国際私法(こくさいしほう、独:internationales Privatrecht, IPR、仏:droit international privé、英:private international law)とは、渉外的私法関係に適用すべき私法(準拠法)を指定する法規範をいう。法の抵触を解決する法であるため、抵触法 (Kollisionsrecht) ともいう。英米法では、後述の準国際私法をも含む概念として把握されることもあり、法の抵触 (conflict of laws) と呼ばれることもある。
なお、「国際私法」という名称は、国際法の一種というイメージがつきまとうこと、「抵触法」という名称は、(法律の効力が及ぶ範囲を問題とするのではなく、)問題となる私法的法律関係の本拠を探求するのが国際私法(抵触法)の役割とするのが現在の支配的な見解であることから、いずれの名称に対しても妥当性を欠くとの批判がされており、これらの名称に代わる用語も提唱されている。もっとも、名称の問題は単なる取決めとも言え、これらに代わりうるような有力な名称が提唱されているとは言い難い。
なお、間接規範という意味では、後述する人際法や、一つの国内で法律が改正されたときに新法と旧法のいずれを適用すべきかを決定する時際法なども間接規範性を有する。しかし、これらは一つの国内の実質法秩序内の問題であるとされ、国際私法とは異なり上位法たる性質を有しないと解するのが一般である。
日本においては、法例(明治31年法律第10号)という名称の法律中の3条以下が主たる法源である。その他、条約を国内法化したものとして、遺言の方式の準拠法に関する法律(昭和39年法律第100号)と扶養義務の準拠法に関する法律(昭和61年法律第84号)がある。また、手形法(昭和7年法律第20号)などにも国際私法に関する規定が含まれている。
本件においては、「離婚に伴う子の親権者の指定」という法律関係が、法例16条にいう「離婚」の効力の問題と性質決定されるのか、法例21条にいう「親子間ノ法律関係」と性質決定されるのかが、問題となる。ここでは、通説に従い「親子間ノ法律関係」と性質決定する。
本件においては、妻Bの国籍と子の国籍が同一(乙国籍)であるため、法例21条にいう「本国法ガ・・・母ノ本国法・・・ト同一ナル場合」に該当し、子の国籍が連結点となる。
ところが、乙国の国際私法によれば反致が成立する場合(ただし、本件の場合は、法例32条但書の規定により反致の問題は生じない)には、乙国の実質法の内容を問題とするまでもなく乙国法を準拠法とすることはできない。
また、乙国が地域により法を異にしている場合には、乙国のどこの地域の法を準拠法とすべきかが問題となり、この場合には、連結点の確定の他に準拠法の特定という作業が必要となる。本件において、乙国が地域により法を異にしている場合は、法例28条3項にいう「当事者ガ地方ニ依リ法律ヲ異ニスル国ノ国籍ヲ有スルトキ」に該当するものとして、「其国ノ規則ニ従ヒ指定セラルル法律若シ其規則ナキトキハ当事者ニ最モ密接ナル関係アル地方ノ法律」を本国法とすることにより、準拠法が特定される。
本件でいうと、連結点とされた子の国籍である乙国法では離婚制度を認めていない場合が考えられる。このような場合、離婚に伴う親権者の指定という法律問題も存在しないはずである。つまり、一種の法の欠缺の問題となり、どのような法を適用すべきかが問題となる。
また、離婚の際の親権者につき自動的に父(又は母)と指定する法制度を採用している国がある。仮に乙国が、自動的に父を親権者に指定する法制度を採用している場合、父親Aが親権者としての適性に欠けると評価される場合であっても、母親Bを親権者と指定することができない。このような場合には、乙国法の適用が法例33条にいう「公ノ秩序又ハ善良ノ風俗ニ反スルトキ」に該当し、乙国法を適用しないとして解決すべきかが問題となる。
以上のようなプロセスを経て、適用すべき準拠法を決定し適用することになる。
今日では一つの国家内には全国的に一つの私法が施行されているのが一般的であるが、地域により異なった法が施行されている場合もないわけではない。例えば、アメリカ合衆国においては、それぞれの州が立法権を有しているため州により法律が異なるし、イギリスでも、イングランド、スコットランド、北アイルランドなどで法の内容が異なる。そのため、準国際私法という概念が必要になる。
一応、国際私法と区別される概念であるが、問題となる法律関係の解決方法は国際私法と類似の原則が妥当する。そのため、国際私法と準国際私法を区別しないこともある(アメリカ合衆国など)し、区別するとしても国際私法に関する規定を準国際私法に準用することが多い。したがって、実質法には分類されない。
日本国との平和条約発効前の日本においても、台湾や朝鮮半島が日本の領土とされた際に、内地・朝鮮・台湾などについて異なる法令が施行される事態が生じたため、共通法(大正7年法律第39号)が制定され、その2条2項において法例の規定を準用すること等により、異法地域間の法の抵触の解決を図ったことがある。
なお、国際私法は、歴史的に見るとヨーロッパにおいて主権国家内部で地域によって異なる法体系を有している地域相互間の問題と解決するための法規範として発生したが、その後主権国家内部で私法が統一されたため、国家間の私法問題を解決するための法規範として位置づけられるようになったという経緯がある。
国際私法は、地域により異なった内容の法律が施行されていることを前提としており、人際法は、人により異なった内容の法律が適用されることを前提としているため、両者は類似しているとも言える。しかし、国際私法は前述のように上位法としての性質を有するのに対し、人際法は一つの法域内の問題であり実質法の一部であるとされており、両者の性質は全く異なると解するのが一般的である。
これらの問題は、法律の適用関係を問題とするわけではないので、狭義の国際私法には含まれないが、私法的法律関係の実効性を確保するための法規範であるため、関連する問題として扱われ、広義の国際私法に含まれるとする考え方もある。
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