変態(へんたい)
- 変態(生物学) - 動物の形が成長の段階で変化すること(本稿で後述)。
- 変態(性的な) - 変態性欲のこと。性的に一般的な嗜好でないこと。(軽い意味で使われることもある。例:猥談をして女子に「ヘンタイ!」と怒られる場合。いわゆるH)
- 変態(法律) - 手続が、原則的な形態から外れること。例として、変態設立事項、変態現物出資など。
- 変態(金属) - 金属の組織、結晶構造が変化すること。(相変態)
- 土佐闘犬の決まり手の一つ。
生物学分野でいう変態 (metamorphosis) とは、動物の正常な生育過程において、ごく短い期間に著しく形態を変えることを表す。特に、栄養の摂取に特化し、生き残りと成長に最適化された幼生と、次世代を生み出すための生殖機能を備えた成体の間で、形態が大きく変わることが多い。それに伴い、生活様式や場所が変化する場合もある。海産無脊椎動物ではよくあるが、成体が底性生活で、幼生がプランクトンの生活をするものは、全て変態を行なう。
なお、哺乳類や鳥類、爬虫類のように、基本的な体の構成は変わらず、各部分の発達によってその比が変化する程度で、連続的に形態が変化して成体になる場合には変態とは呼ばない。また、「卵から生まれる」場合には、見かけ上の形態の変化は大きいが、その個体の形は、卵の中であらかじめ形成されており、変態には当たらない。つまり、変態とは、動物が孵化して幼生の形になった後の変化のみに対して用いる言葉である。
エルンスト・ヘッケルは生物の発生は進化の経路を辿るとする反復説をとなえた。この説は、現在では多くの問題を指摘されているものの、基本的にはある程度の範囲で認められている。その意味では、動物が発生の過程で姿を変えるのは当然とも言える。その観点に立てば、変態とは、それが成長の過程に見られる現象という見方もあり得る。
つまり、変態をしない動物は、多くの変化を孵化以前に卵の中で行なったものということになる。そこで、変態をしない動物の成長のことを直接発生という場合がある。
昆虫の変態
昆虫では、卵から孵化すると、
幼虫と呼ばれる形態となる。幼虫が、生殖能力を有する成虫になる過程で変態を行う。
完全変態
幼虫が成虫になる際、いったん運動能力を著しく欠いた
蛹(さなぎ)と呼ばれる形態をとり、蛹から成虫が現れる種類が多い。
卵→(孵化)→幼虫→(蛹化)→蛹→(羽化)→成虫
と変態していくことを
完全変態という。
チョウ、
ハチ、
ハエ、
カブトムシなどが該当する。
完全変態を行う種の幼虫は、成体と全く異なった形態をとる場合が多い。いわゆるイモムシ型やジムシ型などの幼虫である。蛹の中では、幼虫の体を構成していた諸器官は一旦分解され、成虫の体を形作る部位「成虫原基」を中心に新しく形態形成が行われる。
完全変態:アゲハの場合
画像:Ageha_yochu01.jpg|幼虫
画像:Ageha_yochu02.jpg|幼虫
画像:Ageha_sanagi.jpg|蛹
画像:Cho_ageha 02.jpg|羽化した成虫
不完全変態
一方、蛹を経ず、
幼虫が直接成虫に変態することを
不完全変態という。
セミ、
トンボ、
バッタ、
ゴキブリなどが代表的な例となる。
不完全変態をする種では、幼虫と成虫の形態が良く似ており、幼虫時代に数回の脱皮を繰り返して成虫に変態することが多い。バッタ、ゴキブリでは、幼虫と成虫の外見上の違いは、体の大きさ以外では、翅(羽)が生えているかどうか程度である。中には、トンボのように形態変化が比較的大きなグループもある。トンボの幼虫「ヤゴ」は、水中でエラ呼吸をし、発達した伸縮自在の大顎で捕食生活をするが、成虫は特徴的な腹部を持ち、大型の複眼を有する。
不完全変態:セミの場合(蛹にならない)
画像:Graptopsaltria nigrofuscata larva1.jpg|羽化前(土から出る幼虫)
画像:Graptopsaltria nigrofuscata larva2.jpg|羽化前(木を登る幼虫)
画像:Graptopsaltria nigrofuscata emergence.jpg|羽化直後(成虫)
昆虫以外の節足動物の変態
多くの
節足動物では、成長の過程で体節や付属肢が増加する。
- 多足類では体節と付属肢が増加する以外に大きな変化はない。
- クモ綱ではダニ類が3対から4対へと付属肢を増加させるが、大部分のものは変態しない。
- 甲殻類では、分類群によって様々であるが、基本的にははじめにノープリウス幼生を生じる。この幼生は2対の触角と大顎のみを持つ。成長によって次第に体節と付属肢を増やし、それにつれて体型も変化する。分類群、成長段階によって様々に名を付けられている。ナウプリウス幼生をとばして、より発達した段階で孵化するものもある。孵化時にすでに成体と同じ姿となる、直接発生を行うものもある。特に、ザリガニやサワガニ、ワラジムシなど、淡水や陸生のものに直接発生を行うものが多い。
棘皮動物の変態
棘皮動物は、5放射相称の体制を持つが、ふ化後しばらく間の幼生は左右相称の体制である。
ウニの場合、プルテウス幼生と言われる3角錐の先端を切って、角から突起を出したような姿であり、その後、一時的に海底の固い基盤状に定着し、反対側の端にウニの体が新たに作られるような変態をする。これは、棘皮動物の祖先が左右対称動物であり、
固着性になったことで5放射相称の体を獲得した進化の過程があったことを表すものと考えられる。
尾索動物の変態
尾索動物のうち、
ホヤ類とタリア類は、幼生はオタマジャクシのような外観を持ち遊泳能力を有するが、成体になると変態し海底の岩などに固着する。幼生は
脊索を持つが、固着生活に入ると消滅する。
魚類の変態
硬骨魚類にも幼生時に親とずいぶん異なった姿のものがある。
ウナギの幼生は深海で孵化して浅海に出てくるときには平らで柳の葉のような姿であり、これを
レプトケファルス幼生という。その後、成体と同じ円筒形の体に変態するが、その際、大きさがずいぶんと小さくなる。
マンボウの幼生は、全身に針があり金平糖やハリセンボンを彷彿とさせる姿をしているが、成長と共に針が失われ、ゆったりと泳ぐ成体に形を変える。
劇的な変化とは言い難いが、ヒラメやカレイの場合、発生時には通常の魚類と同じような形だが、徐々に眼が体の側面に移動し、最終的には眼を上にした平たい形になる。
両生類の変態
両生類では、幼生はいわゆるオタマジャクシ型をしている。
えら呼吸をし、水中生活を行うが、成体は
肺呼吸をし、手足が生え、陸上移動が可能な形態となる。これが両生類の変態である。
カエルなどの無尾類では、これに加えて、変態の過程で尾が消失する。サンショウウオの中には、外鰓を残したまま成熟する(ネオテニー)アホロートルなどの種が存在する。
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