ミニバン(Minivan)は自動車のスタイルの呼称である。
概要
ヨーロッパでは
MPVや
モノスペースとよばれる場合が多く、いわゆる2BOXの形状で前部にボンネット、後部に室内スペース部分のある形状を持つ乗用車である。車高は
セダンと比較して総じて高めである。そして3列目(サード)シートを備えている点もミニバンの要素の一つとされている(但し絶対条件ではない)。
キャブオーバータイプのいわゆる1BOXカーは含まない。そもそもはアメリカ車の
フルサイズバン(
シボレー・エクスプレス/シェビーバンや
フォード・エコノライン、
ダッジ・ラム)の縮小版として開発され大ヒットした
クライスラー・キャラバン(
1983年発売)がオリジナルとされる。ヨーロッパでは
1984年に発売が開始された
ルノー・エスパスから始まる。「ミニ」バンと呼ばれるものの「ミニ」という語には日本においては大きさを表す意味は無く、ミニ「バン」の「バン」も貨物車を表している訳ではない。よって「ミニ」+「バン」と分けて捉えるのではなく、「ミニバン」という一つの単語として捉えるのが適切である。
国産では1982年に相次いで発売された日産・プレーリーと三菱・シャリオが初期のミニバンであるが、1990年に登場したトヨタ・エスティマと1994年に登場したホンダ・オデッセイの相次ぐ大ヒットによりミニバンという呼称の普及とともに一般的な大衆ファミリーカーとして定着した。また、荷室が広いため、寝台車や身体障害者や高齢者を乗せる福祉車両に用いられることもある。
室内のシート配置は、“2・3列目が3人がけベンチシートの8人乗り”、“2列目がキャプテンシート+3列目が3人がけベンチシートの7人乗り”、“2列目が3人がけベンチシート+3列目が2人がけのベンチシート7人乗り”のいずれかに大きく分けられる。
タクシーに用いる場合、保安基準で3列目の乗客が避難できるように2列目と3列目の間でウォークスルーができるものでなければならない決まりがあるため、2列目がキャプテンシートの車が多く用いられている。2列目がベンチシートの車は3列目のシートを撤去して5人乗りとして用いるケースが多く、1BOXタイプでは1人掛けシートを撤去して7人乗りとして使用しているケースも稀ながらある。日本ではタクシーには依然として高級感や居住性を求める傾向が強く、このためセダンが一般でミニバンをタクシーに転用されることはあまりない。しかし大きな荷物を運ぶ必要がある空港タクシーには多く採用されている。
ミニバンの特徴
ボンネットの存在
全てのミニバンに共通して存在しているものがボンネットである。自動車にボンネットがあるのは当たり前と思われるかもしれないが、90年代前半までは3列目シートを備える車はボンネットの無い
キャブオーバースタイルが当たり前だった。しかしキャブオーバーは“
エンジンが前席床下にあることによって床面が高くなり、乗り降りしづらい”、“セダン等と大きく異なる運転感覚”、“前席と後席が隔離され室内ウォークスルーが困難”、“エンジンの騒音が酷い”、“前面衝突安全性に問題”とデメリットが多かった。ミニバンはボンネットを備えることで、キャブオーバーの持つデメリットを全て解消した点が画期的である。
3列目シートの存在
3列目シートの有無がミニバンであるか否かを分けるポイントの一つである。例えば
日産・ラフェスタや
ホンダ・オデッセイ(3代目)は、外観こそは
ステーションワゴンの如きスタイルであるが、3列目シートを装備しているためミニバンと分類される。一方で3列目シートが無いもののミニバンでは無いと否定し切れない車もある。シートこそは2列目までしか用意されてないが、“背高キャビンによる広い室内空間を有す”、“セダンとは異なる高いユーティリティ性を持つ”、“全席ベンチシートによって多人数乗車能力を持つ”のいずれか、もしくは複数の特徴によってミニバン的性格を備えた車がそれであり、例えば
トヨタ・ナディアや
ホンダ・エディックスがこれに当たる。ミニバンに限らない話ではあるが、ユーザーの潜在的需要を発掘するために既存のジャンル分けに捉われない車をメーカーが開発する事はよくあり、このようなモデルは総じてジャンル分けが難しく、メディアによってミニバンに分類されたり、もしくは
トールワゴンや
ステーションワゴンに分類されたりとバラつく場合が多い。(ちなみに
日産・ルネッサもこの例に含まれる場合があるが、当のメーカーではステーションワゴンに分類している。)
車高の高さ
車高が高い点もミニバンの特徴である。一般的には車高制限の厳しい立体駐車場に入庫できない高さである1550mmを超える車高を有している。但し
