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 モラル・ハザード (moral hazard) とは、プリンシパル・エージェント関係において情報の非対称により起こるモラルハザードと、保険に加入している事により発生するモラルハザードの、二つの意味がある

プリンシパル・エージェント


 「プリンシパル・エージェント関係」において、エージェントの行動について、プリンシパルが知りえない情報があることから、エージェントの行動に歪みが生じ、効率的な資源配分が妨げられる現象を指す。

 例えば雇用関係において、雇い主(プリンシパル)が、被雇用者(エージェント)の努力の程度を知り得ないとすると、労働態度に関わらず一定の賃金を払うしかない。そのとき、労働者にとって勤勉の負効用が怠惰の負効用よりも大きければ、効用を極大化しようとする労働者は当然怠惰になる。雇い主にとっての成功の度合い(利潤)が、労働者の努力の程度に依存し、勤勉であればあるほど成功の確率が高いとすると、労働者が怠惰になれば、そうでない場合と比べて、支払い可能な賃金が低下する。そうすると、すべての労働者が勤勉に働いた場合に支払い可能な一律賃金のもたらす効用から勤勉のときの負効用を差し引いた純効用よりも、低い純効用しかもたらさない賃金が均衡賃金となる可能性がある。

 医療保険の場合、個人が医療サービスを受ける際の自己負担が軽いために、ちょっとした病気でも医療を受けたり、医師が不必要に多くの薬を患者に与えて診療報酬を増やそうする問題が生ずる。これらは、医療保険における医療サービスの需要側と供給側の情報の非対称によって生ずるモラル・ハザードといえる。こうした現象をモラル・ハザードという。

保険におけるモラル・ハザード


 本来は保険業界で使われていた用語である。保険契約において、保険によって危険を回避できるという事実が、被保険者の損害回避行動を阻害するという現象である。リスク回避を疎かにする方をモラール・ハザード(morale hazard)、意図的に事故を起こす方をモラル・ハザード(moral hazard)と分ける場合もある。

 また、努力しても努力しなくても結果が同じなので全体が怠けていく、例えにも用いられる。

誤訳


 翻訳するさい直訳されたため(道徳的危険)と訳された。その際、よく用いられる保険の例えで、保険に加入して自らが火災を起こす事を保険金詐欺と捉え、節度を失った利益追求と誤った解釈がなされた。

 情報の非対称を元に、プリンシパルがエージェントに不利益になる条件を与える方のモラルハザードは、社会や他者を考慮しない自己利益のみの追求と説明されたため、当たり前の経済活動を指してしまった。

参考文献


  • Varian, H. R., Microeconomic Analysis, New York, W. W. Norton & Co. Inc., 1978; 2nd ed., 1984.

経済学 | 経済現象 | 保険

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