焼酎(しょうちゅう)とは、酒類のうち蒸留酒の一種である。
日本国内では酒税法によって種別基準が定められており、税法上においては甲類と乙類に分けられている。酒税が政策的に安くされたことで、大衆酒として古くから愛飲されてきた。
定義
酒税法では「アルコール含有物を蒸留した酒類」のうち、以下の条件を満たす酒類を焼酎としている。
- 発芽した穀類を使用していない
- 白樺の炭などで濾過していない
- 蒸留時に別途定められている物品以外を添加しない
- アルコール度数が所定を下回る
歴史
古くはその強い度数から「あらき酒」、もしくは蒸留器をも指す「ランビキ(蘭引)」と呼ばれた。英語ではarac(アラック)と言われ、東アジア地域に広く見られる各種蒸留酒の総称となる。
日本国内では文献記録で確認できる限り、少なくとも16世紀頃から焼酎が造られていたと見られている。その初期から江戸期に至るまでの焼酎は、製造に単式蒸留器を用いており、現代の法体系でいうところの「焼酎乙類」に限られていた。
明治になり、イギリスから連続式蒸留機が輸入され、高純度アルコールが安価に大量生産できるようになった。これに加水したものが「新式焼酎」として広まり、対して在来の焼酎は「旧式焼酎」と呼ばれるようになる。
その後、酒税法で「新式焼酎」にあたる「焼酎甲類」と、在来焼酎にあたる「焼酎乙類」の区分が制定された。
甲類と乙類
焼酎甲類
一般に、
糖蜜等を原料として連続蒸留器で作られた、高純度エチル
アルコールに加水したものである。
日本の税法上はアルコール度数36%未満。基本的にはアルコールの風味のみで味覚の個性は薄い。しかし、加水される水によって風味・口当たりが微妙に異なり、同じ甲類であっても味に微妙な違いが現れている。一部には小麦・大麦など穀類を用いてある程度の風味を持つものも存在する。
低コストでの大量生産に適するため、大手企業によって大規模に量産されている。大型ペットボトルや紙パック容器を用いて販売され、廉価な酒として飲まれる。また手を加えて飲まれることも多く、チューハイなどのベースや、リキュールの材料にしばしば用いられる。梅酒などの果実酒づくりに用いられる「ホワイトリカー」もこの甲類焼酎である。
近年は甘味の強い韓国焼酎が盛んに輸入され、これも税法上の焼酎甲類に区分されている。
焼酎乙類
概要
米、
麦などを原料とし、単式蒸留器で蒸留して作る焼酎で、日本在来の伝統的な酒類である。日本の税法上はアルコール度数45%以下。原料の風味を強く残し、個性が強い。多くが中小メーカーの製品であり、
九州地方が特産地として有名だが、近年では大手酒造メーカーも本格焼酎の生産に乗り出している。
製造法の流れは以下の通りである。
- 元の原材料(多くの場合は米ないしは麦)へこうじ菌を生やし、こうじをつくる。
- こうじをタンクや甕で発酵させ、もろみを作る(一次発酵)。
- 一次発酵させたもろみの中へ原材料を投入させ、発酵させる(二次発酵)。このとき投入した原材料が焼酎の主要原材料として表記されることになる。二次発酵としてサツマイモを投入すれば「芋焼酎」となる。
産地の九州では、日本酒よりも一般的な存在で、通常、お湯割りで飲まれる。焼酎のお湯割りは、酒杯に先に湯を入れ、後から焼酎を静かに加える。対流によって自然に混ざるのでかき回す必要はない。湯よりも焼酎を多くするのが基本で、酔い心地が柔らかく、香りも楽しめる。より本格的に味わうには、先に焼酎と水を合わせておき、一日おいたものに燗をして飲むとあたりがより柔らかになる。
種類
焼酎乙類には、以下のようなバリエーションがある。
- 米焼酎
- 日本酒同様、米を原料とする。戦国時代から作られていた記録があり、日本酒を造るには温暖過ぎる地域で発達したものと見られる。味はやや濃厚。熊本県が名産地として知られている。特に人吉盆地で作られる球磨焼酎は世界貿易機関 (WTO) の協定において、原産地としての保護産地指定を受けている。
- 麦焼酎
- 元々は、二毛作によって作られる麦を原料としたものと考えられる。一般に米焼酎より癖が少なく、飲みやすいと言われる。大分県や長崎県壱岐などが有力な主産地。壱岐焼酎は世界貿易機関 (WTO) の協定において、原産地としての保護産地指定を受けている。
- 芋焼酎
- 南九州で広く栽培されるサツマイモを原料とした焼酎。鹿児島県・宮崎県で広く飲まれている。味はかなり濃厚で、しばしば独特の臭みがあるため、地元以外では好き嫌いが分かれるが、近年は匂いを抑えたものも作られている。かつては鹿児島県と宮崎県のみで生産されていたが、現在では日本各地で地元のサツマイモを使用した芋焼酎が生産されるようになってきている。鹿児島で生産される薩摩焼酎は世界貿易機関 (WTO) の協定において、原産地としての保護産地指定を受けている。
- 黒糖焼酎
