音読み(おんよみ)とは、日本語における漢字の発音の仕方の一つで、中国風の読み方のことである。
漢音は7, 8世紀、遣唐使や留学僧らによってもたらされた唐の首都長安の発音である。呉音は漢音導入以前に日本に定着していた発音で、通説によると呉音は中国由来とされるが、朝鮮由来とも言われる。唐音は鎌倉時代以降、禅宗の留学僧や貿易商人らによって伝えられたものである(湯湯婆「ゆタンポ」、石灰「シックイ」、提灯「てうチン」など)。※「シックイ」の石灰はのちに「漆喰(しつくひ)」と書かれるようになり「セッカイ」の石灰と区別されるようになる。「提灯」は「吊灯」の書き間違いで「提」を「テウ」と読むわけではない。
慣用音は、通説によれば、誤った読み方が時代を経て定着した音読みである。「茶」における「チャ」(漢音「タ」・呉音「ダ」・唐音「サ」)という音は、広東語由来であって誤った読み方ではないが、辞書では慣用音とされる。
上記のように、漢字音の導入には仏教が大きく関わっており、各宗派によって使う音読みが異なっている。例えば、高僧を意味する「和尚(和上)」について、律宗・法相宗・真言宗では呉音で「ワジョウ」と読み、天台宗では漢音で「カショウ」、禅宗・浄土宗では唐音で「オショウ」と読んでいる。しかしながら、仏教用語の多くが古くから定着していた呉音で読まれている。
呉音は仏教用語や律令用語に使われ、日常語としても定着した。漢音はもっぱら儒学で用いられた。また、近代以降、西洋語を翻訳するのに作られた和製漢語にはもっぱら漢音が使用された。唐音は、禅宗用語を除けば、「椅子(イス)」や「蒲団(フトン)」のように中国から流入した物品の名称に使われることが多い。
古今の中国人(と台湾人)名(駐日大使王毅、陳舜臣など)、昔の朝鮮人の名(李成桂など)を発音するのには漢音を使う。往々にして昔のヴェトナム人の名の発音に使われる(徴側・徴弐など)。
なお、いくつかの熟語の読み方はどの時代でも同じというわけではない。「停止」は江戸時代まで「ちゃうじ」(慣用音「チャウ」+呉音「シ」の濁音化)とよんできたが、明治時代の改革で「ていし」(全て漢音)と読むようになった。「文書」は古くから呉音で「もんじょ」と読んでいた(「古文書」など)のが、漢音で「ぶんしょ」と読む(「公文書」など)ことが増えた。「大根」は、「つちおほね(土大根)」と言ったものが音読みで「ダイコン」と呼ばれるようになった。
呉音、漢音といった漢字の音を輸入するに当たって、中国語の中古音から日本語に音写するのにある一定の諸法則があることが知られる。そしてそれらはヴェトナム語の、そして朝鮮語の漢語と日本語の漢語の読み方の関係にも成り立つものである。
| 五音 | 清濁 | ||||
|---|---|---|---|---|---|
| 全清 | 次清 | 全濁 | 次濁 | ||
| 唇音 | 中古音 | 幫・非 ・ | 滂・敷 ・ | 並・奉 ・ | 明・微 ・ |
| 呉音 | ハ行 | バ行 | マ行 | ||
| 漢音 | ハ行 | バ行 (マ行) | |||
| 舌音 | 中古音 | 端・知 ・ | 透・徹 ・ | 定・澄 ・ | 泥・娘 ・ |
| 呉音 | タ行 | ダ行 | ナ行 | ||
| 漢音 | タ行 | ダ行 (ナ行) | |||
| 半舌音 | 中古音 | 来 | |||
| 呉音 | ラ行 | ||||
| 漢音 | ラ行 | ||||
| 歯音 | 中古音 | 精・照 ・ | 清・穿 ・ | 従・牀 ・ | |
| 心・審 ・ | 邪・禅 ・ | ||||
| 呉音 | サ行 | ザ行 | |||
| 漢音 | サ行 | ||||
| 半歯音 | 中古音 | 日 | |||
| 呉音 | ナ行 | ||||
| 漢音 | ザ行 | ||||
| 牙音 | 中古音 | 見 | 渓 | 群 | 疑 |
| 呉音 | カ行 | ガ行 | |||
| 漢音 | カ行 | ガ行 | |||
| 喉音 | 中古音 | 影 ø | 喩 | ||
| 呉音 | アヤワ行 | ヤワ行 | |||
| 漢音 | アヤワ行 | ヤワ行 | |||
| 中古音 | 暁 | 匣 | |||
| 呉音 | カ行 | ガワ行 | |||
| 漢音 | カ行 | ||||
この法則から古代の日本語がどうであったかがある程度分かってしまう。またこの法則を利用して、呉音・漢音から古い中国語の音声が推定される。