| 卵菌 | ||||||
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卵菌(らんきん)は、原生生物界の不等毛植物門卵菌綱、あるいは原生生物界から分置されるクロミスタ界の卵菌門に分類される生物。同じクロミスタ界に分類されるサカゲツボカビ類とともに菌類様の外見を持つものが多い。
ミズカビ類の遊走子嚢形成に際して基質から水中に立ち上がる菌糸は基部の直径がしばしば100μm以上と非常に太く、肉眼でその本数が数えられるほどで、長さも1cm程度には軽く達する。菌糸先端が区切られて遊走子嚢となり、先端に開いた穴から遊走子が泳ぎだす。遊走子嚢内の遊走子の輪郭がはっきりしてから泳ぎ出すのに数十分程度なので、顕微鏡下で泳ぎ出すのを観察するのは簡単である。
ツユカビ類以外にも陸上植物に寄生する卵菌が知られており、ミズカビ科でもAphanomycesには水生種だけではなく陸上植物寄生種が記録されている。フハイカビ科にも水生種に加えて陸上植物寄生種が数多く知られ、19世紀にジャガイモに壊滅的な被害を与えてアイルランドに大飢饉(ジャガイモ飢饉)をもたらした疫病の病原体も卵菌のフハイカビ科に属するエキビョウキン (Phytophthora) である。フハイカビ科では他にフハイカビ(Pythium)とSclerophthoraに陸上植物に寄生する種がある。
栄養体は隔壁のない単核あるいは多核体の葉状体で、多くの場合菌類の菌糸体によく似た形態に収斂進化を起こしている。特に隔壁を欠いている点は菌類の中でもツボカビ類や接合菌と類似している。他の卵菌に寄生するフクロカビモドキなどの葉状体は単純な袋状で菌糸状の形はとらない。葉状体は動植物遺体上で有機物を分解したり、他の生物に寄生して生活する。細胞壁の主成分はセルロースで、菌類(キチン)と異なる。
遊走細胞は同じクロミスタ界の褐藻などと同様で、マスチゴネマを持つ羽型鞭毛と鞭型鞭毛をセットで持つ。葉状体は複相(2n)で、無性生殖に際しては菌糸様の葉状体の先端に胞子嚢を形成し、この内部の原形質が分割されて多数の遊走子を生じ、これが泳ぎ出て宿主に到達する。葉状体に形成された一次型遊走子はクロミスタ界の中でも真眼点藻類の遊走細胞と同様に2本の鞭毛を細胞の前端に持つが、一次型遊走子がシスト化してから脱皮して生じる二次型遊走子は褐藻などと同様にソラマメ型の細胞の側面から前方に羽型鞭毛が、後方に鞭型鞭毛が伸びる。
有性生殖は、配偶子が独立せず、配偶子嚢の状態で接合する配偶子嚢接合という形を取る。まず葉状体に多核の造精器と生卵器が互いに接して形成され、それぞれの内部で減数分裂が行われる。造精器から生卵器に受精管が伸び、単相(n)の配偶子核が移送されると生卵器内に受精によって生じた厚壁の卵胞子が1~40個形成される。この卵胞子を形成する有性生殖により卵菌と呼ばれる。卵胞子が休眠後発芽すると遊走子嚢が突出し、そこから多数の遊走子が放出される。
かつてはツボカビ類などとともに鞭毛菌類あるいは藻菌類と呼ばれたが、細胞壁や鞭毛の構造が明らかに異なることから、現在では菌類ではないと考えられている。しかし現在でも植物病理学など応用分野で便宜的に藻菌や鞭毛菌と呼ばれることがある。
先にも述べたように、この類はかつては菌類と見なされたいたが、現在は別系統と考えられている。鞭毛の構造等から、褐藻や珪藻などの不等毛藻類などと共通の系統に属するものと見なされ、ストラメノパイル、あるいはクロミスタ界などの群に属させる。この群にはいくつかの藻類の他に、菌類と見なされたこともあるサカゲカビ類やラビリンチュラ類も含まれている。しかし、それらと卵菌類の系統関係については明らかではない。特にサカゲカビ類はよく似た部分が多いが、近縁であるとの判断は必ずしも出されていない。いずれにせよ、藻類に近縁であるからといって、これらの菌類的生物が藻類に由来したものとは考えられていない。