代理 (だいり) とは、法律主に民法で使用される用語、概念である。他人(代理人)が本人に代わって法律行為(契約締結など)をし、その効果を直接本人に帰属させること。そのような効果をもたらす意思を代理意思といい、そのような効果をもたらす権限のことを代理権といい、そのような権限をもつ人を代理人とよぶ。そのような効果の帰属先になる人を本人といい、また本人が会社など法人のケースの場合は代表という用語が使われる。ただ、文言上「代表」とあっても、「代理」を意味することがある(民法107条など)。
(以下の記述において、民法の条文に言及するときは、単に条文の番号を示すに留める。)
民法
代理人が商品の購入契約を締結すると、商品の所有権を取得するのは代理人ではなく本人であり、代金支払義務を負うのも代理人でなく本人である。
効果帰属要件ともいう。
本人がいかなる法律行為をするか決め、その意思表示を伝達するに過ぎない使者とは異なり、代理人が代理人自身の判断でいかなる法律行為をするか決め、意思表示をするのである。
支店長が支店長名にて会社に関する契約を締結するのは「代理」だが、社長の記名捺印を得た契約書を相手方に交付するのは「使者」である。
代理制度の趣旨
- 代理人を利用することにより本人の法的な活動の領域を拡張させることができる。おもに任意代理制度に妥当する趣旨である。
- 代理人を利用することにより本人の法的な活動をより確実なものにすることができる。おもに法定代理制度に妥当する趣旨である。
代理人
- 任意代理人
- 法定代理人
- 特別代理人
- 代理人は行為能力者であることを要しないとされる(102条)。
代理権
- 代理権は本人と代理人との契約(委任など)によって発生する。
- 代理権は法律により発生する。
復代理
復代理とは、代理人がさらに代理人を選任し本人を代理せることである。
- 本人の許諾を得たときか、やむを得ない事情があるときに限り選任できる(第104条)。代理人は、復代理人の選任及び監督について、本人に対して責任を負う(第105条1項、本人の指名に従って復代理人を選任したケースについては責任が軽減される、第105条2項)
- 自己の責任で復代理人を選任することができる。法定代理は復代理人の選任及び監督について責任を負う(第106条、第105条1項)。
以下では、任意代理人について中心に論じる。
顕名
代理人は本人のためにすることを示して意思表示をしなければならない(第99条1項)。それを怠ると、自己のためにしたものとみなされる(第100条本文、ただし、相手方が代理人の代理意思を知っていた場合は例外)。相手方が意思表示の帰属先を誤認しないようにするための制度である。
代理権の範囲
任意代理の場合、代理権の発生原因となった契約等の解釈によってその範囲が決定されるが、定めのない場合については、103条1号2号の規定の範囲で代理権を有する。
一 保存行為
二 代理の目的である物又は権利の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為
代理権の濫用
客観的には代理権の範囲内の行為であっても、代理人に自己又は第三者の利益を意図して権限の濫用した場合の法律関係をどう理解すべきか問題になる。かつては代理人には権限濫用する権限はないとして無権代理と解釈する立場も存在したが、現在では客観的な権限踰越と主観的な権限濫用とを峻別して考え、その上で民法第93条(
心裡留保)を
類推適用し、相手方が代理人の濫用意図につき悪意・有過失である場合に法律効果を無効とする見解が
判例(最高裁判決昭和42年4月20日民集21巻3号697頁)・通説である。ただし、類推解釈の基礎を欠くとして信義則違反で対応すべしとする立場もある。
自己契約・双方代理
民法第108条によって禁止されている。ただし、債務の履行及び本人があらかじめ許諾した行為については、この限りでない。
表見代理
代理権なしに代理人が代理意思をもって行為しても後述の無権代理となり代理としての効果は否定されるが、代理権の存在について本人のせいで一定の外観が生じており、それを過失なく信じた場合は、
表見代理として、代理が有効に成立することもある。
権利外観法理の一類型と位置付けられる。
- 代理権授与表示(第109条)
- 代理権の権限踰越(第110条)
- 代理権消滅後(第112条)
無権代理
無権代理とは、本人を代理する権限がないにも関わらず、勝手に代理人として振る舞うこと(第113条1項)
- 本人の権利
- 本人が追認すれば、無権代理行為は遡って有効になる(追認は相手方に対してしなければならない。第113条2項、遡及効につき、第116条)。
- 無権代理に基づく法律行為の相手方は、本人に対して、相当の期間を定めて、その期間内に追認をするかどうかを確答すべき旨の催告をすることができ、また、無権代理につき善意であれば法律行為を取り消すこともできる。
- 無権代理人は原則として、善意かつ無過失の相手に、履行又は損害賠償責任を負う。
- 表見代理責任と併存し、相手方はいずれの責任を追及するのも自由と考えるのが判例である。
代理権の消滅
本人が死亡したり、代理人が死亡又は破産し、あるいは後見開始の審判を受けたときに代理権は消滅する(第111条1項1号2号)。代理権が
委任に基づいて発生した場合は、委任が終了したときにも代理権は消滅する(第111条2項)。
商法
商行為の代理については特則があり、代理人が本人のためにすることを示さないでこれをした場合であっても、代理が成立する(
商法504条、
善意の相手方は代理人に対して履行の請求をすることも可能)。
手形法上の代理については、
手形行為を参照。
行政法
- 行政行為を参照。
関連項目
民法 | 商法