数学において、全射(ぜんしゃ、onto、surjective function、surjection) とは、写像であって、その終域となる集合の元は何れもその写像の像として得られるようなものを言う。言い換えれば、値域が終域と一致するような写像を全射とよぶのである。全写とも書く。
定義
写像
f:
A →
B について、
f(
A) :={
f(
a) |
a ∈
A } とするとき、
f(
A) =
B が成り立てば、
f を
全射 (surjection) とよぶ。あるいは
f は写像として全射 (surjective) であるという。この用語は、
ブルバキによる。
全射であり単射でない。 |
単射であり全射でない |
全単射。 |
全射でも単射でもない。 |
注意
同じことを
f は
A から
B の
上への (onto) 写像である、ということもあるが、この百科事典ではこの用語は使用しない。
ほとんどの場合、全射の代わりに
上への という言葉を用いる文献では、
単射の代わりに
一対一 (one-to-one) という言葉が使われるが、後者は
全単射を表す「一対一対応 (one-to-one correspondence)」とまぎらわしく、最近ではもっぱら全射、単射、全単射という言葉が使われる。
容易に類推されるように、中への (into) という言葉も存在し、これは全射でない 写像を表す。しかし、めったに使われない。(下記参考文献に使用例が見られる)
参考文献
- ケリー『位相空間』吉岡書店
- 彌永昌吉・小平邦彦『現代数学概説(1)』岩波書店(この本ではわずかに言及されているだけである。)
例
実数 x に対し、その
自乗 x2 を対応させる正の実数に値をとる写像
f:
R →
R+;
x →
x2 は全射である。ただし
R+ で正の実数全体の集合を表している。これは実際、
x > 0 に対し、その
平方根 ±√
x をとれば、
f(±√
x) =
x となる。
ところでこれを単に、実変数実数値関数 f: R → R; x → x2 と考えると、これは全射にはならない。自乗して負になる実数は存在しないからである。
性質
- 二つの全射の合成が定義できるならば、合成写像も全射である。
- 写像 f が全射ならば f は圏論的な意味での全射 (epimorphism)(後述)である。
全射と商構造
ある
数学的構造を持つ二つの集合
A,
B の間の
準同型 f が全射であるとする。
A における同値関係 ∼ を、
A の二つの元の
f による像、すなわち
B においてとる値、が等しいという関係で定義すると、
f は商集合
A/∼ から
B への
全単射 f^:
A/∼ →
B を導く。もしこの誘導された写像
f^ およびその逆写像が再び
準同型となるならば、
B は
f^ により、
A の商集合と同型となることを意味する。
圏論的な全射
圏論において、射 (morphism)
f:
X →
Y が全射 (epimorphism) であるとは、射
g,
h:
Y →
Z が
-
を満たすなら必ず
g =
h が成り立つときにいう。
関連項目
集合論
Сюрекция | Surjektivität | Surjection | Función_sobreyectiva | Surjection | Funkcja_na | Surjektiv