痴呆(ちほう、英Dementia、独Demenz)は、後天的な脳の器質的障害により、いったん正常に発達した知能が低下した状態をいう。高齢者介護分野においては、認知症(にんちしょう)と呼称する。(両用語については、下段の#言葉の議論を参照)
従来、非可逆的な疾患にのみ使用されていたが、近年、正常圧水頭症など治療により改善する疾患に対しても痴呆の用語を用いることがある。
なお、マスコミ、あるいは非専門家が年を取るごとに物覚えが悪くなり、それを認知症(痴呆)前兆と判断してしまうケースがあるが違う。近年になり、認知症(痴呆)は、遺伝病である可能性が高いことがわかった(外因性を除く)。 具体的には、正常な人だと、年を取るごとに、脳細胞が減っていくが、認知症の場合急激に脳細胞が減っていき、また脳自体縮小することがわかった。また、70歳以上から発症する可能性が高くなることも明らかになった。
脳をゼリーに例えると、正常な人はゼリーがほとんど縮むことはなく、また栄養分(神経細胞など)も叙々に減っていくに対して、認知症だとゼリー自体が縮むことになる。
痴呆の原因となる主な疾患
近年、認知機能改善薬としてドネペジル(商品名:アリセプト)が開発され、アルツハイマー型痴呆を中心として認知機能の改善、痴呆進行の緩徐化などの効果が期待されている。 また、痴呆患者は認知機能低下のみならず、不眠、抑うつ、易怒性、幻覚(とくに幻視)、妄想といった周辺症状と呼ばれる症状を呈すことがあり、その際は適宜、睡眠薬、抗うつ薬、抗精神病薬、抗てんかん剤などの対症的な薬物療法が有効なこともある。
なお、日中の散歩などで昼夜リズムを整える、思い出の品や写真を手元に置き安心させるなどの薬物以外の手段も有効な場合がある。
介護保険、デイケア通所など社会資源の利用も有用である。 しかし、今まで認知症患者の立場からの研究が行われていなく、当事者の立場からの医療・福祉が提供されていない現状がある。
いずれにせよ、専門医(精神科医、神経内科医など)の協力を得て診断、治療を行うことが望ましい。
現在、第162回国会において審議されている「介護保険法等の一部を改正する法律案」による改正後の介護保険法では「脳血管疾患、アルツハイマー病その他の要因に基づく脳の器質的な変化により日常生活に支障が生じる程度にまで記憶機能及びその他の認知機能が低下した状態」として認知症を定義している。
心理学会関係からは、「認知」は人間の知的機能をあらわす概念であり、それをそのまま病名として用いると意味が不明確で誤解が生じる危険があるとして異論もある。社団法人日本心理学会・日本基礎心理学会・日本認知科学会・日本認知心理学会から連名で出された意見書の中でその不適切さが指摘され、代案として「認知失調症」を提起する意見書が厚生労働省に提出されている。
江戸時代においては、「痴呆」は「耄碌」(もうろく)・「老碌」(ろうろく)と呼ばれて一種の老化に伴う一時的な現象と捉えられて、余程深刻な症状でなければ医師が関与することも無く、社会でも柔軟に受け止められていた。当時においてはその介護はもっぱら家族によって任されていたが、祖先の霊が家を守っていると信じられていた当時においては、介護に尽くすことで高齢者が死後に祖先の霊として新たに加わって家を加護してくれる事で家族もまた報われると信じられていた節もあり、親への孝行を重視された儒教思想も加味されて、介護を負担としてのみで捉えてはいなかったとする説もある。
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