頭部穿孔(とうぶせんこう)またはトレパネーションとは、頭皮を切開して頭蓋骨に穴を開ける民間療法の一種とされる。頭蓋穿孔ともいう。
古代ギリシアで近代医療の基礎を築いたヒポクラテスも、自身の著書中で触れたとされるこの行為だが、中世から近代のヨーロッパに於いては頭痛や精神病の治療と称してこれが行われた。ただ当時は明確な根拠があったわけではなく、頭骨内にある「良くない(霊的な)モノ」を外部に出すための穴とされた模様で、当時の鑿と槌で穴を開ける様子などの絵が残されている。
近年でも個人が自分自身や医師の助けを受けて行った事例が報告されており、被術者らによると「脳の圧力を下げ、気分を高揚させる」や「意識がより明瞭に成る」、「うつ病が軽減された」等とするレポートがあるものの、実際問題として脳外科医などの専門医からは否定的な幾つかの見解が出されている。以下にその見解を述べると
なお日本や欧米の多くの国では、頭蓋骨骨折や脳外科手術といった他の明確な治療に拠らない、危険なこれら施術は違法とされているが、一部にトレパネーションに効果ありとするピート・ハルヴォーソンによる国際トレパネーション唱道会などの主張があるため、これを請け負う医者もあるとされ、現代社会にも一定数の被術者が存在する。
しかし実際には、当時の戦争の様式が「石を投げあい、棍棒で打ち合う」というもので、特に棍棒に至っては、石を加工して作った打撃ハンマー(中央に穴の開いた☆状の石が先端にはめ込まれている)で、頭に当たれば頭蓋骨骨折を起こす物だった。このため兵士や戦闘に巻き込まれた民衆達は、絶えず頭蓋骨骨折等の負傷を受ける危険に晒され、これによって頭骨骨折の治療技術が発達したと現代の考古学では考えられている。
頭骨が骨折する程に強い打撃を受けた場合、骨の下の硬膜下にあるクモ膜の血管が切れて血腫と呼ばれる血の塊ができる。これは急性硬膜下血腫と呼ばれ、早急に頭骨に穿孔して固まる前の血を排出させないと、脳を圧迫して意識を失い、最終的には死に至る。また早期治療が行われないと、予後が非常に悪い事もあるため、現代医療でもしばしば行われる治療であり、疑似科学や神秘主義的な頭部穿孔とは全く別の、現代医学と同様の理由に基く物である。
当時のインカでは麻薬原料で知られるコカが栽培されており、その葉は滋養強壮や傷の麻酔に利用されていた。このため古代インカの脳外科医らは苦痛に患者が暴れる心配も無く、患者の頭部を切開、脳を傷付ける恐れのある頭骨の破片を取り除いて縫合する事が出来た。またインカ帝国は押並べて高山地帯の寒冷地に都市が集中していた事もあり、周辺の雑菌も比較的少なかったために、感染症を起こす率も低かったという。
これら頭蓋骨骨折治療を受けた患者は、その頭蓋骨の分析から、平均して数年から十数年程度は生き長らえていたという説もあり、当時の3~40代で高齢者という平均寿命も在って、まずまず天寿を全うしたといえよう。
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