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取締役会とりしまりやくかい)は商法及び会社法において規定された、株式会社に常設される業務意思決定機関である。また、取締役らによって行われる会議それ自体をいう場合もある。しばしば役会(やくかい)と略される。以下では日本の制度を中心に、取締役会と併せてその構成員たる取締役について記述する。

取締役


取締役会は取締役をその構成員として組織される。そこでまずは取締役の選任や解任、職責などについて記述した上で取締役会について説明する。

選任、員数、任期、および解任

選任、員数
取締役は株主総会で選任される(旧商法254条1項,会社法329条1項)。選任にあたっては定足数として株主の議決権の過半数にあたる株主の出席が必要であり、その出席した株主の議決権の過半数で決せられる(旧商法256条ノ2,会社法341条)。
取締役の員数は、1人以上でなければならない(会社法326条1項)。なお旧商法では3人以上となっていた。
任期
任期は委員会設置会社を除くと原則は2年で、定款によって任期を短縮することは可能である(旧商法255,256条,会社法332条)、通常は2年ごとに株主総会で承認を得て再任される。
解任
解任については会社法で要件が緩和され、選任とまたったく同じようにな定足数の過半数・出席議決権の過半数という要件となった(会社341条)。ただし定款によりこれを上回るように定めることも可能であり、そのように定めている会社も既に出現している。旧商法では、解任については、株主総会における特別決議(商法343条。議決権の三分の二以上の賛成) が必要であった。解任することはいつでも可能であるが、解任のための正当な理由がない場合には、その者は会社に対し損害賠償を請求しうる(会社法339条1項)。また、取締役と会社の関係は委任契約であり(旧商法254条3項,会社法330条)、取締役は原則としていつでも辞任することができる(民法651条)。

肩書

通常、取締役には会長社長専務常務といった肩書が付与されている。しかしこれらは商法や会社法において規定されたものではなく、各会社が独自に付与したものである。このように何らかの役職名が付与された取締役のことを役付取締役(やくつきとりしまりやく)ということがある。これらの役職とそれが表す力関係が取締役会に持ち込まれることで、本来上下関係はなく相互にその業務を監視し合う立場にあるはずの取締役たちの間に序列が生じ、特に業務の監査において支障が出ることがたびたびある。

職務と責任、報酬

昭和25年(1950年)改正前の取締役は、取締役それ自体が会社の機関であって会社の職務執行権限を有していた。しかし昭和25年改正以降の商法では取締役会が会社の機関となり、取締役は単独で職務執行権限を持たず、取締役会の一員に過ぎなくなった。同じ改正において取締役になる資格をその会社の株主に限定する資格株制度は禁止された(商法254条2項)。これは取締役が単なる株主の利益代表ではなく、社会的責任を帯びた存在であることを示している。しかし株主が取締役になることは差し支えなく、実際にも中小企業においては取締役のほとんどが株主である。取締役は取締役会の一員として業務意思決定を行うほか、割り当てられた業務の執行を行う。特に業務執行権を与えられた取締役を業務執行取締役といい、代表権を与えられた取締役を代表取締役という。これらは法定されたもので、後者については設置が義務づけられているが、業務担当取締役執行役員といった制度を会社で独自に取り入れて権限を付与するという場合もある。

取締役と会社との関係は委任であり、取締役は会社に対して善管注意義務(商法254条3項により民法644条が準用されることによる)及び忠実義務を負う(商法254条ノ3)。善管注意義務の内容は会社の規模や業界によって異なる。
忠実義務の具体化として競業避止義務(商法264条) 利益相反取引の制限(商法265条)が規定されている。
蛸配当(配当可能利益がないにも関わらず株主に利益配当をすること)や他の取締役に対する金銭の貸付、利益相反取引、および法令または定款に違反する行為によって会社に損害を生じさせた場合には会社に対して賠償する責任が生じる(商法266条)。
第三者に対する責任(商法266条の3)

会社の業務を執行する際に故意または重大なる過失(重過失)によって第三者に損害を与えた場合にもそれを賠償する責任が生じる
取締役には他の取締役に対する監督責任が課せられている。

