馬力(ばりき)は仕事率、工率の単位である。名前の通り、元々は馬一頭の持つ力を1馬力と定めたものであった。今日では、ヤード・ポンド法に基づく英馬力、メートル法に基づく仏馬力を始めとして、各種の馬力の定義がある。国際単位系(SI)における仕事率、工率の単位はワット(W)であり、馬力は併用単位にもなっていない。
馬力という単位は、ジェームズ・ワットが蒸気機関の能力を示すのに、標準的な荷役馬1頭のする仕事を基準としたことに始まる。これが英馬力の起源で、数値的には「1秒間につき550重量ポンド(lbf)の重量を1フィート(ft)動かすときの仕事率」(550 ft·lbf/s)となる。ワットで表すと、1英馬力は約745.700ワットである。英馬力は、英語の"horse power"の頭文字をとって"HP"という記号で表される。"hp"と小文字で書くこともあり、また、"HP"を合字にした"㏋"(U+33CB)も使われる。
仏馬力は、メートル法(重力単位系)に基づいて、英馬力の値にできるだけ近くなるように定義したものである。メートル法がフランス発祥であることから仏馬力と呼ばれる。その定義は、「1秒間につき75重量キログラム(kgf)の重量を1メートル動かすときの仕事率」(75 m·kgf/s)となる。ワットで表すと、1仏馬力は約735.498 75ワットである。仏馬力は"PS"または"ps"という記号で表されるが、これはドイツ語のPferde Stärke(馬の力)の頭文字をとったものである。仏馬力と英馬力との換算は、1 仏馬力 = 約 0.986 英馬力である。
なお、当時の測定のずれや、その後の馬の改良により、1馬力 = 馬1頭の仕事率は成り立たなくなっている。実際にはサラブレッドは3馬力以上、ペルシュロン等の重種になると10馬力以上とも言われる。ある雑誌での実験では、不健康な人ですら1.76馬力が出てしまっている。
この他各種の馬力の定義がある。
1999年施行の新計量法では日本馬力をやめて仏馬力を採用している(条文上はワットの735.5倍としている)。ただし、本文ではなく附則において、内燃機関・外燃機関の工率の計量に限定して「当分の間、工率の法定計量単位とみなす」として使用を認めているものである。これは、新計量法がSIを全面的に導入するために制定されたものであり、本来であればSI組立単位であるワットを使うべきであるが、馬力がいまだに広く使われており、これを廃止すると混乱を招くために移行措置として使用を認めているものである。今日でも、レシプロエンジンの出力表示にはキロワット(kW)とともに馬力(仏馬力)が併記されていることが多い。
また、日本では、エア・コンディショナー(特にビル用の大型空調設備)の能力も「馬力」という単位で表現されることが多い。正式な換算式は存在しないが、慣習的に約8畳相当の空間を冷やす能力を1馬力と表現するらしい。各社のカタログから計算した近似値では 1馬力 = 2.8kW といわれている。
日本の自動車では1989年に発売された日産フェアレディZが国産初の280psを達成。しかしそれ以降は当時の運輸省により「過度の馬力はスピード違反を招く」という理由から行政指導による馬力の制限がかけられ、280psより出力を上げたエンジンを搭載した車両は認可されなくなった。
この規制にはエンジンの馬力を落とす代わりに低速トルクを増やし、一般的な乗りやすさを向上させる側面もあったが、最近は可変バルブなどの技術によりトルクとの両立が可能になったこと、メーカーが馬力の制限を受けない海外用のエンジン製造も必要とされること、海外からの輸入車は全く規制が適用されなかったことなどから、各方面から異論が沸き続けた為、2004年に普通自動車の馬力制限が撤廃され、ホンダがレジェンドに300psのエンジンを搭載した。さらにトヨタや日産も300psを上回るエンジンの搭載を予定している。
なお軽自動車とオートバイの馬力規制は現在も引き続き行なわれている。
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