article

プロトサイエンス(protoscience)とは、科学的プロセスにより確立しつつある新しい分野を呼ぶときに使われる言葉である。 この用語は科学哲学の分野で使われることもあるが、実際になんらかの研究をしている人が自らの研究を指していう場合もある。

「プロトサイエンス」という用語は、日本ではほとんど使われないため和訳は未確定である。未科学異端科学前科学などと訳される場合がある。なお英語接頭語 proto- は、「未分化の」「原始の」の意。

「プロトサイエンス」は、科学的懐疑主義者(Scientific skepticism)には病的科学(Pathological science)と呼ばれることがある。

意味としては、端的に言えば「未実証な仮説」である。すなわち、プロトサイエンスの主張を「正しいもの」「確定したもの」として伝達することは慎まなければならない。 逆に、「未実証な仮説」と言わずに「プロトサイエンス」という新造語を使う必要もないという意見も強い。

「プロトサイエンス」の意味主張


「未実証な仮説」と言わずに「プロトサイエンス」を使いたがる人は、「科学」や「疑似科学」も意味は使う人により違うと主張し、「プロトサイエンス」は「確立した科学」と「疑似科学」の中間にあり、科学的方法を用いた探求である、とする。

また「プロトサイエンス」を使いたがる人は、「未科学」は「科学的に解明されていない未知の現象すべて」と解釈され、「異端科学」は社会的な評価を重視する印象を与え(オカルト疑似科学を連想させる)ものだが、「プロトサイエンス」はより形式的に、かつ疑似科学とは異なる、とする。

このように「プロトサイエンス」を使いがたる人は自身の営為を「疑似科学」と異なることを強調するため、この新造語を使う。

「プロトサイエンス」と疑似科学との比較

疑似科学は、科学的方法を用いず、査読や科学雑誌への論文投稿などによらず主張を行う。また疑似科学が主張する説は反証不能性を特徴とする(反証する手段が無い)。既存の科学知識を平然と無視否定することもしばしばある。

「プロトサイエンス」を使いがたる人によれば、「プロトサイエンス」は、科学的手法を積極的に用い、科学者が確立した慣習にならい、既存の科学を最大限尊重し、実験を奨励し、他からの反証や、よりよい説明を積極的に受け入れる姿勢があるものの、しかし未だ実証に至らないものと定義してみる。

このように彼等の定義を整理すれば、科学的手法を十分に用いずに外観だけ科学に似せて構築した知識体系が「疑似科学」、科学的手法を用いるが未だ実証的な証拠が得られていないもの(もしくは現段階の技術では実証を行うことが不可能なもの)が「プロトサイエンス」、科学的手法を用いて構築された実証的な知識体系が「自然科学」となる。

彼等は未解明現象を即「プロトサイエンス」とは呼ばない。「プロトサイエンス」は、既存の科学理論を土台とした仮説で、既存の科学理論に矛盾しない応用や発展であり、新しい現象の存在を示し、理論付け、予想し、妥当性のある実験をするといった通常の科学のプロセスを満たして、「結果は未実証であっても、科学的方法を使っている」と同時代の当該分野の研究者を納得させる必要がある、とする。

彼等の定義を図で表すと以下のようになる。

      科学的知識として体系化されている
    科学的方法で取り扱われている
  科学であろうとするか、科学であるように見える
迷信等 疑似科学 プロトサイエンス (真の)科学

さらに科学的方法に従う限り、「プロトサイエンス」に携わる研究者は自身の仮説が未実証であることを自覚しているため、「未実証の事項が実証されているかの如き発言をすること」は慎む。それに対して、疑似科学に携わる研究者の場合は、自身の仮説を十分な検証がないにもかかわらずそのままそれが科学的真理であるかのように発言することがある。

曖昧さの問題

しかし、ある分野が疑似科学かプロトサイエンスかの区分けは、時々、一般に限らず、専門家にすら曖昧であることがあり、疑似科学やプロトサイエンスと(真の)科学とを明確に区別することは難しい場合もある。特に、新理論が非常に目新しく、現在の実験結果や事実がその新理論に矛盾もしていないが、主に技術的理由でさらなる評価が困難である、といった場合には、疑似科学とプロトサイエンスとの区別はさらに困難になる。あらゆる学問分野の中でも、物理学医学の先端分野ではこのような傾向が特に著明に見られる。同時代の人々をどの程度納得させられるか、という信仰の問題であると考える人もいる。

なお、「科学」(Science)という語は、科学的手法を用いた「営み」という意味でも、それによって既に証明された「知識体系」という意味でも、ともに用いられるという曖昧さがあり、注意を要する。科学的手法を用いた「営み」を科学とするなら、プロトサイエンスに対する営みも科学に含まれることになる。一方で、確立された「知識体系」が科学であるとするなら、プロトサイエンスは科学ではなく、あくまでプロトサイエンスであるということになる。前者の場合には科学の範囲が一般常識にかけ離れて広くなってしまう恐れがある。

プロトサイエンスは、将来のある時点で真の科学的知識として認められる可能性もある一方で、有効な証明が得られないままに主張を繰り返す中で、結局は疑似科学としての性格を強く帯びていくものも多い。

科学史上のプロトサイエンスの例


前時代の例として錬金術がオカルトや疑似科学ではなく「プロトサイエンス」とされる場合がある。ただし錬金術の時代には科学的な方法が確立されていないため、先の「プロトサイエンス」の定義自体と矛盾してしまう。

また近代の例として大陸移動説アルフレート・ヴェーゲナー)が「プロトサイエンス」とされる場合がある。しかし大陸移動説の場合はヴェーゲナーの時代に実証する手段はなかった。すなわち「反証不能性」がなりたち、先の「プロトサイエンス」の定義自体と矛盾してしまう。

現代で「プロトサイエンス」と主張される例として超弦理論プラズマ宇宙論やナマズ地震予測などがある。しかしそれぞれ「プロトサイエンス」と呼ぶべきかどうか議論の余地がある。

最後に繰り返しとなるが、「プロトサイエンス」という言葉自体が日本語で定着していないし、「未科学」「異端の科学」等も同様である。使われる場合も意味は浮動しており、使う場面ごとに意味は変わるような状況である。このようにこの用語を使う場合は注意が必要である。

関連項目


英語版関連項目


参考文献


  • 大辞林 第2版, 松村 明・三省堂編修所

Protoscience | Protovetenskap

科学

 

This article is licensed under the GNU Free Documentation License. It uses material from the "プロトサイエンス".

Home Pageartsbusinesscomputersgameshealthhospitalshomekids & teensnewsphysiciansrecreationreferenceregionalscienceshoppingsocietysportsworld