取締役の報酬は、定款または株主総会の決議によってその額や算定方法が決定される(商法269条)。本来、報酬の決定は業務執行に属する性質の行為であるから取締役会にその権限があってもよい。しかし自分の報酬を自分で決定させると過大な報酬を受け取る危険があるため、このようにしたのだとされる(「お手盛りの防止」といわれる)。数人の取締役がいる場合、個別の報酬額は開示せず報酬の総額が開示されればよいとされている(判例)。しかし取締役の個人的な心情よりも会社経営の透明化(ディスクロージャー)を推進するために個別の金額を開示すべきとの異論もある。

取締役会


日本の取締役会は昭和25年の商法改正によって授権資本制度とともにアメリカの会社におけるBoard of Directors制度を導入したものである。取締役会は3名以上の取締役によって構成され、通常そこでの決議は全会一致によってなされる(法律上は過半数で足りる)。また、事実上会社経営の最高責任者となっている者(社長など)が取締役会の会長となることが多い。昭和25年改正前は取締役自体が会社の必要的機関とされていたが、改正後は取締役会が機関とされてる。なお、委員会等設置会社における取締役会と取締役は職務内容や責任、任期等が異なるため、以下は通常の株式会社における取締役会を念頭に記述する。

職務

取締役会の職務は会社経営における業務意思決定および取締役(代表取締役を含む)の業務監査である(商法260条1項)。 具体的に法定されているのは以下であるが、それ以外でも重要な業務執行については取締役会が決するとされている(商法260条2項)。
  • 重要なる財産の処分及び譲受(商法260条2項1号)
  • 多額の借財(商法260条2項2号)
  • 支配人その他の重要なる使用人の選任及び解任(商法260条2項3号)
  • 支店その他の重要なる組織の設置、変更及び廃止(商法260条2項4号)
  • 閉鎖会社における株式譲渡の承認及び先買権者の指定(商法204条1項但書、204条ノ2以下)
  • 株主総会の招集(商法231条)
  • 株式分割(商法218条)
  • 自己株式の処分と買受、消却(商法211条、211条ノ3、212条、)
  • 取締役会を招集する取締役の決定(商法259条1項但書)
  • 転換予約券付株式を転換する条件等、転換の効力発生時期、および強制転換条項付株式の転換の決定(商法222条ノ2、222条ノ6、222条ノ9)
  • 所在不明株主の株式の競売もしくは売却または買受(商法224条ノ2第1項、224条ノ5第1項、第2項)
  • 株主総会での書面または電磁的方法による議決権行使の可否の決定(商法239条ノ2第1項、239条ノ3第1項)
  • 業務執行取締役の選任(商法260条3項)
  • 代表取締役の選任及び共同代表の定め(商法261条1項)
  • 取締役による競業取引および利益相反取引の承認ならびに介入権の行使(商法264条、265条)
  • 職務懈怠により取締役が支払うべき賠償金額の減額(商法266条12項)
  • 新株発行とその内容の決定(商法280条ノ2)
  • 新株予約権の発行とその内容の決定(商法280条ノ20)
  • 新株予約権の譲渡を制限する場合、その承認(商法280条ノ33第1項)
  • 新株予約権の消却(商法280条ノ36第1項)
  • 計算書類の承認および公開(商法281条1項、283条5項。大会社の場合、商特法16条3項)
  • 準備金の資本組入れ(商法293条ノ3)
  • 中間配当の決定(商法293条ノ5)
  • 社債発行の決定(商法296条)
  • 新株予約権付社債の内容の決定(商法341条ノ3)
  • 小会社の訴訟における代表者及び清算人の選任(商特法24条)
  • 大会社における重要財産委員会の設置と権限の設定(商特法1条ノ3)
  • 大会社における連結計算書類の承認(商特法19条ノ2第2項)
これらのうち、株式の譲渡制限を行っている会社(閉鎖会社)における株式譲渡の承認以外は株主総会にその権限を委譲することができると解されている。なお、小会社、大会社の定義については株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律(商法特例法)を参照。

