野菜炒め(やさいいため)とは、野菜と少量の肉類を塩や胡椒、またはウスターソース等のソース類や醤油で炒める事によって、温野菜を美味しく、また十分に食べる事を目的とした家庭料理である。
概要
この料理は、複数の野菜類を少量の肉類と炒める事によって、肉の旨みと野菜の旨みを引き出す事ができる。また彩り豊かで、大皿に盛られれば、食卓の華となる料理である。かつては少ない(高価な)肉を多くの(安価な)野菜と炒める事で満腹感を得るための料理であったが、現在では多くの野菜を僅かな肉で食べ易くする料理として好まれている。
日本人と野菜炒め
この調理方法が広く一般
家庭で見られるようになったのは、
日本では
1950年代~
1960年代以降の、特に高度経済成長期の事で、
調理用の油が廉く手に入るようになった事や、少ない
肉類に多くの
野菜を加える事で、育ち盛りの
子供の貪欲な食い意地をなだめる効果があったこと、また調理が簡単で様々な工夫もしやすい事が主な普及理由に挙げられる。
また学校教育においても、度々授業の調理実習で登場するメニューだけに、料理のできる日本人の大半が、この料理をレパートリーの一つとしている。このほかにも安価である為、日本の学校では学食や寮の、または企業の社員食堂などでも定番料理としても定着している。
野菜炒めの原点
原型となるのは
中華料理であるが、中華料理の
肉野菜炒めと比較すると
- ハクサイを使わない場合が多い。
- 中華スープを使う等の、手間のかかる調理過程が省かれている。
- 肉は少なめで、またその扱いが少々異なる。特に事前の味付けや油通し等が行われない。
- 中華鍋や大火力コンロを使わない。
といった、家庭料理としての改変が加えられている。
フライパンの変化と野菜炒め
本来は熱効率に優れた
鉄製の
フライパンで作る事を前提とした料理ではあるが、近年では家庭用のフライパンの多くは軽くて扱い易い
アルミ製・
テフロン加工の物が大半を占めている事情がある。これらのアルミ製・テフロン加工のフライパンでは、熱がまんべんなく材料に行き渡るように、
手早くかき混ぜる・
絶えずフライパン全体の火が当たっている部分を動かす等して、熱せられ方が均一に成るよう、工夫する必要が出てくる。
テフロン加工は本来、摩擦係数が非常に小さいために油を使わなくても調理できる事が最大のセールスポイントではあるが、こと野菜炒めに関しては、油が熱の伝導を助け、また野菜の栄養を吸収する助けにもなり、また油自身の風味も料理としての味に欠かせない要素であるため、テフロン加工の物を使う場合でも油を使用することが一般的である。
しかし近年のヘルシーブーム(健康ブーム)も手伝い、あまり油を使いたくない場合は、少量の水を加えた上で弱火で蓋をしたまま蒸し焼きにするという(野菜炒めという伝統家庭料理に対する挑戦とも呼ぶべき)別の調理法もある。これらは高齢者等の脂っこい料理が苦手な人にも好まれ、病院食でも茹で野菜と野菜炒めの中間とも言える同様の調理法が見られる。
材料
大抵の熱を通しても溶けない野菜類は、この野菜炒めに用いる事ができるが、その中でも以下の野菜は普遍的に用いられる事が多い野菜である。
- 主に千切りにして用いるが、一番最初に入れて油と良く馴染ませる事で、カロチン等の栄養素がより吸収されやすくなる。十分に炒めると甘味が増し、渋みが弱まる。
- スライスしたり、ざく切りにして入れると、炒めている途中でほぐれて半透明になり、辛味が薄れて甘味が増す。比較的最初の頃に入れても構わないが、歯ごたえを残したい場合は、他の材料がある程度炒まった段階で加えると良い。ただし炒め過ぎると汁に含まれる糖質が焦げて苦くなるため、苦味を好まない人は炒め過ぎに注意すべきである。
- 最も広く、また量的にも多く用いられる材料で、調理の中頃に入れる。ビタミンB1を多く含み、また野菜をたくさん食べた気分をあじあわせてくれる。手でちぎったり、葉を3~5cm角程度に切って用いる他、好みで芯を薄切りにして入れる。特に芯の部分は熱が通る事で甘味を増し、また柔らかくなるため食べやすくなる。芯の方を先に炒め始めてから、葉の先の方は後に入れる。炒める際には他の材料がやや炒まった辺りで、中火に落としてから入れる。フライパンが水を垂らすとすぐ沸騰・蒸発する温度の時には、葉が焦げやすいので注意する。
- 比較的調理の後の方に入れるが、軽く柔らかく成る程度まで炒めると、他の野菜や肉から出た汁を吸って旨みが増す。また比較的安価で栄養もあるため、満腹感が得やすい。炒める前に予め根と豆の固い部分を取り除いておくと、更に口当たりも良くなる。
- 洗って二つに割って種を取り出し、中の種を洗い流してから千切りにする。野菜炒めに苦味を添え、他の野菜の味を引き立てるほか、より食欲を掻き立てる効果もある。近年では赤い物や黄色い物も出回って、野菜炒めに彩りを添える事もできる。調理中の中ほどに入れると柔らかくて風味も穏やかになって食べ易く、後の方で入れると歯応えや風味を強く楽しむ事ができる。ピーマンの匂いが苦手な場合は細かく切り、ピーマンが好きな場合は幅広く切って加える。
- 元は中国野菜であるが、肉厚で炒め物に良く合うため、近年取り入れられ出した。葉はしんなり、元の部分は火が通ってもシャクシャクとした歯応えが楽しめる。
