article

聴覚(ちょうかく)は、外耳中耳内耳聴神経聴覚皮質などの器官を使い、の信号を神経活動情報に変換し、音の強さ、音高、音色、音源の方向、リズム、言語などを認識する能力・機能をさす。いわゆる五感のひとつ。

以上のように定義されるが、実は細かく突き詰めると不十分な点がある。下の「聴覚の定義について」の節を参照ください。

可聴域

ヒトでは通常20Hzから、個人差があるが15000Hzないし20000Hz程度の音を音として感じることができ、この周波数帯域を可聴域という。可聴域を超えた周波数の音は超音波という。可聴域を下回る、あるいは可聴域下限付近の低周波音は、これまで知られていなかったタイプの騒音被害(低周波騒音)を引き起こすものとして注目されている(低周波音参照)。

音楽CDサンプリング周波数44100Hzを採用しているが、これは理論上22050Hzまで再現できるためヒトの可聴域は十分カバーできると考えられたからである。またブラウン管テレビの走査線の走査回数は15750Hz(525本x30フレーム/秒、NTSCを採用している地域)であるため人によっては可聴域内に入り、走査に伴って生じる高周波の雑音が聴こえてしまう。

加齢による可聴域の変化

上記の通り、人間には限られた周波数しか聞き取れないが、年齢により可聴域が低下する。20代前後をピークに聴力が低下し始め最終的には老人性難聴になる。子供には聞こえるが、大人には聞こえないことを利用した商品開発も進んでいる。


聴覚系の解剖

外耳は耳介(じかい)、外耳道からなる。耳介は、パラボラアンテナのように空気中を伝わる音声の音圧をあげて集音する機能を持つのみならず、その複雑な形態から、音源の方向によって音響伝達特性が変わることで上・前後・左右といった音源定位に役立っている。外耳道は約20~30mmの長さを持っており、鼓膜で終わる。

中耳は、鼓膜、つち骨、きぬた骨、あぶみ骨の3つの耳小骨(じしょうこつ)よりなる。空気振動による鼓膜の振動が内耳のリンパ液に伝わる際、3つの耳小骨を伝わることで、鼓膜とあぶみ骨の面積比の関係とてこの原理により圧力が約22倍に上昇する。つまり天然の物理的変圧器の役割を果たしている。ベートーベンは耳小骨の動きが悪くなる耳硬化症に罹患していたといわれている。

内耳は側頭骨の中に位置し、直径1cm程度で2回り半巻いておりカタツムリのような形をした蝸牛(かぎゅう)、半規管、前庭よりなる。蝸牛は内部が3層構造になっており(上から前庭階、蝸牛管、鼓室階)それぞれリンパ液などで満たされている。あぶみ骨の振動が蝸牛の入り口の小窓(卵円窓:らんえんそう)に伝わり、内部のリンパ液を振動させ、コルチ器を載せた基底膜を振動させる。このとき最も強く振動する基底膜の位置が音の周波数により異なり、高い音の方が入り口付近、低い音の方が入り口から遠い位置の基底膜を振動させる。この振動がコルチ器のうちの内有毛細胞の不動毛を変形させ、イオンチャンネルを開かせ細胞を電気的に興奮させ、内耳神経へと伝えられる。

このような基底膜の物理的な周波数特性に加え、内有毛細胞の特定の周波数への「チューニング」という生物的な要素により、我々は音声認知の初期から、周波数情報を神経細胞興奮という情報に変換しているのである。基底膜の周波数特性を発見したベケシー(Georg von Békésy)はその業績で1961年のノーベル医学生理学賞を受賞している。

その後内耳神経に伝達された神経興奮は背側と腹側の蝸牛神経核を経て、ほとんどは対側の(一部同側の)上オリーブ核に中継され、外側毛帯、下丘、内側膝状体を経て大脳の聴覚皮質に伝達される。

聴覚に関連する話題


鼓室形成術 慢性中耳炎等により耳小骨の機能が失われると、中耳のインピーダンス整合がうまくいかなくなり、難聴になる。耳小骨の代わりに人工骨を外科的に取り付けることで難聴が軽減する。

人工内耳

内耳に障害があるために難聴になっている患者に対して、人工内耳を埋め込む手術がなされることがある。これはマイクロフォンで拾った音を小型のコンピュータにより電気信号に変換し、内耳に挿入した電極から音の高さに応じて違う箇所を刺激することで聴覚を補助するものである。

聴覚皮質のトノトピー

内耳の基底膜において音が周波数分解されているのと対応するように、聴覚皮質においても音の高低に対応する配列があることが以前から電気生理学的に知られており、近年の脳機能イメージング研究でも確認されている。この周波数に対応する中枢神経系の配列を「トノトピー」(tonotopy ← tono:音の、topos:場所)という。

聴覚の定義について


冒頭で「聴覚は、外耳、中耳、内耳、聴神経、聴覚皮質などの器官を使い、音声信号を神経活動情報に変換し、音の強さ、音高、音色、音源の方向、リズム、言語などを認識する能力・機能をさす」と定義した。

しかし実は定義として不十分な点が以下の2点含まれている。

  • 認識する能力と書いたが、認識とは脳のどの部分が行うのかというのは未解明な部分である。「音声情報を一次聴覚野の細胞の興奮に変換すること」イコール「意識が音を音として感じ認識すること」ではないと考えられるからである。意識が脳のどこで担われているのかという重大なテーマが関与することになる。これは脳科学の領域でも盛んに研究されているテーマである。
  • 「外耳、中耳、内耳、聴神経、聴覚皮質などの器官を使い」と書いたが、それ以外の器官も使っている可能性がある。例えば、言葉の認知には運動性言語野としてしられていたBroca野が関与すると言われている。従って聴覚皮質以外の脳の領域も聴覚に関与しているということになる。また、例えばイヌやウマなどでは音源の方向の認知に、アンテナのように耳介を動かすこと部分的に役立っている。ヒトでは耳介は通常動かないが、顔の方向を微妙に変えることなどで音源定位に関与している。従って、頚部の筋肉など耳よりも末梢の器官も聴覚に関与していると言うこともできる。

関連項目


感覚 |

Oïda | Høresans | Hearing (sense) | Kuuloaisti

 

This article is licensed under the GNU Free Documentation License. It uses material from the "聴覚".

Home Pageartsbusinesscomputersgameshealthhospitalshomekids & teensnewsphysiciansrecreationreferenceregionalscienceshoppingsocietysportsworld