自切(じせつ)というのは、節足動物やトカゲなどに見られる、足や尾を自ら切り捨てる行動(ないし反応)のことを言う。
自切の意味
自切というのは、わかりやすいのは
トカゲの仲間に見られるものであろう。
日本産の
ニホントカゲや
カナヘビでは、しっぽを押さえられ、捕まりそうになると、実に簡単にしっぽが切れる。切れたしっぽはしばらくの間はのたうっている。これは、押さえられたしっぽを切ることで敵の手から逃れ、しかもそのしっぽが動くことで敵の目を引きつけ、その間に本体が逃げられるようにするという、逃避のための
適応であると考えられる。
しっぽとはいえ、脊椎骨を切り捨てて大丈夫なのか心配になるが、切れる場所はちゃんと節になって切れるところであり、しかも切れたときに筋肉の収縮によって血液はあまり出ないようになっている。これも”自ら切る”からこそであって、同じような場所をはさみで切ると、同じようにはならない。切れたしっぽはまた伸びてくるが、表面の色は違って見えることが多い。内部では、脊椎骨は再生しないという。琉球列島に生息するクロイワトカゲモドキでは、尾が自切しやすく、再生もするが、再生した尾は簡単に区別できる。元の尾には、輪状に配列した小さな棘の列が多数あるが、再生した尾では、表面はなめらかな鱗だけで、色も変わる。
また、トカゲ類であっても、キノボリトカゲはまずしっぽを切り捨てないし、ヘビも自切しない。つまり、分類群全体に共通する性質というより、個々の動物の習性に近い。
さまざまな動物の自切
- 脊椎動物では、前述のようなは虫類にその例が多い。
- 節足動物では、昆虫類・クモ類・多足類・甲殻類などでは足が自切するものが多い。これらの仲間では、体の成長には脱皮が必要なので、何回かの脱皮によって再生する。脱皮回数が制限されている動物の場合、完全には再生できない場合もある。又、成虫が脱皮しないもので、成虫が自切した場合では、当然ながら再生できない。
- 環形動物では、ミミズ・ゴカイに簡単に体が切れるものがある。ミミズの場合、後体部から前半身が再生しないものが自切とみなされるが、ミズミミズ科の一部のように、連鎖体が分裂して増殖するものは自切とは言わない。同じ環形動物でも、ヒルはまず体が切れない。ユムシ類には、吻を自切するものがある。
- 軟体動物では、腹足綱のミミガイやヒメアワビ、ショクコウラなど、分類群にかかわらず殻に比べて軟体が大きい巻貝類に腹足後端を自切して逃げるものがある。またウミウシの中に鰓や装飾突起を切り捨てるものがあり、チギレフシエラガイ Berhella martensi は自切することからその和名が付けられている。二枚貝ではマテガイ類などが水管を簡単に自切して穴深く逃げ込むが、水管には最初から切れ目となる横筋が見られる。頭足類では、通常の自切とは異なるが、アミダコなどタコの一部に交接の際にオスの交接腕の先端が自切してメスの体内に残存し、栓のような役割を持つものがある。
- 棘皮動物では、ウミユリ・ウミシダ類とクモヒトデ類に腕を自切するものが多い。これらの動物では、腕は再生するが、腕から本体は再生しない。ヒトデは腕から胴体を再生できるが、自切のように腕を切り離すものはいない。
それより体が柔らかいものでは、単に柔らかくて壊れるのとの差が紛らわしい。
その他
単に体の一部を自ら切り離す意味で自切を使う場合もある。
世間で言う『トカゲのしっぽ切り』というのは、このような仕組みに比して、大きな組織が、特に何らかの後ろ暗いことがあった場合に、自らの危機から逃れるために、適当な地位の誰かを世間に差し出して批判の的とし、あるいは罪状をかぶせ、自らは危機を脱そうとすることを指す。
関連項目
autotomy | Autotomía | Autotomie
動物行動学