- 元になった中華料理では好んで用いられたが、葉が硬く、十分に火を通す必要がある事から、これを入れる家庭は少ない。キャベツの扱いに順ずる。
- 中国料理の影響か時々入れる人が見受けられる。生または乾燥シイタケを水で戻したものが用いられる。乾燥シイタケは若干の甘みがある。この他、キノコ類を入れる事が最近多くなっている。
肉類は、生の豚肉・ベーコン・ランチョンミート(スパム等)・魚肉ソーセージ・ハム(ボンレス・プレスのどちらでも)・ウインナーソーセージ・缶詰(ツナ・鮭など)等が用いられるが、場合によっては炒り卵で代用される場合もある。これらは小さく切られた後に、油をひいて熱せられたフライパンの上に真っ先に載せて炒められる。これにより肉類の表面が固く締まる。なお牛肉はこの調理法では固くなり過ぎるため野菜炒めには適さず、鶏肉は炒めると油を吸ってしまう上に、肉がバラバラにほぐれてしまうため、やはり適さない。
油は、ほとんどの食用油が利用可能であるが、ラード等の獣脂は味がくどくなりがちなため、近年では俗にサラダオイルと呼ばれる、癖が無く酸化し難い菜種油・大豆油・コーン油等の植物性油が用いられる。ごま油は風味と炒め加減の兼ね合いが難しく、酸化し易い事もあるため、あまり用いられない。
調理方法
基本的にこの料理は比較的強い火力で一気に火を通す物と、中火でじっくり炒める材料を混ぜるため、火加減が最も重要である。
器具
この料理に用いる器具は、以下の通りである。
- 鉄製のものが良いが、テフロン加工の物も利用できる。ただしテフロン加工の物は、内部に凹凸が無い物でないと、うまく作れない事がある。
- 材料をフライパン内でかき混ぜるのに使うが、熱さを我慢するなら、短い割り箸でも構わない。塗り箸やプラスチック製の箸は熱で溶けたり材料に味が移ったりするので避ける。
- 一般的な文化包丁で十分だが、皮剥き器やフードスライサー等の調理器具があると、更に簡単である。
- 電熱器やIH調理器具では、熱量が足りずに美味しく出来ない事があるが、近年ではIH調理器具の中にも、野菜炒めが作れる高温調理タイプが登場している。ガスコンロであれば、カセットボンベ式の物でも構わない。
- 火を止めて5~10分ほど蓋をすると、余熱でムラ無く材料全体が温まる。
調理手順
調理に際しては、材料を切る所から始める。手間を惜しんでフライパンを火に掛けながら野菜を切っていると、思わぬ事故に繋がる事もあるため、余程経験を積んだ場合以外では避ける。材料の切り方は材料の欄で挙げた通りだが、葉野菜は食べる人の年齢に合わせて大きめに切っても構わない。
幼児向けの場合はスプーンやフォークで食べやすいよう小さめに切る。ニンジンなどの根菜類は熱が通り難いので、火が通りやすいよう、なるべく薄く、または細く切る。肉類は薄く・小さく・長く短冊状に切ると、野菜と絡んで食べやすくなり、また肉の量が多く見える。
- 材料をそれぞれ、好みの量を好みの大きさに切る。ただし炒める順番如何で美味しさが違うので、この段階では材料は混ぜてしまわない。キャベツ等の葉野菜類は、炒める事で見た目の量が半分~1/3にも成ってしまうため、多少多めに切っておく。
- フライパンに油を多めに敷き、強火で肉類を炒める。この時、油からほのかに煙が昇る程であっても構わないが、生肉を使う場合は油跳ねに注意しながら肉を炒める。あまり油が熱せらていると、油の飛び跳ねによる火傷や引火の危険性もある他、テフロン加工のフライパンでは、加工が焦げて傷む事にもなるので、油煙がもうもうと上がる程にまで熱してはいけない。
- 次にニンジンなどの固い野菜類であるが、最初にざっと炒めた辺りで中火に落として炒め続け、ややしんなりさせる。
- 更にキャベツやタマネギ等の、それほど固くも柔らかくない・火の通りやすい野菜を入れる。
- これらの野菜類全体に十分熱を通す間に、塩・胡椒、またはソースか醤油類を軽く振り掛ける。
- 全体的にしなりだしたら、もやし等のあまり炒める必要の無い野菜類を加えて、全体的にしんなりするまで炒める。この時、好みで早めに火を止めても構わないが、いつまでも中火で弄っていると焦げる野菜が出てくるため、柔らかい物が好みの場合や、火の通りが余り良くない場合は、弱火に落として下の方を上に被せるようにしながらかき混ぜて、蓋をする。
- 被せた蓋が熱くなり出したら、火を止めて、飯をよそう等、他の料理に取り掛かる。
- 他の料理が出来上がったら、大皿に盛って食卓へ。
特に温かい内が美味しい料理であるが、夕食に作って翌朝に持ち越しても、再び軽く炒めたり、電子レンジで温めても、十分美味しく食べられる。また調理の際にフライパンに出た汁は、野菜と肉の旨みと栄養が含まれるため、皿に盛った際に上から掛けてまぶしたりする。この汁だが、少々行儀は悪く、また塩分や油の取り過ぎにも繋がる事などから健康上で些か問題もあるが、飯に掛けても美味しい。できるだけ野菜炒め自体と共にとるようにした方がいいだろう。
野菜炒めに属する料理
- チャンプルーは沖縄の伝統的な料理で、豆腐を用いる他、バリエーションも多い。
- 原型となった料理ではあるが、中華スープで味をつける・肉は予め味付けしてから低温の油で熱したりするなど、遥かに手間が掛かっているため、一般家庭で作るのは難しい。
野菜料理 | 日本の野菜料理