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象牙(ぞうげ)はゾウの長大に発達した切歯(門歯)。多くの哺乳類の「」と称される長く尖った犬歯が発達したものであるが、ゾウの牙は門歯が発達したものである点が異なる。ゾウの生活において象牙は鼻とともに採餌活動などに重要な役割を果たしているが、材質が美しく加工も容易であるため、古来工芸品の素材として珍重された。

象牙の生物学


象牙の生理

象牙の適応的意義

工芸


用途

  • 印鑑の高級素材としての象牙
適度に吸湿性があって手になじみやすく、材質が硬すぎず・柔らか過ぎず・加工性も金属水晶大理石翡翠などより優れている。朱肉の馴染みもきわめてよく、高級感もあるために、印鑑契約や公式書類では欠かせない日本においては、ワシントン条約締結までは日本が一番の輸入大国であった。これらは現在では、国内に条約前に輸入されたものが今も加工されているほか、水牛の角やセイウチの牙、またはロシア永久凍土より掘り出されたマンモスの牙が代替品として利用されるなどしている。

なお近年では、象牙と全く同じ質感のある素材を、牛乳カゼイン蛋白と酸化チタン粉末から作ることが可能で、これを利用した象牙風の(安価な)製品も存在する。

象牙の歴史

世界
象牙は古くから、密度が高く切削加工しやすい素材として珍重された。特にその重量感と温かい風合いは、多くの人に好まれる所で、ピアノの代名詞でもあり、ビリヤードの流行の際には、ビリヤードの玉を象牙で作ることが一般的であった。しかしこの素材は高価で、また乱獲により得がたくなってきたことから、これに代わる素材の開発が求められ、19世紀に入ってセルロイドが発明された。

日本
古くは正倉院の御物(ぎょぶつ)となっている工芸品の素材として用いられており、珊瑚(サンゴ)や鼈甲(ベツコウ)に並んで珍重されたことがうかがえる。

主たる輸入先は中国東南アジアである。だが、古代には南部には相当数いたとされている中国の象もの時代にはほぼ絶滅したと言われており、もっぱら東南アジアから中国を経由して日本に入ってくるルートが用いられた。

江戸時代には、象牙工芸は高度な発展を見せ、根付印籠などの工芸品に優品が存在する。明治時代以降象牙の輸入量が増えると、三味線のバチや糸巻の高級品に象牙が使用され、さらに大正昭和に入ると、西欧のパイプ喫煙文化が導入され、パイプが主な象牙製工芸品となった。

これらの伝統的象牙工芸品は明治維新以降のイギリスを中心とした海外交易(主に緑茶の輸出)の際や、第二次世界大戦後のアメリカ進駐軍が根付や印籠のユニークなデザインや精巧な加工に目を付けるなどしたことで、数多くの工芸品が海外に流出し、特に江戸時代などの芸術性の高い根付などが有名美術館で多数展示されている。特にイギリス方面では、これら根付のコレクター市場がある程で、ヴィクトリア&アルバート美術館に展示されている根付コレクションは有名である。

なお、欧米には根付専門のコレクターも存在するほど人気が高い。

高度成長期には、サラリーマンが増え、高額商品の分割払い(ローン)購入が普及することで、象牙製の印鑑を実印とするための需要が飛躍的に伸びて、輸入された象牙消費の9割が印鑑に加工される時代があった。

近年では象牙の彫刻師は需要の減少と高齢化が進み、現在は東京や京都に数えるほどの人数しか存在しない。

手入れの方法


  • 汚れやほこり等を取る場合、水で洗ったときは水分を乾いた布でふき取り、日陰干しする(直射日光を避けること)。
  • 光沢を出したい場合、湿った布でホコリをふきとり、その後、研磨剤を含まない光沢剤(ワックス)で磨き、布のきれいな部分で軽く乾拭きすると輝きが戻る。
  • 婦箸などの黄ばみを取る場合、ふきんを白くする市販の漂白洗剤を、倍以上に薄めて数日浸しておくときれいになる。
  • 数珠やネックレス等の黄ばみの場合は、洗剤に漬けると、ひもの繊維が弱くなり切れやくなるので、布に湿らせて洗剤で拭きとる。

象牙貿易の禁止と再開に向けた動き


かつて日本は最大の象牙輸入国であったが、ワシントン条約の締結により1989年より象牙の輸入禁止措置が採られ、事実上、世界の象牙貿易は終了した。しかしその後、ボツワナナミビアジンバブエのゾウの個体数が間引きが必要な規模へ急増。1997年のワシントン条約締結国会議で、ナンバーリングを行う等の措置を条件に貿易再開を決議。1999年に日本向けに1度限りの条件で貿易が行われた。南部アフリカ諸国はゾウの急増により農業被害や人的被害や見られることもあり、引き続き貿易の継続を要望したが、一方で無制限に貿易が再開されると錯覚した密猟者がアフリカ各地で活動を活発化、混乱が生じさせたことから再開の目処は立たなくなった。

関連語


象の墓場
象の墓場は象牙の宝庫とされる。「象は死に場所を選んで死ぬため、死期が迫った象は自ら仲間が死んだ場所へと向かい、死んだ象が必然的にたくさん集まる場所ができる」とする伝説があるが、実際には密猟したハンターによるほら話や、観光客目当てのデマであるとされる。

象牙の塔
現実からかけ離れた夢想の世界。学者が閉じこもる研究室の比喩。ミヒャエル・エンデの『はてしない物語』にも登場する。

象牙色
アイボリー。淡い黄色。クリーム色。

象牙海岸
西アフリカの国・コートジボワールのこと。フランス語の Côte d'Ivoire を和訳した名前で、英語名の Ivory Coast も同じ意味。かつてこの一帯から象牙が搬出されたため、この名が付いた。

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