後発医薬品(こうはついやくひん)とは、製造方法などに関する特許権の期限が切れた医薬品について、特許権者でない医薬品製造企業がその特許内容を利用して製造した、同種の有効成分を含んだ医薬品を指す。ジェネリック医薬品、後発品、ジェネリック、ゾロ薬、ゾロ等と呼ばれることもある。後発医薬品に対し、特許取得して先行販売されていた医薬品を先発品、先行品等と呼ぶ。
概要
後発医薬品とは、先発医薬品と同一の成分を含む医薬品であり、先発医薬品と治療学的に同等である医薬品のことである。この治療学的に同等であることを保証するために、後発医薬品企業は生物学的同等性を保証する必要がある。この生物学的同等性を保証するのに、一般的に バイオアベイラビリティが同等であることを保証する試験を行う。これを生物学的同等性試験と呼び、健康成人男子に先発医薬品と後発医薬品を投与して、血中の薬物動態を指標として同等であることを示す試験を行う。ただし、製剤によっては、この生物学的同等性試験を行う必要がない場合もあったり、血中の薬物動態以外の指標を用いる場合もある。
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一般的に誤解されやすいが、後発医薬品は先発医薬品を全く同じようにコピーした製剤とは限らない。製造する場所や設備も当然異なる上に、中には製剤に含まれる添加剤などが特許の存在で使用できない場合もあり、その場合は代替の添加剤を使用して、生物学的に同等になるように製剤設計を行う。また、先発医薬品の欠点(例として、直径が大きな錠剤だと飲みにくい)までコピーする必要はなく、先発医薬品よりも改良した製剤が開発される場合もある。
多くの場合、医薬品の開発には巨額の費用と膨大な時間を必要とするため、開発企業(先発企業)は新薬の構造やその製造方法、構造などについて特許を取得して知的財産権を守り、自社が新規に開発した医薬品を独占する。しかし、特許期間が切れると他の企業(後発企業)も特許使用料を支払うことなく先発医薬品と同一の成分を有する医薬品の製造販売ができるようになる。先発医薬品の発売後、数年経ていることから副作用や有効性などについて十分な情報が蓄積されていることから、後発医薬品の製造、発売の承認に必要な試験の種類が少なく、開発期間が3~5年程度で済むことから、価格を安く設定できる。一方、先発企業は同一薬効成分に新たな効能・適用・結晶型などを発見することで特許を追加取得して特許期間を延長したり、製剤・剤型を見直して効能以外の付加価値をつけるなどして、後発医薬品の発売に対抗する。
医薬品が実際に使われ始めてから特許が切れる、または医薬品の再審査期間の終了まで何年もの期間があるので、その医薬品自体の有効性や安全性などの治験結果については十分に知見が集まっている。そのため、後発医薬品は先発医薬品と同様に安全であり、かつ収益が見込める一般症状を対象としたものが多い。
呼称
後発メーカーの医薬品は、欧米では商品名でなく有効成分名を指す
一般名(generic name)で処方されることが多いことから、
一般名(ジェネリック)医薬品と呼ぶ。従来の後発医薬品と言う名称には後ろ向きなイメージが定着していたため製薬企業が改善を試み、現在「ジェネリック医薬品」と呼ぶことが多くなった。
利点
- 特許保護期間終了後に臨床試験等の開発費用が少なくて済むことから、知的財産を有効活用できる。
- 先発医薬品と同じ成分、含量が同じであり、先発医薬品と同等の効能を有していることから、同様に処方することができる。
- 新薬に比べて価格が3~8割安い。これは患者、医療保険者の双方にとって有益である。
- 先発企業の医薬品は、市場に出たあとも市販後調査が義務づけられているので、有効性や安全性などについての情報が蓄積されていることから、安心して服用できる。
- 後発医薬品でパッケージや、製剤の改良、規格変更等の工夫をしている製剤もあり、先発品より好評のものもある。
問題点
- 後発医薬品の企業の医薬情報担当者 (MR)の数が少なく、医師や薬剤師の教育の一部は彼らが担っていると言う事もあって歓迎されていない。また比較的市販後調査の量が少なく、成分を由来としない潜在的な問題が存在する恐れがある。
