犯罪(はんざい)とは、一般には、法によって禁じられ刑罰が課される根拠となる事実をいう。犯罪について帰責され刑罰の対象となる者は、犯罪者(犯人)と呼ばれる。
定義
ドイツの刑法理論を継受する国(日本など)においては、構成要件に該当する違法かつ有責な行為と定義される(行為かどうかは構成要件の問題とする見解が多いので、その意味ではこの表現はあまり正確でないとも言える)。
構成要件、
違法性、
責任のそれぞれについて、理論的な対立がある。各項目を参照のこと。
犯罪かどうかは、日本の通説によると次のような枠組みで判断される。
構成要件該当性
第一に問責対象となる事実について構成要件該当性(充足性とも)が必要である。構成要件とは、刑法各則や特別刑法に規定された行為類型である。
行為でないものはおよそ犯罪たり得ないのであり、行為性は犯罪であるための第1の要件であるとも言える。行為性を構成要件該当性の前提となる要件として把握する見解もある。行為の意味についてはさまざまな見解が対立している(行為論)。行為でないものとしてコンセンサスのある例としては、人の身分(魔女など)や心理状態(一定の思想など)、人以外の動物等の動作などがある(歴史的にはこれらが犯罪とされてきたことがある。)。犯罪が行為でなければならないということは、これらのものはおよそ犯罪たり得ないことを意味する。
問責対象となる事実(行為態様、因果経過、結果、行為時の状況、心理状態など)が構成要件に該当するものでなくてはならない。各構成要件はそれぞれ固有の行為、結果、因果関係、行為主体、状況、心理状態などのメルクマール(構成要件要素)を備えており、問責対象となる事実がこれらの全てに該当して初めて構成要件該当性が肯定されるのである。なお、構成要件には基本的構成要件(直接の処罰規定があるもの)と修正された構成要件(未遂犯や共犯など)があるとされる。
違法性
第二に
違法性の判断が行われる。通説によるとこの段階では違法性阻却事由のみが問題となる。たとえ、構成要件に該当するとしても、違法でない行為は有害でなく、禁止されず、したがって犯罪を構成しないのである。違法性の本質は、倫理規範への違背であるとされたり(規範違反説)、法益侵害・危殆化とされたりする(法益侵害説)。両者を折衷する見解が多数であるが、後者の見解も非常に有力である。この対立は、違法性の判断の基準時(行為時判断か事後的判断か)の問題と絡んで、学説は深刻に対立している(いわゆる行為無価値論と結果無価値論の対立である。通常は、規範違反説=行為時判断=行為無価値論、法益侵害説=事後的判断=結果無価値論として理解されている。)。違法性阻却事由には、例えば「急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない」(刑法36条)とする正当防衛の規定がある。なお、明文のない違法性阻却事由も認められる(超法規的違法性阻却事由)。
責任
第三に
責任の判断が行われる。たとえ、構成要件に該当し違法な行為であっても、それが自由な意思による場合に初めて非難が可能となるのであり、したがって他の行為を採ることを規範的に期待しえない場合には非難が出来ず、これを治療や教育の対象とすることは別段、処罰の対象とすることは相当でないからとされる(道義的責任論)。例えば、違法性阻却事由該当事実を誤想した場合には故意責任は問えないとされる。また、行為者が刑事未成年者であったり重度の精神障害を患っている場合には、その者の行為は犯罪とはならない。明文のない責任要素ないし責任阻却事由も認められる。
その他
客観的処罰条件や一身的処罰阻却事由といった処罰条件という概念があるが、これらは犯罪の成立を前提に処罰が可能かどうかという問題に過ぎないとされる。もっとも、これらを構成要件要素に組み込む見解も有力である。
なお、親告罪における告訴などは訴訟条件であって、刑事実体法の問題ではない。
刑法の定める犯罪リスト
日本の
刑法及び
特別刑法諸法に定められた犯罪には次のようなものがある。
- 個人的法益に対する罪
- 生命に対する罪
- 身体に対する罪
- 自由に対する罪
- 秘密・名誉に対する罪
- 信用及び業務に対する罪
- 財産に対する罪(財産犯)
(財産犯については、個別財産に対する罪と全体財産に対する罪,
領得罪と
毀棄罪とに分類するのが通常である。)
- 社会的法益に対する罪
- 社会・公共の平穏に対する罪
- 取引の平穏に対する罪
- 公衆の健康に対する罪
- 善良な風俗に対する罪
- 国家的法益に対する罪
- 国家の存立に対する罪
- 国家の作用に対する罪
- 外国又は国交機能に対する罪
犯罪学
広義の
犯罪学(はんざいがく)とは犯罪の現象と原因、予防方法を研究する学問の分野をいう。狭義の
犯罪学(はんざいがく)とは犯罪の現象と原因を研究する学問の分野をいう。
犯罪とマスメディア
市民は
事件報道によって犯罪を知り、刑事裁判の判決報道によって刑罰の軽重を知る。マスメディアは違法性のある事例を取り上げることによって、警察が捜査に乗り出すこともある。この様に犯罪における
マスメディアの果たす役割は大きい。
関連項目
犯罪
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