特別支援教育(とくべつしえんきょういく)というのは、日本の障害児教育の新しい呼称。2004年の春から本格的に旧来の障害児教育という言い方に取って代わる予定だったが、まだそこまで至っていない。発達支援教育(はったつしえんきょういく)、特別発達支援教育という言い方もする。文部科学省では、英語表記はspecial support educationという表現を充てている。
単に障害児をどう教えるか、どう学ばせるかではなく、障害をひとつの個性としてもった子、つまり「支援を必要としている子」(children with special needs)が、どう年齢とともに成長、発達していくか、そのすべてにわたり、本人の主体性を尊重しつつ、できる援助のかたちとは何か考えていこうとする取り組みである。「障害児」から「支援を必要としている子」へという言い方は、文部科学省の「特別支援教育について」という資料の中に出てくる表現である。
学校教育法でいう障害児の定義は、かなり狭いもので、言語障害児や情緒障害児はもとより、LD、ADHDの子供たちは含まれていない。そういう子供たちから、不登校、不適応、健康障害児まで含めて、発達の援助を考えていく。発達支援には、学習の他にも運動発達支援、余暇支援、進学・就職支援なども含めて考えられる。
なお、アメリカなどの諸外国では、発達支援教育の対象はハンディキャップのある児童に限らず、能力が著しく高い児童(ギフテッド・英才児)も対象となっている場合がある。
特別支援教室では、これまで通常学級に在籍していて、対象とされなかったLD、ADHD、高機能自閉症(アスペルガー症候群)、軽度発達障害といわれる子どもたちが対象に含まれ、特別な支援を受けることが予定されている。そのためにこれまで存在していた上記の学校教育法75条の学級も廃止されることが予定されており、その対象となっていた子どもたちも特別支援教室での取り出し指導の対象となる。
学級として存在していた障害児学級が無くなることは実質的には人員削減となり、その上に新たにLD等の子どもたちへの支援が可能なのか論議の的になっている。文部科学省はLD、ADHD等の子どもの通常学級での存在が全児童生徒の6.3%と指摘しており、500人規模の学校で30人は存在することになり、現在の障害児学級生徒を合わせて特別支援教育の対象とするとしている。
障害児学級を廃止して実質的な人員の削減の上に予定される新たな取り組みに対してその実施の困難が実際にこれらの子どもたちと関わっている人々から危ぶまれている。文部科学省はこれらの課題に対して明確な方針を示してはいず、上記の新たな対象に対する教育の必要性を強調するばかりである。「地方の実情に合わせて」などという発言から、これらの問題を地方の判断に任せてしまうのではないかとの見方も強い。実質的な制度的保障をともなわないこの政策に対する不安が現場や各地方で渦巻いている。
また、今までの盲・聾・養護学校には、地域のセンター的な機能を人員の配置に言及せずにもとめている。すなわち盲・ろう・知的養護・病弱養護・肢体不自由養護などの学校種別を廃止し、それらを全て「特別支援学校」とすることが予定されているのである。こうした政策を先導する形で、一部の地方では校内指導にあたる教員を大幅に削減し、外部の相談にあたる教員に配置転換した結果、本当に特別な支援が必要な重度の障害がある児童生徒たちへの教育的な取り組みが危うくなっているケースも見られはじめている。このように、人的資源を大量に必要とする障害児教育の宿命から目を逸らし、制度の手直しによってあたかもバラ色の教育が実現するかのように語られている「特別支援教育」の理想とは相容れない現実が存在する。
この法案の中間まとめは2004年8月にも出される予定であり、賛成反対を問わず教育関係者の注目するところとなっている。まだ法案の骨子さえ明らかにされていない現状の中で、2007年実施という方針だけがすでに現場を飛び交っている。
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