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ヴェジタリアン (vegetarian)、ベジタリアンとは、宗教思想上または健康上の理由などから「動物を屠殺、もしくは傷付けて得られる食品」を食べない人々のこと。その思想をヴェジタリアニズム (vegetarianism)、ベジタリアン主義という。

日本では菜食主義者菜食者)と訳される。しかし、この言葉は、ヴェジタリアンが野菜だけを食べているという誤解を与えるので、ヴェジタリアンの実態を反映していない訳語である。また、イギリスのヴェジタリアン協会によると、ヴェジタリアンの語源は、野菜 (vegetable) ではなく、ラテン語vegetus(活気のある、生命力にあふれた)をもとに19世紀半ばに使われ始めた言葉といわれている。つまり、ヴェジタリアンの本義は「健康で活力のある人」であり、「そうなるために肉食を避ける者」であるという。

非肉食の思想であるヴェジタリアニズムは、仏教ヒンドゥー教ジャイナ教キリスト教の一部、ラスタファリズムなどに共通して存在する。うち前三者はインドを起源とする不殺生(アヒンサー)の考え方に基づいている。現代西洋のニューエイジ的潮流から発したヴェジタリアニズムも、それらの影響を少なからず受け継いでいると言っていいだろう。また、オーストラリアの哲学者ピーター・シンガーのように倫理学説上の理由から菜食主義をとるものもいる(彼の場合は功利主義の立場から脊椎動物のみ食べないという限定的な菜食主義)。

ヴェジタリアンの種類


一般的かつ厳格なヴェジタリアンは、鳥獣の肉、卵、魚介類およびそれらの副生成物(ラード、ヘット、ゼラチン、肉エキス、鰹節・鰯・エビなどの出汁、魚を殺傷して得た魚卵などを含む)が含まれるものを口にしないが、動物の体を損傷せずに得られる乳および乳製品などは、むしろ積極的に摂ることが多い。彼らは ラクト・ベジタリアン (lacto-vegetarian)(野菜のほか、乳製品も食べる)、オボ・ベジタリアン (ovo-vegetarian)(野菜のほか、卵も食べる)、ラクト・オボ・ベジタリアン (lacto-ovo-vegetarian)(野菜のほか、乳製品と卵も食べる)と呼ばれる。

ただし、そうした乳製品なども含む動物性の食品を一切摂らず、動物製品(皮革製品・シルクウールなど)を身につけない者もあり、彼らはヴィーガン (vegan) と呼ばれる。ヴィーガンは、20世紀半ばになってveg (itari) anを短縮してつくられた造語である。日本語の菜食主義者のイメージは、むしろこのヴィーガンに近いかも知れない。また自然食、有機栽培(オーガニック)食品を摂ることや、マクロビオティック(正食)などの運動をまとめて菜食主義と呼ぶ場合もある。

ニンジンレタスなど、収穫したら死んでしまう野菜を食べない人はフルータリアン (fruitarian) と呼ばれる(果物、ナッツ類など、植物の生命に関わらない部分を食べる)。水などの液体食のみを摂取する人はリキッダリアン(liquidarian)と呼び、さらに最近では、食べ物も時にはも飲まないブレサリアン (breatharian)(不水食)と呼ばれる人も出てきた。科学的にはブレサリアンは生存できないはずだが、現実にそのような生活を送っているとする者もおり、研究者の注目を集めている。

乳製品、卵の他に魚介類も食べる人を指すペスクタリアン (pescetarian)、ペスコ・ベジタリアン(pesco-vegetarian)、家禽の肉も食べる人を指すポウヨゥ・ベジタリアン (pollo-vegetarian) という用語もある。