- 太平洋戦争後、アメリカに占領されていた奄美諸島では米が不足し、焼酎の原料に事欠いた。そこで島民は、当時余剰気味だった黒砂糖を原料として焼酎を造った。1953年、奄美諸島の日本返還によって日本の税法を適用するにあたり、黒糖から蒸留する酒は焼酎としては認められないため、その取り扱いに関して議論がなされた。当時の大蔵省は奄美地方の振興策の一環として、米麹を使用することを条件に熊本国税局大島税務署の管轄区域(奄美群島の奄美大島、喜界島、徳之島、沖永良部島、与論島)に限って黒糖原料の焼酎を製造することを特認した。そのため黒糖焼酎は奄美地方でしか製造できない特産品となって現在に至っている。口当たりは比較的柔らかい。
- そば焼酎
- 1973年、宮崎県五ヶ瀬町の雲海酒造が開発した、ソバを原料とする焼酎。以後各地の焼酎メーカーで、米・麦との混和タイプも含めて広く作られるようになった。味わいは麦焼酎より更に軽く、くせが少ない。
その他、全国各地で様々な原料を利用した焼酎が造られている。代表的なものにごま焼酎、栗焼酎、じゃがいも焼酎などがある。沖縄県特産の蒸留酒である泡盛については、泡盛の項を参照のこと。
粕取り焼酎
上述の各種焼酎は全てもろみ取り焼酎と呼ばれ、一次発酵・二次発酵を経てつくられたもろみを蒸留したものである。
これとは別の製法として、清酒粕を蒸留してつくられる「粕取り焼酎」と呼ばれる焼酎もある。
粕取り焼酎は九州北部を中心に発達し、全国の清酒蔵で清酒を醸造できない時期に製造された。また、日本酒の仕上げ工程において中途で発酵を止め、防腐や辛口に仕上げる目的で用いられる「柱焼酎」として醸造される場合も多かった。
蒸留後に熟成させたものが飲めるようになる時期が早苗饗(さなぶり)という田植え後のお祭りの時期に当たっていたことから別名「早苗響焼酎」とも呼ばれる。
昨今の焼酎ブームにより、日本酒製造メーカーが粕取り焼酎に進出するケースが増えている。
本格焼酎
「本格焼酎」の別名は、「乙類」が「甲類」に劣る、と誤解されることを乙類メーカー各社が危惧し、旧大蔵省に働きかけて併記を認められたものである。2002年11月1日に基準が強化され、以下の基準のいずれかを満たさない場合には本格焼酎と名乗ることは出来なくなった。なお、「焼酎乙類」で良い場合はどんなものでも投入することができる。
- 原料に穀類ないしは芋類を使用する。
- 原料に清酒の粕を使用している。
- 米麹、水および政令で定められた砂糖を使用している。(黒糖焼酎)
- 上記に該当しない場合は、穀類もしくは芋類と穀類麹もしくは芋類麹が、水を除いた原料の50%以上の重量を占めている。
本格焼酎ブーム
2003年頃から焼酎乙類を対象とする「本格焼酎ブーム」が起き、2004年には初めて
日本酒の出荷量を上回った。ブームに伴って、本格焼酎を専門に扱う
焼酎バーも登場している。
ブームの影響によって、材料や製法、貯蔵法にこだわったプレミアム焼酎も盛んに市場へと送り出されているが、少なからぬ弊害も生じた。芋焼酎の原料となるサツマイモが市場に不足する深刻な問題が起きたほか、一部銘柄ではプレミアがつき、ネットオークションで一本数万円などという値段が付けられるようになり、有名ソムリエが絶賛した銘柄などは、偽物が出回る騒ぎにまで発展した。
本格焼酎需要急上昇に伴い、各地で焼酎の生産設備拡充や休止酒造場の再開、新規参入などが図られた。しかし2005年頃からブームは沈静化しつつあり、ブームの反動による業界への悪影響が懸念されている。
混和焼酎
甲類と乙類を混和したものである。甲類と乙類のどちらが多いかで呼び名が異なる。乙類を50%以上95%未満混和したものを「乙甲混和焼酎」、乙類を5%以上50%未満混和したものを「甲乙混和焼酎」と呼ぶ。以前は本格焼酎と紛らわしい表示がされたり、混和率の表示などが表示されなかった商品もあったが、
2005年より業界で自主規制が敷かれ、混和率の明記などが定められている。
乙甲混和焼酎
乙類100%では匂いが強いなどの理由で飲みにくいため、これらを和らげるために用いられる。飲みやすさへの志向が強い。
甲乙混和焼酎
安価な甲類の利点を活かしながら、乙類の風味を加えることで安価で風味のある製品を作ることができる。価格への志向が強い。
カストリ
本来の粕取り焼酎とはまったく別な、粗悪焼酎に対する俗称である。
太平洋戦争後の社会混乱期に、原料・出所が不明、甚だしきは人体に有毒なメチルアルコールを水で薄めたような粗悪な密造焼酎が出回り、これら悪酔い確実な代物が俗に「カストリ」と称されたため、一般にも「カストリ=粗悪な蒸留酒」というイメージが定着した。その影響で、決して粗悪でない本来の粕取り焼酎まで誤解によってイメージダウンした時期がある。
ちなみに「カストリ雑誌」という言葉は、戦後のカストリ焼酎と同時期の昭和20年代、粗悪紙に俗悪な記事を掲載し、扇情的な表紙を添えて乱発された、多くの泡沫雑誌に対する蔑称である。その心は、どちらも「3合(3号)でつぶれる」。
メーカー一覧
外部リンク
参考文献
蒸留酒 | 九州の食文化
Shochu | Shochu