演劇(えんげき)とは、主として生身の俳優による演技を通し、なんらかのストーリーやテーマなどを、同じ場にいる観客に対しリアルタイムに提示する表現活動を言う。
演劇に関連する諸分野については、ウィキポータル 舞台芸術も参照のこと
演劇の起源
演劇の起源には諸説あるが、古代ギリシア以前の文献的資料が存在しないため、そのいずれもがある程度の推測に頼らざるを得ない状況がある。よく言われる説には、呪術や宗教的儀式が発展し、演劇となっていたのではないかというものがある。確かに古代ギリシアにおいては、悲劇の競演が行われる大ディオニュシア祭は、神
ディオニュソスを称える祭儀としての側面を持っていた。また呪術や宗教的儀式には、なんらかの行為・現象の模倣やその再現が重要な要素として含まれていることも多く、宗教が起源という説にはある程度の説得力がある。
一方で、人間が本能として、あるいは社会的営みとして行う遊びこそが演劇の起源とも言われている。例えばある者が他人や動物の物まねなどをする。それを見て楽しむ者が生まれた時点で、演劇が発生したとするものである。東洋の演劇には、猿楽など、そのような初期の発生形態を持つと思われるものも存在する。歌舞伎の語源も「傾く(かぶく=普通と違う目立った身なりや振舞いをすること)」である。また、世界的にみても、演劇を意味する語の多くは、英語の"play" や中国語の「戯」など、遊びと同義である例が目立つ。遊びを起源とする主張にも強い説得力がある。
いずれにせよ、演劇が人類史の初期に生まれたであろうことは間違いない。
演劇の定義
生身の
人間が舞台という場所に上がり、そこで観念的な存在である「役」の姿がどのようなものかを表現する。これは表現のアイデアはもとより、「役」へのある種の「執着」が問われるものだ。
また、演劇と良く似た表現方法に
映画がある。両者の違いは映像かライブか、の単純な違いであるが、このことが両者を決定的に分け隔てているのである。つまり、演劇は「定点観測」であり、観客は目の前の「空間」で展開される物語に注目する。そのため、たとえば役者が舞台から袖へ下がると、その先その役はどうしているか、ということは観客自身の想像にゆだねられる。一方映画は登場人物を映像で追う視点でストーリーが展開する。そのため、場所や時間がひっきりなしに移動し、観客はある人物の視点から物語の世界を覗き見ることになり、その役がある場所を離れた後どうなるか、ということについて想像する必要はない。このこともまた、演劇を演劇とする構成要素のひとつであろう。
演劇の歴史
演劇は長い歴史を持っており、古代宗教における祭儀が起源ではないかと考えられている。西欧においては、
古代ギリシアの時代には現在にまで通じる
ドラマの理論が確立されていた。日本においては、
伝統芸能の分野では
飛鳥・
奈良時代における大陸芸能の移入が起源とされ、それ以外の分野、特に現代演劇は、
近代における西欧演劇の移入が歴史上の起点と言える。
演劇史についての詳細は、演劇の歴史を参照のこと。
芸術作品としての演劇
俳優の
演技の他、様々な芸術表現を組み合わせ調和と協調をはかり、演劇作品は作られていく。それゆえに、演劇は
総合芸術の一つとして捉えられている。用いられる芸術分野は多岐に渡り、
音楽や
舞踊、
舞台音響・
舞台照明や
舞台美術、時には舞台機構や
劇場となる空間そのものなど
建築デザインの範疇にまで至る。演劇のために
劇作家が執筆する
戯曲は、それ単体でも
文学作品となりうる。
芝居・舞台・劇
演劇は通称「
芝居」といわれる。「芝居」は、平安時代の観客席が芝生であったことに由来している。現在でも「(お)芝居を観に行く」というフレーズが日常的に用いられているのに対し、「演劇を観に行く」という表現はあまりされない。また演劇に携わる者が「芝居をやっている」という表現をよく使う。
演劇を指して「舞台」と言われることも多い。「舞台を観に行く」も日常的である。「俳優Xの舞台出演作」とは言われても「演劇出演作」という表現は一般的ではない。俳優が初めて演劇作品に出演する場合、または作品そのものについて、「初舞台」という言葉が使われる。これらを鑑みると「演劇」という言葉には専門用語に近い位置づけがあるようである。
「劇」も辞書的には演劇と同意だが、単独では小学生の学芸会における上演などを指し、子供っぽくアマチュア的なものに使われ、「演劇」とは程遠いイメージを持つ。但し「現代劇」などの複合語においてはその限りではない。
演劇の上演
現代演劇を上演する上で不可欠なのは、一定以上の長い期間(多くは1ヶ月程度)にわたる
俳優の稽古である。多くの演劇作品で上演時間は1時間半以上、長いものでは途中休憩等を除いても3時間以上もあり、
演出家の指示のもと、稽古を通してセリフや動き・他の俳優とのやり取りを身体で覚える必要がある。古典
歌舞伎などの場合は、セリフや動きが型にはまっており、幼少時からの稽古で演目や演技が役者の身体に染み付いているためか、稽古期間は数日であるという。新作歌舞伎でも、その稽古期間は現代劇に比べ圧倒的に短い。また古典歌舞伎に演出家はいない。
同じ演目であっても、上演するたびに、俳優のセリフ回しや「間」の違い、掛け合いのタイミング、動きなどが少しずつ異なるものとなり、観客集団も毎回違うため反応も様々で、その反応によって俳優の演技も変化し、時には思わぬハプニングも起こるなど、まさに演劇は「生き物」であると言える。また上演期間内にも演出家による「ダメ出し」があったり、観客の反応を見て変更される箇所があったり、俳優自身もより良いものにしようと日々努力するため、特に複数回鑑賞する場合、映画鑑賞とは違った楽しみ方ができる。
最初の開演日を「初日」といい、最終公演を「千秋楽」(あるいは「楽日(らくび)」、「楽(らく)」)という。上演期間が長い場合、ほぼ中間に当たる上演日を「中日(なかび)」といい、それぞれに俳優やスタッフが祝われたり、お互いをねぎらったりする機会となる。
映像作品の演劇
リアルタイムの演技提示ではない「
映像作品中の演劇」(
映画、
テレビドラマなど)は、現代では演劇とは分けて考えられているが、例えばワンシーンが非常に長いなど、俳優やスタッフが入念に稽古やリハーサルを重ねて撮影された場合、そのシーンや作品自体を「演劇である」「演劇的だ」と評することがある。テレビドラマも開始当初は
生放送(リアルタイム)であり、その後も撮影用
ビデオテープは貴重であった時代が長く、演劇がそのまま撮影される手法が普通であったため、近年のドラマと
1980年頃までのドラマを見比べると、昔の作品では一連の演技がそのまま撮影されており、セリフのちょっとしたミス(いわゆる「噛み」)の許容度が高いなどリアル感があり、より演劇的である。作品や
監督によってはいわゆる「
長回し」の手法が用いられるなど、演劇的であることが重視される場合も多い。
関連項目
演劇の諸分野
その他
演劇の構成要素や用語
資料
上位概念
その他
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