積乱雲(せきらんうん)とは何らかの原因で発生した強い上昇気流によって雲頂が時には成層圏下部にも達することがあるような巨大な雲の一種である。雲の記事に載っている雲の分布概念図からも分かるように積乱雲の鉛直方向の大きさは雲の種類の中でも最大なものであろう。また、積乱雲は他にも雷雲(らいうん)、入道雲(にゅうどうぐも)などの言い方がある。
積乱雲は対流圏界面の高さまで達するほど鉛直方向のスケールが大きいが、通常の場合は積乱雲の雲頂が成層圏に突入しそこからさらに発達し続けることはない。したがって、対流圏界面が天井のような形で、そこから雲はどんどん水平に広がっていく。全体的に見るとかなとこのような形をしていることから、この雲をかなとこ雲(anvil cloud)という。かなとこ雲は、その付近の低温によって氷の結晶で構成されている。雲が圏界面付近で成層圏に突入せず、水平に広がる理由は対流圏上部と成層圏下部の温度の違いによる。すなわち、対流圏上部では気温が-70℃前後であるのに対して成層圏下部はオゾン層の影響で相対的に気温が高い。この気温差によって雲頂は成層圏に突入することができず、圏界面を境に水平に広がる。かなとこ雲が発生しているということは、その積乱雲の活動が非常に活発であり、地上では激しい雷雨を伴う場合が多い。すなわち、かなとこ雲が発生している積乱雲は後に述べる積乱雲の成熟期の姿である。また、積乱雲の多くはその雲頂あたりに、強いジェット気流の影響を受けて氷晶でできた巻雲などを伴う場合がある。
積乱雲は地上から見ると一つの大きな雲の塊のように見える。しかし実際、積乱雲がかかっている付近では雨が弱まったり強まったりしている。すなわち、積乱雲という大きな雲の塊の中にいくつもの小さな積乱雲が存在していることが知られている。人間の体を構成しているのが細胞なので、積乱雲を構成している小さな積乱雲を細胞に例えて降水セル(precipitation cell)と呼んでいる。積乱雲の寿命が数時間なのに対してこれらの降水セルはスケールが相対的に小さいので寿命は約30分から60分である。降水セルの一生は次の三過程に分けられている。すなわち(1)成長期、(2)成熟期、(3)減衰期の三つである。
また、メソ・ハイから空気が地上に向けて一気に流れ出すとき、周りの比較的暖かい空気と衝突して、冷たい空気が暖かい空気に入り込むような形をする。これは寒冷前線の発生のメカニズムに似ている。したがってこの部分では小型の寒冷前線のようなものが起き、この線に沿って突風が吹いたりもする。この線をガストフロントという。このとき、地上ではこのように下降気流が増すことによって、結果的には降水セルが死滅し、残っていた雨粒がしとしとと降るなどして最後に雲が消えるのである。こうして降水セルは一生を終える。
ガストフロントがある証拠に、実際激しい降水が数分続いてその後突風を伴い、降水が弱まるという気象現象は多く観測されている。しかし、今述べた降水セルの例はかなり活発な積乱雲において起こることで、降水セルによっては成長期からすぐに消滅に向かうこともある。降水セルがきれいに三段階を経て一生を終えるかはそのときの大気の状態による。
また、先ほど述べた原因によって起こる下降気流が極端に強くなり、地上に被害をもたらすこともある。この積乱雲を伴う強い下降気流が極端に強い場合、これをダウンバーストという。
降水セル及び積乱雲が一生を終えても、先ほど述べたガストフロントは残ることがある。ガストフロントはメソ・ハイが原因で起きたものなので、周りより冷たい空気からなることは明らかである。ガストフロントにさらに湿った暖かい空気が流れ込んだ場合、再びその部分だけ上昇気流が発生し、結果的には新たな積乱雲が発生してしまうこともある。すなわち、もとの積乱雲を原因に新たな積乱雲が発生するので、積乱雲の世代交代を行う。積乱雲の世代交代には次の様な場合もある。積乱雲と積乱雲が二つ並行してある場合、両者の積乱雲がメソ・ハイによって下降気流を伴う。下降気流と下降気流がぶつかると空気は上にいくしかなく、結果的に上昇気流が発生して積乱雲が発生することもある。
このような世代交代は衛星画像で見てみると良く分かる。一つの積乱雲の塊を先頭に、その後ろにいくつもの積乱雲が続いている。これは今述べたようなメカニズムによって発生することが多い積乱雲である。 }}
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