- 有効成分が先発品と同じでも、カプセルの質や錠剤化する技術の差などで、有効成分の吸収時間などが微妙に異なる場合があるといわれている。この場合、たとえば胃で溶けることによって薬効が期待されるのに、他の部位で溶けることで薬効が薄くなる場合がある。しかし実際には、後発品も厚生労働省に承認を受けた製造方法と製造施設を経て信頼テストに合格した薬品が提供されているため、薬物動態的にも同様の先発品と差がないとされる。ただしこれらの検査は、同じ製品でも工場が違えばできる製品が異ってくるように、全く同じであることを保障するわけでは無い。
- 後発企業の多くは準大手・中小企業であり、経済政策上、製品をロット単位でのみ造り切り在庫を抱えないことがある。そのため需要と供給の緩衝が少なく、急激な社会変化に生産が間に合わない可能性がある。また、医薬品以外の部位の素材を安価に済ませていることがあり、外装が脆い、チューブが壊れ易いなどの欠点を持っていることがある。
- ブランドネームが無いものが多く、患者の不安を呼ぶことがある。
- 医師・歯科医師は、先発企業の薬を処方することが多く、後発医薬品はあまり普及していない。また、多くの病院や薬局が後発医薬品を十分に揃えていないので、処方されても直ちに患者に出せない場合がある。医薬情報担当者 (MR) などの営業活動は企業規模に大きく支配されており、すでに医師と製薬企業の繋がりは固定化されているのが現状である。薬は医師が選ぶのであり、患者が薬を選ぶことが難しい今日、政府による推奨が始まるまでは、後発である中小企業後発医薬品を用いてシェアを挽回することはほぼ不可能であった。
- 日本での医師の処方は、医薬品の商品名で記載することが多く、薬局の独自の判断でこの指示を変更することができない。このため後発医薬品の在庫があって使うことが推奨されていても、医師が先発品の使用を指定した場合では後発品の選択肢は無くなる。実際に医師と製薬企業の繋がりが強い場合、患者が後発医薬品の使用を希望しても変更されないことが多い。
- 2006年4月より処方箋の様式が変更となり、医師が処方箋中の「後発品への変更可」欄に署名(または記名押印)すれば後発医薬品に変更して調剤することも可能となった。が、制度は見切り発車したと言える部分もある。発表後、苦情が寄せられた厚生労働省から各製薬企業に改善要求が発せられた。
- 「後発品への変更可」処方箋中に後発医薬品が銘柄で記載されている場合、患者への十分な説明と同意がある場合において、他の銘柄の後発医薬品に変更が可能である。また、箕面私立病院のように先発品同士、あるいは後発品から先発品への変更も可能とする、全面的な代替調剤も一部の地域において行われている。
- 後発医薬品指定があっても、先発医薬品と同じ剤形が用意されていないため交換できない場合がある。剤形の変更については従来どおり医師への照会が必要となる。
- 後発医薬品推奨のための政策として、製造コストの割りに薬価が高く設定してあり、製造製薬企業に余剰の恩恵をもたらしている。すでに医者と製薬企業とで固定された繋がりがあるとき、その会社の後発医薬品を波及的に使ってもらうことで利益を拡大できるため、すでに医者との繋がりを確保している会社はシェアを確保しやすく、後発品製造会社がシェアを挽回できない原因ともなっている。
- 薬価は国定であり、薬価が先発医薬品と比べ低い設定である後発医薬品は、薬局や薬卸商の収益減をもたらしている。これは経営努力による増収が見込みにくい医療機関泣かせとなっている。
- 薬の選択が自由に患者に任せられるようになると、薬局は多いとは言えない代替手数料だけで多くの在庫を抱えることになる。使用頻度の低い開封済みの製品が使用期限を迎える等、薬局の経営が難しくなる原因の一つとなる。
- 「後発医薬品への変更可」処方箋は同「不可」処方箋よりも診療報酬が2点(20円)高く設定されている。また、薬局で後発医薬品への変更が行われた場合、初回または新たな後発品へ変更した場合に、後発医薬品情報提供料10点(100円)を支払うことになる。そのため、医薬品の種類・投与日数によっては先発医薬品を使った方が一部負担金が安く済むケースがあり、一概に後発医薬品へ変更は安くなるわけではないと言える。
- 今日の医薬品の安全性確認試験は各製薬企業が行い、その結果を認可申請時に提出する形となっており、真の信頼性は製薬企業任せとなっている。
関連項目
外部リンク
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