが不足する状況時にモーターが駆動して、エンジン単独時以上のトルクが発揮されるように作られている。一方で、エンジン単独で発生すべきトルクがモーターの補完を受けて発生できるため、無駄な馬力も不要であるし、特に発進時の燃費が改善できるようになった。この点に加え、停車時に作動するオートアイドルストップシステムと、IMAに採用されているエンジンそのものが有する低燃費性能により、燃費の面で非常に有利なシステムとなっている。
また、本質的にモータが動的フライホイルの役目をなすため、エンジンの回転は非常に滑らかなものとなっている。
(これについては、ぜひ、近隣の販売店で試乗されることをお勧めする。)
2005年現在日本においては、インサイト、シビックハイブリッドの2車種にこのIMAが採用されて販売されており、北米においては、さらにアコードハイブリッドを加えた3車種のIMA採用車種が販売されている。ちなみに日本でのIMA採用車種、インサイト、シビックハイブリッドの燃費性能は、国土交通省の平成16年燃費の良いガソリン乗用車ランキングの総合ランキングで1位・3位に入るほどの評価を得ている。ランキングにおけるそれぞれの燃費は10・15モード燃費値で、1位のインサイトが36.0km/L、3位のシビックハイブリッドが31.0km/Lである。一方で北米で販売されているアコードハイブリッドは、V6・3.0Lと大排気量のエンジンながら、VCMなどを採用することでエンジンそのものも低燃費であり、さらにIMAを組み合わせることで、非ハイブリッドのV6・3.0Lエンジンに対し15馬力上回る255馬力の出力を発揮しつつも、燃費は非ハイブリッドのシビックと同等という低燃費性能を得ている。
構成
IMAにおいては、主動力源はあくまで
FF横置きのエンジンであり、それにモーター・バッテリー等のモーターアシスト機構を組み込んで、システムが作り上げられている。つまりモーターは補助動力としての利用という考え方で設計されている。モーター・バッテリーは小型・軽量なものを採用しているため、他社製のハイブリッドシステムと比較してもシンプルなものとなっている。
IMAを大きくエンジン・モーター・バッテリーに分けて、以下にそれぞれ著述する。
エンジン
超低燃費を図るべく開発されたIMAであるが、上述のようにモーターは補完動力で、主動力はあくまでエンジンであるため、超低燃費を狙うには必然的にエンジン単体で優秀な燃費性能を発揮することが要求されることとなる。
まず1997年に発表されたIMAに採用されたエンジンは、VTEC機構とガソリン直噴機構を採用して低燃費を図った直列3気筒SOHC1.0Lリーンバーンエンジンであった。その後1999年に発売されたインサイトにも、基本的にはこのエンジンが採用され驚異的な低燃費を達成している。
一方、2001年に発売されたシビックハイブリッドには、直列4気筒SOHC1.3Lリーンバーンエンジンが採用されているが、これには同年発売されたフィットのエンジンにて初登場した新機構i-DSIを採用し、なおかつモーターとの連携を考慮すべく気筒休止VTECシステムをも投入、樹脂製パーツや超小型パーツ等を導入して軽量化も図られている。ちなみに気筒休止VTECシステムとは、自動車の減速時に効率良くモーターがエネルギーを回生できるよう、4気筒のうち3気筒のバルブをVTEC機構にて休止させることによってエンジン出力と拮抗しないようにし、エンジンのフリクションとポンピングロスのみの抵抗で、エネルギーの回生ロスを低減するよう設計されたものである。
このシステムの信頼性の検証を受け、2005年には、全気筒休止システムに進化し、現在にいたっている。
気筒休止システムにおける損失は、比熱比と(発生排ガスの質から、1. 3~1. 4程度)圧縮比から、最終的に損失となって現れる量は、ロングストロークエンジンのほうが多くなる。
停止時からの加速は、ハイブリッドにおいては、モータの強大なトルクでエンジン単体よりはるかにすぐれているので、今後も、ロングストローク型からボア型エンジンに開発の方向は、進んでいくものとおもわれる。
このことは、冬季の積雪道でも、絶対的に発進がしやすいことを意味するので、0-400加速性能などと違う視点で重要な利点となる。
VSAシステムとハイブリッドエンジンを搭載すれば、一般的には、4WDを必要とする走行は、きわめて限られてくるとおもわれる。
