関数(かんすう、function)とは、ある変数に依存して決まる値あるいはその対応を表す式のことである。この言葉はライプニッツによって導入された。その後定義が一般化されていき、現代的には数の集合に値をとる写像の一種であると理解される。
日本語としての関数
関数はもともと
函数と書く。これは英語 function の中国における訳語である函数(ハンスー)をそのまま輸入したものであるが、「函」が
漢字制限による
当用漢字(
教育漢字、その後の
常用漢字)に含まれなかったことから
1950年代以降、同音の「関」へと書き換えがすすめられた。「函」は「はこ(箱)」の意味を持ち、function がブラックボックスの意味合いを含むことから、「函数」は function の音訳であるとともに意訳である。
定義
二つの変数
x と
y があり、入力
x に対して、出力
y の値を決定する規則が与えられているとする。すなわち、
x に値を代入するごとに
y の値が確定するということである。このとき、
xを
独立変数といい
yを
関数という。対応規則を明示するときは「
y は
x の
関数である」というように表現し、数式では
- y=f(x)
のようにあらわす。
つまり、x の関数 y を f(x) と書いて、x = a を代入したときに決まる関数の値を f(a) と表すのである。この f(x) という表記法は18世紀の大数学者オイラーによるものである。オイラー自身は、変数や定数を組み合わせてできた数式のことを関数と定義していたが、コーシーは上に述べたように、 y という変数を関数と定義した。
y が x の関数であることの別の表現として、変数 y は変数 x に従属するともいい、y を従属変数(dependent variable)と言い表す。独立変数がとりうる値の全体(変域)を、この関数の定義域といい、独立変数が定義域のあらゆる値をとるときに、従属変数がとりうる値(変域)を、この関数の値域という。
関数の値域は実数 R や複素数 C の部分集合であることが多い。値域が実数の集合となる関数を実数値関数(real valued function)、値域が複素数の集合となる関数を複素数値関数(complex valued function)という。それぞれ定義域がどのような集合であるかは問わないが、定義域も値域も実数の集合であるような関数を実関数(real function)といい、定義域も値域も複素数の集合であるような関数を複素関数(complex function)という。
現代的解釈
ディリクレは、
x と
f(
x) の対応関係に対して一定の法則性を持たせる必要は無いとした。つまり、個々の独立変数と従属変数の対応そのものが関数であり、その対応は数式などで表す必要はないという、オイラーとは異なる立場をとっている。
集合論的立場に立つ現代数学では、ディリクレのように関数を対応規則 f のことであると解釈する。
関数を数の集合(特に実数全体の集合 R)からそれ自身への写像であると捉えるということである。よって、写像に用いる言葉をそのまま流用することがある:
などを挙げることができるだろう。一方で、関数は一般の写像とは異なる性質も持つ。たとえば、
像による演算が定義できることである:
- (f + g)(x) := f(x) + g(x), (f - g)(x) := f(x) - g(x),
- (fg)(x) := f(x)g(x), (f / g)(x) := f(x) / g(x)
などが挙げられる。
関数の例
- 一次関数:f(x) = ax + b (a, b は定数)
- b = 0 のとき線型写像、a = 1 かつ b = 0 のとき恒等関数(恒等写像、identity)。
- 二次関数:f(x) = ax2 + bx + c (a, b, c は定数)。
- 定義関数(特性関数、指示関数、characterestic function):
1 & (x \in A), \\
0 & (x \notin A).
\end{cases}
多変数関数と多価関数
複数の変数によって値が決定される関数を
多変数関数という。これは複数の数の集合たちの直積集合から数の集合への写像であると解釈される。
ベクトルを独立変数とする関数と解釈することもある。
n個の変数で決まる関数であれば、
n 変数関数とも呼ばれ
- y = f(x1,x2,...,xn)
のように書かれる。例えば
- y = x12 + x22
は二変数関数である。
また、二項関係によっても関数が定義されることがある。
- F(x,y) = 0
このような式によって、独立変数
x と従属変数
y が対応付けられる場合、「
y は
x の
陰関数(implicit function)である」という。これに対してこれまで用いてきた
- y = f(x)
は、 「
yは
x の
陽関数(explicit)である」あるいは「
y は
x で
陽に表されている」などといわれる。
一つの入力に複数の出力を返す関数を多価関数という。常に n 個の出力を得る関数は n 価であるといい、その n を多価関数の価数と呼ぶ。例えば平方根を与えるような関数は正と負の値の二つを与えるので、二価関数である。
-
多価関数に対し、普通の一つの値しか返さない関数は
一価関数といわれる。
多変数関数は、独立変数をベクトルと解釈できるということを上に述べたが、逆に従属変数がベクトルを取る写像も考えられる。これをベクトル値関数という。ベクトル値関数は、一つ一つのベクトルの成分が、これまで述べたような関数であり、関数を並べて一組のものとして扱ったものがベクトル値関数ともいえる。
多価関数は、ベクトル値関数として扱う場合もある。
-
このように、多価関数の一つ一つの値が連続関数として分離できるような場合は定義域をもっと広い定義域に読み替えることにより一価の関数と見なすこともある。たとえば、
複素変数の
対数関数 ln は素朴には無限多価関数であるが、これを ln の
リーマン面上の一価関数と見なす。こういった定義域を広げて一価にする手法は解析的な関数に対してよく用いられる。
一般化
汎関数
ベクトル空間から係数体への写像を汎関数 (functional) という。有限次元ベクトル空間は係数体の有限個の直積と同型であるから、そこからの汎関数は多変数関数と同一視できる。よって、一般には無限変数の関数の一種と見なすことも可能である。特にある集合上の関数の作るベクトル空間からの(線型)関数を指すのが普通である。
超関数
シュワルツの
超関数(分布、distribution)の理論は、汎関数の一種(コンパクトな台を持つ無限階微分可能関数の作る空間上の連続線型汎関数)として超関数を定義する。通常の局所可積分関数に
測度を掛けて積分
作用素として見ると、この意味で超関数と見なされる。
この様な連続線型汎関数を用いた定式化の方向で distribution よりも大きいクラスとしては,超分布 (ultradistribution) が知られている。
一方、佐藤の超関数 (hyperfunction) は層係数コホモロジー等の代数的手法を用いて定義される。この代数的手法の解析学への導入により、線型微分方程式系の代数化である D 加群の理論等、代数解析学と呼ばれる分野が開かれた。以上の超関数のクラスは局所化可能、言い換えれば層を成すという事が重要である。
関連項目
解析学 | 初等数学 | 関数
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