形骸化の問題

取締役会は小規模会社と大規模会社において形骸化が激しいといわれる。小規模会社においては代表取締役(社長)が経営を独占し、他の取締役は家族親戚等から名目的に選ばれたのみで監督責任などは全く機能しない。しかも、そういった小規模な会社が日本の株式会社のほとんどを占めていることが問題となっている。

一方、大規模な会社においても異なった意味で取締役会の形骸化が生じている。こちらでは取締役会が大きくなりすぎ、機動的な意思決定ができないといわれる。このため大企業では経営の機動性を高めるために、業務執行取締役や執行役員を決めて業務執行を任せたり、常務会または経営戦略会議といった会議体を設けて少数の業務に精通した取締役によって日常業務を処理し、重大案件については取締役会全体で承認を受けるといった形を採ることがある。これらの制度は法的な裏付けがないためにその権限が曖昧になることも多く、そのため法は業務執行取締役(商法260条3項2号)や重要財産委員会(商法特例法)という制度を設けた。また、終身雇用制度と従業員兼任取締役という日本独特の制度を背景に、取締役の職務を監督するという取締役会の機能がしばしば麻痺していると指摘される。具体的には、仲間意識が強いために「なあなあ」でことが済まされることなどが挙げられる。このため、社外取締役を参加させるといったことも行われる。

平成17年会社法の取締役、取締役会


  • 取締役
各自代表主義が復活し、原則としてそれぞれに業務執行権がある(会社法第348条、第349条)。代表取締役を選出することもできる(会社法第349条1項但書、3項)。取締役会設置会社での業務執行者については、会社法第363条1項に規定がある。なお、委員会設置会社においては、取締役は業務執行権をもたない。
  • 取締役会
平成17年に成立した会社法においては、取締役会は任意設置機関となった(会社法第326条2項、設置義務があるケースにつき、会社法第327条1項)。取締役会が設置されている会社のことを取締役会設置会社という(会社法第2条7号)。具体的な権限や招集手続、決議要件などは会社法第362条~第373条を参照。なお、委員会設置会社の取締役会については、会社法第415条~417条。
  • 特別取締役(会社法第373条)

アメリカの取締役会


アメリカの株式会社はdirector(取締役)によって組織されるBoard of Directors(取締役会)が経営する。しかし、日常業務はOfficer(執行役員)が取り仕切る。Officerはその与えられた役割に応じてChief Executive Officer(最高経営責任者 C.E.O.)やChief Financial Officer(CFO、最高財務責任者)、Chief Operating Officer(COO、最高執行責任者)、Chief Information Officer(CIO、最高情報責任者)、Vice-President(執行副社長)などの肩書が与えられる。CEOがPresident(取締役社長)を兼ねる場合が多いが、CEOが取締役をかねず、また、別途 取締役会議長Chairman of Board of Directorsを置くなどの場合も多い。一般に、CxO(最高**責任者)職が置かれている場合はPresident職はない。

会社経営全体を指揮する。また、経営適正化のためにOutside Director(社外取締役)がおかれることもある。以上がアメリカにおける株式会社の最大公約数的な組織であるが、設置が必要とされる機関や組織構造は州法または証券取引所規則等によって規定されるため、一様ではない。なお、取締役が集まる会議そのもののことはDirectors Meetingといい、そこでの議事進行役をChairman of the Boardという。

ドイツの取締役会


ドイツの株式会社におけるVorstandは、日本語では取締役と訳されるものの、日本のそれとはかなり異なった存在である。彼らは労使双方の代表者からなるAufsichtsrat(監査役会、と訳されるがやはり日本の監査役とは全く異なる)によって任免される。彼らの業務は経営の基本方針を決定することであり、監査役との兼任は認められない。この制度は普通ドイツ商法典(1861年制定)によって導入され、1870年に株式会社の必要的機関構成とされた。しかしドイツでは、上記のような経営適性化のための組織構造を強要される株式会社形態を敬遠して、Gesellschaft mit beschtänkter Haftung(略称はGmbHで、日本の有限会社にあたる)が多く用いられる。

企業 | 商法 | 組織 (団体)

Vorstand | Board_of_directors | conseil d'administration | Raad_van_Bestuur | Styrelse

 

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