北米で発売されているアコードハイブリッドは、V型6気筒SOHC3.0Lエンジンと上記2車種と比較して大排気量のエンジンを搭載しているが、低燃費技術のi-VTECとVCM(可変シリンダーシステム)を採用、VCMによって巡航時片側3気筒のみで駆動することによって低燃費を実現している。
2005年に発売された2代目シビックハイブリッドでは基本は初代と同じ1.3Lエンジンであるが3ステージi-VTECとなり全気筒休止も可能となった。全気筒休止により回生の効率向上、モーターのみでの走行モードの追加がなされ、3ステージi-VTECによる低速カム高速カムの切り替えによりエンジン出力が向上している。また、結果的にNOX対策向上をも含め、リーンバーンではなく理論空燃比に近づいた。
モーター
薄型
DCブラシレスモーター(直流電動機)を採用している。使用する
電圧は144Vである。サイズは幅が60mmと薄型で軽量であり、それをエンジンに直結させている。エンジン直結という性格上,プリウスなどと比較して高速型モータである。また,同様の理由でレイアウト上,軸方向の薄型化が必須である。このため,軸方向が短い集中巻で,リラクタンストルクを利用しない表面磁石式モータ(SPM)の設計思想になっている。始動/停止と頻繁に繰り返されるであろうことを考慮し、ブラシレス化することによって耐久性を高めている。エンジンでは車種によって互いに違うものが搭載されているのに対し、モーターに関しては、どの車種においても上述の概要を有するものが一貫して採用されている。しかし、無論モーターの改良は行われており、シビックハイブリッドのモーターを例に挙げると、ローターを焼結拡散結合製法なる製法で製造したり、銅線の形状を丸から四角にすることで高密度化を図ったり,内部の磁気回路に改良の手を加えることで、従来のインサイト用のモーターと比較し、アシストトルク・回生トルク共に約30%向上したという。
144Vという電圧は、国内の法律により以前制限されていた電圧であり、法律の改正を受け、トヨタは、現行のハイブリッドの使用電圧は既に前モデルより上昇させている。動力回生性能の向上においては、電圧は現行より高いほうが、発生出力に対しコスト的に廉価に構成ができるので、将来的に600V前後までは、ドライブ電圧は順次あがっていく方向にある。ハイブリッド車らしい運転モードには,現在のモータ出力14kWよりも大きな,50kW程度は必要であろう。
バッテリー
1997年のIMA発表当初の
コンセプトカーには、ウルトラキャパシタと名付けられた蓄電池を採用していた。ウルトラキャパシタとは一種の
コンデンサであり、充放電時のエネルギーロスが少ない・充電時間が短い・寿命が長い、と長所が多く、現在主流の化学反応を利用して蓄電するバッテリーに代わる次世代の蓄電装置と言われている。しかしコストが非常に高いのが最大の難点であり、量産車のインサイト以降はウルトラキャパシタの採用は見送られている。
ただし、大容量低インピーダンスのキャパシターはバッテリーの等価インピーダンスを下げる目的で現行のどのハイブリッド車のパワーユニットにも必ず搭載されている。
1999年に登場したIMA初の量産車であるインサイトに採用された蓄電装置はキャパシタに代わって、目新しさは無いもののコストは遥かに低い、ニッケル水素(Ni-MH)電池がIMAバッテリーと名付けられ採用されている。電池は円筒形モジュールであり、個々のセルが20個直列に接続されて1つのユニットを構成し、3時間放電率で6.0Ahの容量を持つ。ちなみにバッテリーはパナソニックEVエナジー株式会社製である。モーター同様小型化が図られ、ラゲッジスペース下・後輪の間のスペースに設置されている。そしてこのバッテリーのそばにはPCU(パワーコントロールユニット)が配置されている。これはモーター・バッテリーを制御する装置であり、モーター・バッテリーの性能を最大限発揮できるようにする、IMAの頭脳のようなものである。
シビックハイブリッド用のバッテリーもニッケル水素(Ni-MH)電池であり、概要は、上述のインサイト用のバッテリーに関する概要とは特に変わっていない。しかし、改良は様々な面で図られている。まずIMAバッテリーは更なる小型化で容積を約30%削減し、性能向上も図られたという。このIMAバッテリーにPCUを統合、IPU(インテリジェントパワーユニット)と名付けられユニット化し、電装ユニット全体の容積を約50%削減できたという。そしてこのIPUをリヤシート裏に沿って設置。コンパクト化のおかげでIPUの後ろのトランクスペースはIPUによって犠牲にならず、充分なスペースが確保できるようにした。
