E型肝炎(Eがたかんえん、英hepatitis E)は、ウイルス性肝炎の一種で、E型肝炎ウイルス(略称HEV)と呼ばれる接触感染性ウイルスによって起こる。
徴候と症状
本症は、15才から40才の成人に最も一般的に見られる。小児もまたこの感染症によく罹患するものの、症状が認められることはそれほどない。本症はしばしば自然消失・自然治癒が見られる「自己制御式の」病気のため、その致死率は通常低い。しかし感染期間中(通常数週間)には、労働・家族の世話・食事の摂取といった患者の能力は、著しく低下する。E型肝炎は時折、重症な急性肝疾患に進展し、全症例の約2%が致命的となる。臨床的には
A型肝炎に類似するものの、
妊婦では本症は重症化しやすく、『
劇症肝炎(ないし肝不全)』と呼ばれる臨床的な
症候群となりうる。(特に後期の)妊婦では、本症に罹患すると死亡率が(非妊時より)上昇する。
本症において典型的に見られる症状としては、黄疸、食欲不振、肝腫大、腹痛と腹の張り、嘔気や嘔吐、発熱などが挙げられるが、これら症状の表出については、無症候性なものから劇症型まで重症度に幅が見られる。
ウイルス学
ウイルス粒子は直径約33
ナノメートルで、
エンベロープはなく、長さ約7,300
塩基対の一本鎖
RNAを内包している。かつては
カリシウイルス科に分類されていたが、その
ゲノムは
風疹ウイルスの方にさらに類似しており、今では
ヘペウイルス科と名づけられた新しい科に分類されている。
疫学
パターン
本症はほとんどの
発展途上国で流行しており、暑い気候の国ではどこでも普通に見られる。
東南アジア、北部及び中部
アフリカ、
インド、
中央アメリカなどが主な流行地である。本症は主に糞便などによる水や食料の汚染によって媒介される。ヒトからヒトへの感染は稀である。E型肝炎の広域発生は、大量降雨や
モンスーンの後など、給水機能の混乱によって発生するのが最も一般的である。主要な大流行としては、インドの
ニューデリー(
1956年-
1957年に30,000症例)、
ミャンマー(
1976年-
1977年に20,000症例)、インドの
カシミール(
1978年に52,000症例)、インドの
カーンプル(
1991年に79,000症例)、
中国(
1986年から
1988年の間に100,000症例)などがある。
近年の流行
2004年に、二つの地域(両方とも
サハラ砂漠以南のアフリカ)での主要な大流行がみられた。その一つは
チャドで、
9月27日までに1,442症例の報告があり46名が死亡した。現在もなお紛争下にある
スーダンでも、人々はE型肝炎の深刻な大流行に苦しんでいる(
ダルフール紛争参照)。
9月28日までに、主に西ダルフール地方で、6,861症例の報告があり87名が死亡している。
ユニセフ、
国境なき医師団、
赤十字や、その他の国際的保健機関は目下、石鹸の入手機会の増加、新たな井戸掘り、給水・貯水の
塩素処理などに取り組んでいる。しかし、現存する資源は未だ充分でなく、この地域の人々の健康と福祉を保証するために、より多くの人材や資金が著しく求められている。
英国や米国、日本での症例報告により、E型肝炎は先進諸国でもだんだん見られるようになってきている。それはある動物が発生源となった人畜共通感染症であると考えられており、シカやブタとの関連が言われている。
予防法
現在までにE型肝炎には有効な
ワクチンが存在しないことから、現実的な唯一の予防策は
公衆衛生の向上・改善である。人間の排泄物の適切な処理と廃棄、より高い水準の公共
水道設備、個々人の衛生行動の改善、衛生的な食糧供給、これら全てが本症の流行拡大を防ぐ上で重要な措置である。このように、本疾患の予防対策は、発展途上国の人々を悩ませている他の多くの問題に対する対策法と近似しており、彼らは給水・水処理プロジェクトに対する大規模な国際的
経済支援を必要としている。
外部リンク
肝炎
Hepatitis E