検察官(けんさつかん)とは、検察、すなわち、刑事訴訟における捜査及び訴追、裁判の執行の監督などをその職分とする官庁をいう。検察庁は検察官の事務を統括する官署に過ぎず、行政組織上の検察官は建前上は一人一人が独任制の官庁として、単独で公訴を提起し公判を維持する権限を有する。三権の区分としては、行政権に属する官庁であるが、国民の権利保持の観点から準司法機関とも呼ばれる。
身分証票はなく、検察徽章(秋霜烈日章)が使われる。
検察官の責務
検察官は、刑事について、公訴を行い、裁判所に法の正当な適用を請求し、且つ、裁判の執行を監督し、又、裁判所の権限に属するその他の事項についても職務上必要と認めるときは、裁判所に、通知を求め、又は意見を述べ、又、公益の代表者として他の法令がその権限に属させた事務を行うと定められている。主として、刑事裁判における公判を受け持ち、その他、犯罪の捜査を行うが、警察とは異なり、治安維持機能はないため、犯罪の予防鎮圧権限などは有しておらず、武器の携帯使用などは認められていない。
検察官の権限の強さ、重要性
検察官は非常に強い権限を与えられているが、そのことを如実に示す考え方が法学上存在する。
- 検察官が国家を代表して国家の名の下に犯罪者を裁きにかける、という近代刑法学上重要な考え方の一つである(刑事訴訟法第247条)。
- 犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないと検察官が判断した場合には、検察官は公訴を提起しないことができる(刑事訴訟法第248条)。これは不起訴処分と言われ、俗に検パイとも呼ばれる。
検察官と検事
- 検察庁法に基づく職階制上の官名としては検事総長、次長検事、検事長、検事、副検事が、職名としては検事正、上席検察官があるが、単独の「検察官」という表記はこれらの総称であって官名・職名ではないため、辞令等での表記に「検察官」は用いられない。ただし、検察官も「(旧)刑訴規則五六条二項にいわゆる官名と解することができる」とした判例がある(最決昭27・6・5最高裁判所裁判集65号73頁)。
- 旧憲法下の官吏区分呼称であった勅任官・奏任官・判任官の名残で、検察庁の官吏には一級・二級・三級(算用数字でなく漢数字で表記)の別があり、検事長以上は一級、検事は一級又は二級、副検事は二級となっている。各自に発せられる辞令に「検事一級」、「副検事二級」のように記載される。また、検察官以外の検察庁の官僚にも同様の区別があり、検事総長秘書官は二級、検察事務官は二級又は三級、検察技官は二級又は三級とすることとなっている。これらの級の区分はいずれも検察庁法に定められている。
- 検事総長、次長検事、検事長は認証官とされ、その任免は天皇から認証される。
- 事件処理に必要な検察官が足りないとの理由から、法務大臣は区検察庁の検察事務官のうち一定の者にその庁の検察官の事務を取り扱わせており、このような検察事務官を検察官事務取扱検察事務官という。
- 法務省設置法附則第4項は、「当分の間、特に必要があるときは、法務省の職員(検察庁の職員を除く。)のうち、百三十三人は、検事をもってこれに充てることができる。」と定めている。この規定に基づき、法務省の要職(官房長・局長レベルを含む。)は検事が、検事としての官職を保持したまま兼任、併任(ともに法務事務官の官職に付される)又は充職(法務事務官の官職を付されない)の形で占める例が多い。ただし、法務事務次官については、検事出身者が、一時的に検事の官職を解かれて就任するのが慣例である。
採用システム
検察官は
裁判官や
弁護士と同様、原則として
司法試験に合格し、
最高裁判所司法研修所における修習(
司法修習)を終えた者が検事として採用され、この者が検察官となる。この他に
検察事務官や
警察官等を一定年数経験した者が考試を経て採用される
副検事等から、更に考試を経て検事となり検察官となる者(特任)や、3年以上法律学の
大学教授・助教授であった者などから採用されることもある。副検事が考試を経て検事になった後、弁護士となるには、考試を経た後に検察官(副検事を除く)の職に在つた期間が通算して五年以上になることが必要である(弁護士法第5条第3項)。
法務大臣の指揮権
検察官はそれぞれが検察権を行使する独任官庁であるが、結局のところ検察権は行政権に属し、全体として統一されたものでなければならないことから、検察官は検事総長を頂点とした指揮命令系統となっている(検察官同一体の原則)。
検察官は、例外を除き起訴権限を独占する(国家訴追主義)という極めて強大な権限を有し、刑事司法に大きな影響を及ぼしているため、政治的な圧力を不当に受けないように、ある程度の独立性が認められている。端的なものが法務大臣による指揮権の制限である。検察庁は行政機関であり、その最高の長は法務大臣であるため、当然に法務大臣が各検察官に対して指揮命令が出来るのであるが、この指揮権については検察庁法により「検察官の事務に関し、検察官を一般に指揮監督することができる。但し、個々の事件の取調又は処分については、検事総長のみを指揮することができる。」として、具体的事案については検事総長を通じてのみ指揮が出来るとした。法務大臣と検事総長の意見が対立した場合に問題となり、かつては法務大臣の指揮に従わないこともありうる旨を述べた検事総長もいて国会で問題とされたものの、法的には「法務大臣の職務命令に重大かつ明白な瑕疵がない限り違法なものでも服従する義務がある」とされ、その結果是非については、指揮権を発動した際の国民世論が決定することとなり、政治責任の問題である。
他の捜査機関との関係
検察官は公訴機関であると同時に、第二次的・補充的とはいえ捜査権限も有することから他の捜査機関(
一般警察職員・特別警察職員)との関係が問題となるが、法は原則としていずれも協力関係であるとしながらも、公判維持の観点から捜査活動上については検察官に一定の調整・指揮権限を与えている。もっとも、正当な理由がなく検察官の指揮に従わない場合、検事総長、検事長、検事正は従わない司法警察職員の懲戒の請求を懲戒権を有する者、即ち
公安委員会にすることが出来るのみであり、検察官自身には懲戒権限はない。国家公安委員会及び警察庁長官と検事総長と常に緊密な連絡を保つものとされ、刑事訴訟法上の指揮関係は存在しない、司法警察活動(犯罪の捜査)に対して、行政警察活動(犯罪の予防・鎮圧等)に関しては検察官の権限は無く、当然に指揮の問題も発生しない。
検察審査会
検察審査会とは、
選挙権を有する国民の中から無作為に選ばれた11人の検察審査員が、検察官の公訴を提起しない処分の当否の審査に関する事項、及び検察事務の改善に関する建議又は勧告に関する事項を扱う機関である。前者の不起訴処分に対する審査の議決は、
司法制度改革により、今後、法的拘束力を持たせることとなっている。
検察官適格審査会
検察官適格審査会とは検察官の職務に対する適格性を審査する機関であり、
国会議員6人(
衆議院議員4人、
参議院議員2人)、
最高裁判所判事1人、
日本弁護士連合会会長、
日本学士院会員1人、学識経験者2人の計11名で構成される。全ての検察官を3年ごとに定時審査する他、法務大臣の請求により、または職権で各検察官を随時審査する。
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