動作
発進
- エンジン:ON モーター:OFF
- 発進はエンジンから発生する駆動力のみで走り始める。モーターによるアシストは無い。ただし発進直前までオートアイドルストップシステムによってエンジンが停止していた場合、エンジンを始動させるためにモーターが回転する。
- 現行のIMAは全気筒休止システムに進化しており、発進時もモータから出力を得るシーケンスに変更されている。
加速
- エンジン:ON モーター:ON(駆動)
- 加速のためのトルクを得るためにモーターも駆動してエンジンをアシスト。特にエンジンが苦手とされる低速トルクは、モーターにとっては得意分野であるため、モーターによるアシストは非常に効率的である。エンジンに無理な負担が掛からないため、燃費の面でも有益である。
巡航
- エンジン:ON モーター:OFF
- 基本的にエンジンからの駆動力のみで巡航走行をする。モーターは停止状態となり、車両駆動に関与しない。巡航時の燃費対策は、エンジンの低燃費技術に依存することとなる。しかし巡航時からアクセルを踏み込んで加速状態となれば、再びモーターはアシストを開始する。
減速・制動
- エンジン:ON モーター:ON(発電)
- 従来の自動車では捨てていた、減速・制動する際に発生するエネルギーだが、IMAではモーターが発電機となって電気を生み出すことによって減速・制動エネルギーを回生している。発電した電気は、バッテリーに充電することによって、次回モーター駆動時のエネルギーを確保する。気筒休止VTECシステム搭載エンジンの場合は、減速・制動時はエンジン駆動を1気筒のみで行う。これによってエネルギー回生効率が高まるようにしている。
(前述のように、現在は全気筒休止に進化している)
停車
- エンジン:OFF モーター:OFF
- モーターは無論ながら、エンジンもオートアイドルストップシステムによって停止することによって、無駄な燃料消費をカット。ただし、次回モーター駆動時に必要な電力が不足している場合には、例外的にエンジンが回転してモーターを回し、必要な電力が確保できるまで発電を行う。
トヨタ・THSとの比較
数あるハイブリッドシステムの中で、IMAとともにに代表的なものといえば
トヨタ自動車の
THS(Toyota Hybrid System)が挙げられるだろう。ここでは、IMAをTHSと比較してみる。
なおTHSの詳細はトヨタ・プリウスを参照されたし。
カテゴリの差異
IMAは上述のように、エンジン・モーター両方が並行して駆動する「パラレル型」と呼ばれるハイブリッドシステムのカテゴリに入る。一方のTHSは、IMAのようにエンジン・モーター両方が並行して駆動することもできるが、エンジンの駆動力を発電機に送って発電し、その電力でモーターを駆動させて車輪に伝達する(つまりエンジンは直接車両駆動に関与しない)ハイブリッドシステム方式である「
シリーズ型」の性格をも備える。すなわち「シリーズ・パラレル併用型」もしくは「スプリット型」と呼ばれるカテゴリに分類される。つまりIMAとTHSは、カテゴリだけでも明確な違いが見られる。
開発思想の差異
これもIMAでは繰り返し触れているが、主動力はあくまでエンジンであり、モーターは補助動力としてエンジンをアシストするという考え方で開発されている。つまりエンジン特性の改善と省エネが目的である。
しかしTHSだと趣が大分異なる。THSはシリーズ・パラレル併用型と記したが、これはシリーズ型・パラレル型両方の特徴を使おうということなのである。エンジン・モーターの関係も、THSでは決してどちらが主/補助動力かを厳密に区別していない。
エンジンと発電部とモーター駆動部が個々独立してあることにより、既存の発電、モーター特性にあわし、条件のよい回転域を確保でき、機構は複雑になるものの、エネルギーの変換という観点から、設計自由度は増すことになる。
このため,後者のTHS方式はモータのみで走行するハイブリッド車らしい運転ができるという新しい魅力を打ち出そうとしており,前者はあくまで燃費向上が目的である。
構成の差異