インド料理の多くはヴェジタリアン用に作られている。また仏教文化から発達した精進料理もヴェジタリアン料理の一種。台湾などでは素食(「粗食」ではない)と呼ばれる。ちなみに精進料理でニンニクタマネギ等を使わないのは、俗にそれらが「精をつけ情欲を増大させる」ためと説明されることがあるが、本来の意義とは違う。そうした球根類は植物の「肉体」であり、動物の場合と同様に損なうことが避けられるからだ。この考えによれば、植物の枝葉や根は動物の体毛や爪にあたるもの、ということになる。切られてもまた生えてくるので、食しても構わないとされる。加えて完全な菜食を続けると、人によっては刺激が強く、そのような物を受け付けない体質に変化することがあるのも理由に挙げられる。

ヴェジタリアニズムを支持する根拠


上述の通り、ヴェジタリアニズムは不殺生、および健康増進という二つの考え方から発しているが、また次のような点も指摘される。
  • 肉食には、動物の飼育が伴うが、穀物や牧草を家畜の飼料に回して得られる食肉より、同じ土地面積に、人間が直接食べる農作物を作付けした方が、遥かに多くの人を賄う分の食料を生産できる。つまり牧畜は世界の食料不足(飢餓)を増大させている。
  • 現在の畜産・養鶏のシステムは、省スペースで高効率を求め、工業化されすぎて自然に反している。殺す際にも一般的には安楽処置がされているわけではなく(欧州などでは安楽処置される場合もある)、必要以上に残虐である。また感染症予防の抗生物質などが使用が耐性菌増加のリスクを伴うなど、健康に影響しないとは言いきれない。
  • 過剰な肉食は、生活習慣病などの危険性を上昇させることが指摘されている。
  • 豆類、芋類、穀物などを積極的に利用することで、健康に生きていくのに必要な栄養は充分に摂取できる。

ヴェジタリアニズムを批判する根拠


  • 人間は植物だけから必須アミノ酸を摂取しきれず、何らかの形で動物性のタンパク質を摂取する必要があるともされる。また腸内細菌より摂取する場合も、これも肉食ではないのかという難癖もある。
  • なぜ植物は食べてよくて動物は食べてはいけないのかという基準そのものが恣意的である。
  • 過剰な肉の摂取を戒める主張と、肉食そのものを否定する主張の含意が混同している。
※ただし前述の通り、現実にはヴェジタリズムを実践する根拠や方法は多様であり、全てのヴェジタリアンは一つの思想の元に同じ行動をしているわけではない。

ヴェジタリアンにまつわる社会的問題


十分な栄養学的知識のないヴェジタリアンの両親が、自分の子供に栄養的に片寄った菜食を押し付けてしまい、栄養障害や成長不良を招くことがあり、時折マスコミなどで報じられる。栄養学的に十分に考えられた菜食主義であれば、妊婦や幼児の食事としてもまったく問題はなく、インドのヴェジタリアンは、生まれてから死ぬまで一度も肉食をしない人も珍しくない。

日本とヴェジタリアン


明治以前の日本では仏教侶は大乗仏教であるため肉食が認められず精進料理ができた。またやその影響を受けた茶の湯(現茶道)では懐石料理が発達した。また、僧侶以外では仏教の影響下で、家畜獣類の食用は少なかった。家禽や鯨類が食用とされていたことを除けば、いわゆるペスクタリアン(上記)に近い食生活だった者が多かったと言っていいだろう。しかし上述の「菜食主義(者)」という訳語の誤った印象もあり、ヴェジタリアニズムは近代以降の日本で正確に理解されていない面もある。ひどい時にはただの偏食と同列に看做される場合さえある。

また、日本人は一般に、思想・信条の違う相手に対する配慮に慣れておらず、食習慣の違いについても無頓着であることが多い。あるテレビ番組で、厳格なヴェジタリアンのインド人に、獣脂や肉エキスなどが含まれている日本のカレーを勧める場面があった。本人も気づいていないらしく、番組でそれ以上のコメントもなかったが、こういったことがトラブルの原因になることは現在も少なくない。

ヴェジタリアン宗教


ヴェジタリアンとして知られる人物


日本

海外

基礎文献


関連項目


食のタブー

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