学術雑誌(がくじゅつざっし Academic journal)は、主として研究者の執筆した論文を掲載する雑誌。学術分野に応じて極めて多くのタイトルが発行されているが、読者はそれぞれの分野の専門家が中心であるため、一般書店に置かれることはあまりない。自然科学分野における学術雑誌は科学雑誌とも呼ばれる。
学術雑誌に投稿される論文は多数あるので、その全てを掲載することは物理的にも不可能であり、また個々の論文の水準も(秀逸なものからそうでないものまで)様々であるので、取捨選択が行われなければならない。そこで、編集部は、投稿された個々の論文の主題と専門領域を考慮し、関係する(多くの場合複数の)専門家に論文の評価を委ねる。評価を委ねられた専門家は、当該領域における研究の状況と水準を基準とし、投稿された論文が少なくとも専門分野において踏まえられるべき水準に達しており、なおかつ、それ以上の専門領域における研究の進展に寄与しうるだけの何らかの成果を挙げているかどうかを調べる。これらに満たない論文は掲載を拒否され、逆に満たした論文は掲載を許可される(ただし、様々の程度の書き直しを求められ、書き直しの結果によって可否を判断されることもある)。これが学術雑誌における査読の大まかな仕組みである。
この査読があることによって、学術雑誌に掲載された論文は、ただ単に公刊されただけではなく、論文の著者もまたそのメンバーの1人であるところの専門家の共同体から、研究上の価値を認められたという評価を獲得する。別の言い方をすれば、学術雑誌に自らの論文が掲載されるということは、専門分野のメンバーとしての力量を認められたことを意味する。したがって、ある研究者の研究業績において、査読のある学術雑誌に論文が掲載されたということは、非常に高い意義を持っているのである。それゆえに、学術雑誌に論文が掲載されても通常は原稿料が発生しないばかりか、ときには様々な名目で掲載料の支払いを求められることさえあるにもかかわらず、研究者はみずからの論文を学術雑誌に掲載されることを切望する。
研究者にとって、学術雑誌に掲載された論文こそが専門家として最も重要な業績であることは、文系・理系の別を問わない。しかし、文系・理系では、学術雑誌の位置付けは微妙に異なる。理系では、査読を経ていない著作・論文などは、業績として評価されないし、業績に挙げることもないが、文系では、そうしたものでも業績として認められる。
学術雑誌の権威を評価する指標としてはインパクトファクターがよく用いられる。
もっとも広い分野を扱う雑誌は総合誌と呼ばれる。自然科学における例を挙げてみると、ネイチャーやサイエンスが該当し、物理学・化学・生物学・医学・心理学・地学など、特定の分野・領域にとどまらず自然科学全般のトピックスを掲載している。
速報誌は、レターあるいはコミュニケーションと呼ばれる最新の研究結果を報告する1~4ページほどの短い論文を中心に掲載する雑誌である。掲載には「速報性」が問われる。
総説誌は、レビューと呼ばれるあるテーマについて他の研究者の結果なども含めた広い内容を解説した論文を中心に掲載する雑誌である。最先端の内容は含まれないが、その分野の情報を効率的に収集することができる。引用されることが多いため、インパクトファクターが高いものが多い。
一般誌は、狭義の学術雑誌である。あるテーマについてまとめた学術論文(速報やレビューではなく)を掲載する雑誌である。雑誌によっては速報や総説が掲載されることもある。
学術雑誌には、これら論文のほか、関連する分野の書評やニュース、製品や求人の広告、学会の告知やプログラムが掲載されていることも多い。
学会誌では大学の教授などが編集委員を務めていることが多いため、利益をあまり重視しない。そのため、デザインなどは地味なものになりがちで、電子ジャーナル化などのサービスも比較的遅いが、購読価格は低く抑えられている。
一方、商業誌は専門の編集者がおり、利益を重視した編集を行う。このため、インパクトのある論文ほど掲載されやすく、他にも読者の興味を引く様々な特集記事などが掲載される。電子化などのサービスやデータベースとの連携も重視されているが、一般に購読料は高価である。学術雑誌を多く出版している出版社としては、最大手であるエルゼビアのほか、シュプリンガーやブラックウェル、ワイリーなどがある*。
また、欧米では大学出版会による学術雑誌の発行も行われている。
学術雑誌自体の電子ジャーナル化の流れも進んでおり、購読料さえ支払えばオンラインでHTMLやPDFで論文が読める雑誌も多い。中には掲載された論文を無料で読めるようにしている雑誌も存在する。
データベースとの連携も進んでおり、検索結果から直接論文が読めるようにした雑誌もある。