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重症筋無力症(じゅうしょうきんむりょくしょう、Myasthenia Gravis;MG)とは、狭義には神経伝達物質であるアセチルコリンの筋肉側における受け皿であるニコチン性アセチルコリン受容体に抗アセチルコリン受容体抗体が結合してアセチルコリンによる神経・筋伝達を阻害するために筋肉の易疲労性や脱力が起こる自己免疫疾患である。厚生労働省により特定疾患に指定されている。 なお、広義にはMusk抗体由来症例や原因不明の類似症例等も重症筋無力症に含める場合もある。

分類


筋力低下の現れる範囲によって分類する。
  • 成人第I型眼筋型
    一側の外眼筋のみ侵される。予後は良い。
  • 成人第II型全身型
    外眼筋・頚筋・四肢筋などが侵される。最も高頻度。球麻痺が現れることもある。
  • 新生児一過性型
    胎児の時期に、重症筋無力症の母親から胎盤を通じて抗アセチルコリン受容体抗体が移行するため、新生児に一過性に筋無力症状が生じたもの。

疫学


有病率は10万人に4~5人、男女比は1:2。発症は10歳以下、女性30~40歳代、男性40~50歳代に多い。小児発症が比較的多いことは、日本の特徴である。

症状


筋力低下が主症状。外眼筋の筋力低下による複視や眼瞼下垂(高頻度)・構音障害・嚥下困難等頭部から始まることが多い。85%の患者に、四肢の筋力低下が近位筋優位に起こり、歩行障害をはじめとした各種運動障害の原因となる。様々な条件が重なりクリーゼが起こると、球麻痺や呼吸筋の筋力低下による呼吸停止が起こる場合もある。

筋力低下は夕方ほど著明になり、睡眠で軽快する日内変動、日によって重さの異なる日差変動、筋肉を使うほど脱力症状が重くなる易過労性などが特徴である。

筋萎縮を伴うこともある。錐体路症状・知覚症状は伴わない。

発症の初期では、増悪と寛解を繰り返す。完全寛解はまれ。

検査


テンシロン・テスト

エドロホニウム(商品名:テンシロン)を静注し、改善をみる。副作用として悪心・下痢・流涎・失神などが起こりうるので、硫酸アトロピンを用意しておく。

誘発筋電図検査

筋電計を用いた低頻度の反復神経刺激試験(Harvey-Masland試験)において、漸減現象waning)がみられる。

血液検査

80%の患者の血清から、アセチルコリンレセプター抗体が検出される。ただし筋無力症状が眼筋のみに限局する場合は、陽性率は50%に過ぎない。抗体価は重症度を反映しないが、陽性なら同一患者ではその抗体価は病状の重さを表すことが多い。  

診断


診断は、抗アセチルコリンレセプター抗体陽性であり、テンシロンテストで陽性であることが一応の目安となるものの、抗アセチルコリンレセプター抗体陰性の重症筋無力症というものも存在する(必ずしも、それらが抗アセチルコリンレセプター抗体由来症例でないとは限らない)。

鑑別

合併症


呼吸不全

致死的合併症。頻度も高い。特に感染時は、筋無力症状の悪化として起こりやすい。

胸腺肥大

胸腺腫や胸腺過形成など、胸腺肥大が70~80%に合併。CTMRI検査によって発見される。男性患者の32%、女性患者の20%は胸腺腫を持つ。40歳以上で胸腺が拡大していれば、まず胸腺腫を疑う。

自己免疫疾患

他の自己免疫疾患と合併すると、オーバーラップ症候群と呼ばれる。

3~8%に甲状腺機能亢進症がみられる。甲状腺機能の亢進は、筋無力症状を悪化させうる。

時に関節リウマチ橋本病など、他の自己免疫疾患も合併する。

治療


適切な治療によって80%は軽快・寛解し、日常生活に戻れる。

治療方法としては、大別して、抗コリンエステラーゼ製剤投与や血液浄化療法(血漿交換や血漿吸着)やガンマグロブリン大量静注等による対症療法と、拡大胸腺摘出術やステロイド療法やその代替となる免疫抑制療法(タクロリムス水和物製剤やアザチオプリン製剤やシクロスポリン製剤が用いられる)等による根治療法とがある。

クリーゼに対する処置

呼吸状態が生命に危険を及ぼす程劣悪である場合、直ちに気管挿管する。そうでない場合、クリーゼがMGの症状悪化による筋無力性クリーゼなのか、それとも、抗コリンエステラーゼ剤の過剰投与によるコリン作動性クリーゼなのかをテンシロンテストを行い判別する。症状が改善した場合、筋無力性クリーゼと判断し、臭化ピリドスチグミン製剤等の抗コリンエステラーゼ剤を投与する(副作用のムスカリン作用に対しては硫酸アトロピン製剤を用いる)。症状が悪化した場合、コリン作動性クリーゼと判断し、抗コリンエステラーゼ剤投与を中止して硫酸アトロピン製剤を投与する。症状悪化により呼吸状態が生命に危険を及ぼす程劣悪となった場合、気管挿管する。なお、現に抗コリンエステラーゼ剤により症状をコントロール中の場合、テンシロンテストを行うよりも抗コリンエステラーゼ製剤の投与を中断しての反応を見て判断するのが望ましい。

診療科


神経内科

脳神経疾患 | 免疫病

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