振幅変調(しんぷくへんちょう) (AM; Amplitude Modulation) は、変調方式の一つで、情報を搬送波の強弱で伝達する変調方式である。
主にAMラジオ放送や、航空無線などに使用される。また、電信は振幅変調の代表的例であった。
振幅変調の概念
振幅変調の概念を以下の図で示す。
Amplitude_modulation.png
- なお、変調波に比べ、搬送波(carrier wave、キャリア)の周波数が高いため搬送波の波形は一部拡大して示した。変調波の振幅の正の最大値において振幅変調波の振幅が最大に、負の最大値において振幅が最小になる。詳細は理論の項を参照。ここで変調波は信号波(送信しょうとしている原信号(音声や音楽等))と読み替えて理解してもよい。
振幅変調の種類
両側波帯(DSB; Double Sideband)
両側波帯で同じ情報を伝送するもの。AMと言った場合には、通常は搬送波の信号レベルをそのままで伝送するものを指す。一般のAMラジオモノラル放送がこの方式である。
これとは別に抑圧搬送波の両側波帯も存在し、SSBの受信機で受信可能で、送信機がSSBよりも簡単なことからSSBの代用として用いられることもあるが、法規上は両側波帯については全搬送波・抑圧搬送波を区別しない。FMステレオ放送の副信号がこの形式である。
単側波帯(SSB; Single Sideband)
情報を片側の側波帯のみで伝送するもの。短波帯の業務無線や
アマチュア無線などで利用される。
- 全搬送波 :搬送波の信号レベルをそのままで伝送するもの。一般のAM受信機で受信できる(H3E)。
- 低減搬送波 :搬送波の信号レベルをある程度まで落として伝送するもの。あまり利用されない(R3E)。
- 抑圧搬送波 :搬送波を全く伝送しないもの。一般にSSBというと、この抑圧搬送波を指す。受信には専用の受信機が必要であるが、搬送波を全く伝送しないため、両側波帯・単側波帯全搬送波よりも小さい送信電力で同じ伝送特性が得られる(J3E)。
搬送波よりも上の周波数の側波帯を使うものをUSB(Upper Sideband)、下を使うものをLSB(Lower Sideband)という。業務無線では基本的にUSBを使用することになっている。アマチュア無線では、7MHz帯以下ではLSB、10MHz帯以上ではUSBを使う慣習になっている。
SSBはエネルギー効率がよく、同じ距離までの通信であれば少ない電力の送信機で、またフェージングの影響を受けにくく、同時に占有周波数帯域が狭くて済む。なお、側波帯だけに着目すれば、AM放送もSSBも同じものであるため、隣接大出力局の混信をかわすために、SSB受信機で混信が無い方の側波帯だけを取り出し、AM放送を聴くことも可能である(上部または下部側波帯と搬送波さえあれば内容が分かる。同期検波も参照)。アマチュア無線家やBCLが偶然気付くことも多く、AM放送の受信テクニックとして使われている。
一方、SSBの音声通信は一般に音質が悪く、また、良好な了解度を得るためには受信周波数を数10Hzの単位で調整しなければならない。音質が悪いと言われるのは次の理由によるもので、SSBそのものが音質が悪いというのは誤解である。
- 占有周波数帯域が狭いという利点を生かすため、伝送帯域を狭く設定している。
- 数MHzの中間周波数において、数100Hz離れた側波帯の片側だけを消去するような特性が非常にシビアなフィルタ回路が要求されるため、振幅や位相などについて良好な特性を持つフィルタ回路を作ることが困難である。
- 抑圧搬送波には搬送波の情報が含まれていないので、送信信号と等しいスペクトルを持つ受信信号を得ることは困難である。最終的には、原音と同じ音質になるよう、人間の勘で周波数を合わせることになる。
- SSBは、FMのようにチャネルで区切って隣接チャネルとの間に十分なガードバンドを設けて使うということをしないため、隣接した周波数で行われる通信が雑音となって可聴周波数に落ち込んできて、耳障りとなる。
独立側波帯(ISB; Independent Sideband)
包絡線の形状を正方向、負方向で異なるものにすることで、同時に2種類の情報を送信することを可能にしたものである。それぞれの側波帯を左右の音声信号としたものがカーン方式AM
ステレオである。
両立性直交振幅変調(モトローラ方式AMステレオ C-QUAM; Compatible Quadratture Amplitude Modulation)
和信号により搬送波を平衡変調した信号と、差信号に25Hzのパイロット信号を加えた信号で直交する搬送波を平衡変調した信号とを合成し、振幅制限したものを搬送波として、和信号で振幅変調するもの。日本のAMステレオ方式として用いられている。
その他のAMステレオ方式
- ハリス方式(VCPM)
- マグナボックス方式(AM-PM)
- ベラー方式(AM-FM)
残留側波帯(VSB; Vestigial Sideband)
直流成分まで送信できるように情報のない側波帯の一部まで送信する方式。
テレビ画像信号のアナログ伝送に用いられる。
AMラジオ放送
AMラジオ放送においては、送信する音声の波形を
包絡線に持つような、一定周期(
中波帯の
放送なら500~1600KHz程度)の
電波を送信する。受信機では送信された電波を
共振回路によって取り出し(選局し)、包絡線検波等のAM
復調を行って音声波形を再現する。
電信
無線電信の多くは単に搬送波のオン、オフを断続して送信するため、搬送波の振幅を変化させるという意味で振幅変調に分類することがある(
振幅偏移変調)。側波帯は使用しない。
受信機では送信された電波を
共振回路によって取り出し(選局し)、
うなりの周波数が人の耳に敏感な700~800Hz程度になるような局部発振周波(
BFO:Beat Frequency Oscillator)を作り、混合させて
復調を行って信号波形(700~800Hz程度の正弦波)を再現する。
データ通信においては周波数変調による電信も用いられている(周波数偏移変調)。
理論
Vc =Vcm sin 2π fc t
Vs =Vsm cos 2π fs t
- Vc :搬送波 Vcm :搬送波最大値 fc :搬送波周波数
- Vs :信号波 Vsm :信号波最大値 fs :信号波周波数
とするとき、振幅変調波は以下のように表される。
vam = ( Vs + Vcm ) sin 2π fc t
- =( Vsm cos 2π fs t + Vcm ) sin 2π fc t
- = Vcm sin 2π fc t + ( Vsm /2) sin 2π ( fc - fs ) t + ( Vsm /2) sin 2π ( fc + fs ) t
- vam :振幅変調波 ( fc - fs ) :下側波帯(LSB) ( fc + fs ) :上側波帯(USB)
m = Vsm / Vcm
- m :変調度
変調度の値が大きいほど信号波の振幅が大きくなり効率の良い通信となる。ただし100%を超える状態を過変調といい、復調信号の波形が歪み、占有帯域幅が増加して他の通信に妨害を与えるので、放送では変調度の最大値が厳しく規定されている。
占有帯域幅は、次の式で表される。
両側波帯(DSB)
BW = ( fc + fs ) + ( fc - fs ) =2 fs
- BW :占有帯域幅
単側波帯(SSB)
BW = fs
関連項目
無線 | 通信工学
Amplitudenmodulation | Amplitude modulation | Amplitud Modulada | AM | Modulation d'amplitude | איפנון משרעת | AM | 진폭 변조 | Amplitudemodulatie | Amplitudemodulasjon | Modulacja amplitudy | Modulação em Amplitude | 振幅調變