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生気論(せいきろん)とは生命の営みには何らかの非物質的存在、すなわち生気が関わっており、合目的性が備わっているとする学説。一般的には機械論と対立するものとされる。

現在では自然科学による生命現象の説明が行われ、生気論によるものと置き換えられてきている。現代の自然科学では機械論や実証主義などに基づく科学的方法により生命を解明しようとしており、生物の合目的性や非物質的存在は基本的に否定され、生気論は受け入れられていない。ただし現在でも自然科学によって説明できない事象もまだ多くあり、伝統医療における「」の理論など、非物質的存在の概念は臨床面で有効なものもある。

またほとんどの伝統医療では生気エネルギー — 生物と非生物を決定づけるもの — が不均衡になることによって病が生じると考えた。西洋の伝統ではこれらの生命力は四大気質とされ、東洋では気やプラナなどと呼ばれる。

歴史


古代ギリシア

ヒトをはじめとして生物は生きているが、その振る舞いは非生物のそれよりも複雑であり、合目的的に創られている印象を受ける。また経験的に生命には非生物とはことなる何かが備わっていると感じることがあり、生気論はおそらくそれらの経験則から始まった学説である。そのため生気論は古い歴史をもつ。特に古代ギリシアヒポクラテスアリストテレスガレノスらが残した学説は有力であった。

例えばヒポクラテスは人間の気質を規定する四体液を唱えた。黒胆汁、黄胆汁、血液、粘液があり、それらの体液の割合により人の気質が決定されているとするものである。アリストテレスは鉱物、植物、産卵性動物、哺乳類、ヒトという生物の配列を考え、植物には植物霊魂、動物には動物霊魂、人間には理性霊魂が備わっているとした。ガレノスは解剖学や生理学の観察から、生気は自然精気、生命精気、動物精気の三形態をとると説いた。霊魂や精気とはすなわち生気と等価のものである。

彼らの学説は、西洋における生気論の源流であり、生物は何らかの目的を持って創られたという推測を前提としていた。

自然科学の発展と生気論

17世紀の、フランスの哲学者ルネ・デカルトの『情念論』(Passions de l'âme 1649年)で松果腺からの動物精気が神経を動かし感情が生じるとし、17世紀 - 18世紀の化学者ゲオルグ・エルンスト・シュタールは、無機物から有機物を合成できるのは生物のみであり、それは体内の生気が必要であるからだ、と提唱した。これは生気論の根拠として重要であった。しかし化学の技術発展により、1828年フリードリヒ・ヴェーラーによる尿素の合成をはじめとして、多くの有機物が人工的に生体外で合成できるようになった。

また1861年ルイ・パスツールの『自然発生説の検討』によって示された生物の自然発生説の完全否定、1590年ヤンセンによる顕微鏡の発明による1672年アントニー・ファン・レーウェンフック微生物の発見から導きだされた、ロバート・コッホによる1876年炭疽菌発見とその病原性の証明から始まった微生物病原説解剖学生理学により様々な器官の機能の解明などにより、生気論による生理機能の説明は必要とされなくなり、医学における生気論もゆらぎはじめた。

チャールズ・ダーウィンなどによって提唱された進化に含まれる適者生存などの概念もまた生気論に大きな衝撃を与えた。人を含め、現存する多様な生物は、何らかの目的をもって創造されたのではなく、偶然がもたらす多様化の過程で生じてきたと考え、生物の合目的性を否定することになるからである。

このように、物理学的な説明が可能である場合はそれが採用されたが、生命現象がもつ全体性などから、ネオヴァイタリズム(新生気論)をハンス・ドリューシュ(1867年 - 1941年)がとなえたが、論争も特になく、学会では実証不可能な生気論はその範疇では扱わないものとされている。

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