IMAがパラレル型を採用し、モーターを補助動力という位置付けにしているのは、システムの小型・軽量・シンプル性によって車両へのシステム導入の容易さ狙ってのもので、現にIMAにはその特徴が表れている。基本構成はエンジン・モーター・バッテリー・PCU(パワーコントロールユニット)などの制御機器である。特にエンジン以外は小型・軽量であるが、その分性能はTHSと比べて控えめになってしまう。対してTHSの基本構成はエンジン・モーター・バッテリー・PCUに加え、発電機(IMAはモーターが発電機代わりをする)となっている。THSは上述のような性格から、IMAと比較するとどうしても大型・複雑となってしまう。ただし、THSにはエンジンが苦手な低回転時のトルクをエンジン回転(速度と関係なく最適な回転数となる)=>発電=>モーターというルートで稼げる利点がある。
モーター・バッテリーの出力・容量は、目指す目的がことなるため、IMAのものより一般的に上になる。
アウトバーンの走行がメインな欧州のように高回転時の燃費が重視される場合は、高回転域の特性を改善するため、高透磁性材料、低インピーダンスコイル等の技術的改良が行われれば、IMA式にハイブリッドは終極するかもしれないが、日本のように停止・発進が多い地域ではどちらの設計思想が合致するかは今後興味があるところである。
THSについて記すとしたら変速機にも触れねばなるまい。THSの変速機は、動力分割機構・発電機・モーター・減速機で構成される非常に特殊なものである。この機構は、エンジン・モーターを無段階に変速できる機能を持つ、一種のCVT(無段変速機)である。しかし一般的なCVTとはかなり構造が違うものであり、THSの特徴の一つとなっている。一方のIMAの変速機は、非ハイブリッド車でも使われるようなAT・CVTであり、IMAのためだけの特別な変速機は無い。車種によってはMTも設定されている。
同様な理由で、IMAは全車タコメーターを装備しているのに対し、THSは機能上(エンジンの回転数を運転者が決定できないため)あまり意味がないことから、同様な機構を使うフォードのハイブリッド車を例外としてタコメーターを搭載していない。
動作の差異
IMAの走行中の動作は、エンジンは停車時以外は絶えず回り続け、加速時にはモーターも駆動、減速・制動時にはモーターが発電機となってエネルギーを回生しバッテリーに充電するというパターンである。これがTHSであると、加速時のみならずあらゆる場面でモーターが駆動に関与することとなる。PCUがモーターも駆動させた方が効率的と判断すれば、積極的にモーターを回して駆動に関与させるのである。そのためモーター駆動用電力は、エンジンが発電機経由で生み出したものを直接使用するようになっており、エネルギー的には、ロスが大きくなるものの、トルク変換は、電気物理的特性により非常にフラットなものになるため、機械的なものより、はるかに有利となる。
バッテリーの電力のみで駆動する場面はIMA方式とは、目的が異なるため当然違うわけである。
一方、減速・制動時はIMAと同様、モーターがエネルギーを回生しバッテリーに充電する。それとTHSでは、エンジンを止めたままモーターのみで走行することが可能で、これを発進時や低速走行時に行う。このためAT車で起こる
クリープ現象は、THSではモーターに微弱な電流を送ることで擬似的に発生させるようになっている。最後に、IMAとTHSそれぞれエンジン:モーターで駆動割合を示すと、IMAは9:1でTHSは6:4といわれている。IMAの駆動アシストは、省エネとエンジン特性の改善にあり、強引にトルクを稼ごうとするTHSとは、若干、趣旨が異なることが理解されよう。
つまり、目的は、省エネであるが、車両重量の増加をトルクで稼ごうとするのが、THS、車両総重量を減らし、必要なトルクを、エンジンを補完するように与えようとするのがIMAであり、省エネから言えば本質的に優れているのはIMAであり、それが最終的燃費という結果になって現れるのは、当然なのである。
高級乗用車をうたうハイブリッド車は、今後メーカーを問わず、コストが許す限り車両重量を軽減するため、ハイテン材、チタン材、ハイテンアルミ材等を多用する傾向になるのは、間違いないし、そうでなければ、本来の省エネ目的の本質にそぐわない。
しかし,エンジンとモータ,バッテリという複雑なシステムをもつハイブリッド車は,「軽量化=省エネ化」という大きなトレンドからずれている。将来どのように展開するかよく見えない。
搭載車種
関連項目
外部リンク
自動車工学 | Integrated_Motor_Assist