精神外科はかつて散発的に流行した、脳に外科的手術を行うことにより精神疾患の治療が行えるとした医療分野。代表的なものにロボトミーがある。後に脳神経外科学。
前頭葉切截術は、術式が異なるものも含め一般にロボトミーと呼ばれる。この言葉は、ギリシア語の「λοβός lobos=葉、この場合は前頭葉、τέμνω temno→tomy=切断」から作られた造語である。発音が似ている「ロボット」は、チェコ語のrobota(労働)という言葉から作られたとされ、語源が全く異なり関連性はない。
しかしロボトミーを含め現在では精神外科という治療法は否定されている(用語としては「美容外科は精神外科だ」などと比喩的に用いられることはある)。
日本では1942年、新潟医科大学(後の新潟大学医学部)の中田瑞穂によって初めて行われ、戦時中および戦後しばらく、主に統合失調症患者を対象として各地で施行された。施行された患者数は、一説によると3万から12万という。作家中村真一郎もロボトミーを受けた一人である。日本では1975年に「精神外科を否定する決議」が日本精神神経学会で可決され、それ以降は行われていない。
死者が多数でたが、正式な死者数や、死因が手術による者が何割かなどは不明である。切除により反応が低下するのは当然であるが、治療効果があったかどうかは疑問である。
当時の標準的なロボトミーの術式は、前側頭部の頭蓋骨に小さい孔を開け、ロイコトームと呼ばれたメスを脳に差し込み、円を描くように動かして切開するというものであった。前頭前野と他の部位(辺縁系や前頭前野以外の皮質)との連絡線維を切断していたと考えられる。前頭前野は、意志、学習、言語、類推、計画性、衝動の抑制、社会性など、ヒトをヒトたらしめている高次機能の主座である。ロボトミーは前頭前野の機能を奪う、極論すれば「人間性を奪う」手術であったとも言える。
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