ホンダ・オデッセイ(3代目)のように車高が低い(つまり1550mmを超えない)車も一部存在する。車高を高くする事によってキャビンの室内高を稼ぎ、広い室内空間を確保している。車高が高いということは、ドライビングポジションもそれに合わせて最適化して設定されているということであり、運転時の視点がセダンよりも高くなる。
ミニバンの種類
1BOX(ワンボックス)タイプ
背高箱型キャビンに控えめなボンネット(セミボンネット)が突き出た形状のボディタイプ。駆動方式はエンジン横置きのFFもしくは4WDが主流だが、エンジン縦置きのFRも一部存在する。エンジン排気量は2000~3500ccまで。3種類あるミニバンの種類の中で最も車高が高く床面も高い。よって座面も高くなるためドライビングポジションもセダンより最も異なるが、視点が高いため周囲の視界は良好。キャビンスペースは広く、シートは3列目まで快適に座れる車種が多く、それがため高級ミニバンは大抵1BOXタイプを採用している。3列目シート格納法は5:5分割の左右跳ね上げ格納タイプが主流。
キャブオーバー型1BOXカーをルーツとし、キャブオーバー型のデメリットを解決するためセミボンネットスタイルを採り入れ、今日の1BOXタイプミニバンになった。90年代前・中期頃のキャブオーバー型からセミボンネット型への移行期には、キャブオーバー時代の名残で、セミボンネット型でありながらエンジンを前席床下に配置するタイプも多く、セミボンネット型の長所を生かしきれない車もあったが、世代交代によって現行車ではそのような車はほぼ無くなった。同じく移行期には、キャブオーバー型の別称「1BOX」と区別して、1BOXタイプミニバンを「1.5BOX」と呼ばれたが、今ではキャブオーバー型が商用車でしか存在しなくなり、「1BOX」と「1.5BOX」を呼び分ける意義が薄れたため、「1.5BOX」という語を目にする機会は減っている。
ワゴンタイプ
2005 Mazda MPV.jpg
ステーションワゴンの車高を高くしたような2BOXの形状を持つ。ボンネットは、ボンネットらしくより突き出た存在感あるものが備わっている場合が多いが、セミボンネット型もある。車高はセダンよりは高いが、1BOXミニバンよりは相対的に低いキャビンを備える。駆動方式はエンジン横置きのFFもしくは4WD。エンジン排気量は1700~3500ccまで。ラインナップは最も幅広く、1700ccの小型ミニバンから3500ccの高級ミニバンまであって多彩。全長に対するボンネットの割合が多いため、相対的にキャビンが短くなりがち。よって1・2列目シートはともかく3列目シートは窮屈であるケースが多い。逆に床面は1BOXタイプより低いため、よりセダンに近い運転感覚が得られる。3列目シート格納法は背もたれ展開格納か床面折り畳み格納タイプが主流。
日本におけるミニバンの元祖といえるボディタイプで、ミニバンのジャンルを築いた日産・プレーリー・三菱・シャリオ・トヨタ・エスティマ・ホンダ・オデッセイは全てこちらに属する。旧来のキャブオーバー型1BOXカーと違い、エンジンを収めたボンネットが存在することによる衝突安全性や低騒音、そして乗り降りしやすさやウォークスルーのしやすさを備えることで、多人数乗車型乗用車のイメージを変えることに成功し、キャブオーバー型を駆逐し現在のミニバンブームを起こした。
コンパクトミニバン(ミニミニバン)
トールワゴンに3列目シートを追加したような作りのもの。ボディ形状は2BOXスタイルを採る。3種類あるミニバンの中で最もボディが小型であり、3ナンバーサイズは皆無。駆動方式はエンジン横置きのFFが主流だが、一部車種に4WDあり。エンジン排気量は1800cc以下(但し軽自動車は含まない)で、主流は1400~1500cc。キャビンスペースは最も狭く、3列目シートは緊急用的性格が強く、大人が快適に座れるような代物ではない。3列目シート格納法は背もたれ展開格納か床面折り畳み格納タイプが主流。
トヨタ・カローラスパシオが先駆ではあるが、コンパクトミニバンを確立したのは2001年登場のホンダ・モビリオ以降から。モビリオ登場から数年内に日産やトヨタが相次いでキューブキュービックやシエンタを投入し、現在の陣容が整った。小型な車ながら3列目シートを備えることによる多人数乗車性と使い勝手を持つ点が画期的で、多彩なシートアレンジも行えるようになった。日産・キューブやホンダ・キャパなどは形状はコンパクトミニバンと言えなくもないが、2列シートで定員が5人なのでミニバンとはされない(→トールワゴン参照)。小型車を求めるユーザーは多人数乗車性を重視しているとは限らず、3列目シートも実用性が低い点から、通常のハッチバック車やトールワゴンを選択するユーザーが多く、小型車における主流のジャンルに成りきれていない。
関連項目
自動車の形態 | ミニバン | Minivan | Monospace | Van (Automobil)