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フザリウム
Fusarium verticillioides 01.jpg
分類

界: 菌界 Fungi
門: 子嚢菌門 Ascomycota
綱: Sordariomycetes
目: Hypocreales
属(form-genus): Fusarium
フザリウムは、バナナ型の分生子を形成するカビである。赤い色素を出すものがある。また、植物の病原体としても知られる。

概説


フザリウム(Fusarium)は、分生子を形成するカビ、いわゆる不完全菌のひとつである。多くの種類があり、世界で約70種が知られる。森林土壌などではごく普通に見られるものであるが、植物に病気を引き起こすものが多く含まれるほか、毒素を作るものもあり、人間にとっても重要なカビである。また、赤い色素を分泌するものがあり、そのためにこれが繁殖する部分が真っ赤に染まる場合があり、アカカビとも言われる。

また、分生子をがバナナ型という特徴あるものであり、分離培地上でも目につきやすいものでもある。同時に二通りの分生子を形成することも知られる。

形態


菌糸はよく発達した一定の太さのもので、規則的に隔壁が入る。寒天培地上では、寒天に潜るか、表面を這って成長し、次第に気中にも伸び出す。はじめはほとんど透明か真っ白のコロニーを作るが、古くなると桃色がかることもある。

分生子は特にはっきりした分生子柄を出さず、菌糸の側面から形成される。分生子形成型はフィアロ型であるが、フィアライドははっきりしない。分生子には大小二つの型があり、大分生子(Macroconidia)と小分生子(Microconidia)と呼ばれている。

大分生子は細長く、両端が曲がった三日月型で、数個の隔壁があって多細胞である。寒天培地上では、菌糸側面の短い枝に出て、その先の液滴中に放出される。つまり、先端に分生子の団子ができる。小分生子も同じように形成され、やはり細長いが、単細胞である。大きさは一回り小さい。両者ははっきりと区別できるが、中には中間的な分生子が見られることも少なくない。

野外の植物上では植物組織中に菌糸体を発達させ、分生子は表面に作られる。その際、分生子柄が束になり、まとまって分生子座(Sporodochium)を作ることが知られる。寒天培地上では、そのような構造を作らない。また、寒天の中にも分生子を作るのがよく見られる。ちょっと珍しい性質である。

完全世代


フザリウムの完全世代は子嚢菌核菌綱ボタンタケ科アカツブタケ属(Nectria)やそれに近縁なジベレラ(Gibberella)である。アカツブタケは小さな球形の子実体を多数、枯れ木の樹皮上に形成する菌である。ジベレラは紫色の子実体を形成するのが特徴である。この菌には稲のばか苗病の病原菌として有名なものが含まれる。

なお、アカツブタケ属の菌のアナモルフ(不完全世代)はフザリウムだけではなく、CephalosporiumCylindrocarponVerticiliumの形を取るものもあることが知られている。形は違うがいずれもフィアロ型の分生子形成型のものである。

アカカビ


この菌は赤い色素を出すことで知られ、培養するとコロニーが赤や桃色に染まることがある。野外においても、そのために人を驚かせる場合がある。

樹木の傷から染み出る樹液には糖分などが含まれ、これを生育場所とする菌は数多く、まとめて樹液菌などと呼ばれる。特に酵母やそれに近縁なものが多く生息し、樹液が発酵しているのはよく知られていることであるが、同時に糸状菌も生育する。フザリウムもその一つであり、この菌がよく繁殖すると、その部分が赤や紅色に染まってしまう。この菌は普通はF. roseumであるとされている。

これを外から見れば、樹皮の傷口やその周辺に樹液が染み出し、そこに菌類が繁殖して何やらブヨブヨの固まりとなり、これが赤く染まってしまうのである。特にミズキなどでは樹液の分泌が多いのか、傷口から下側に数十cmにもわたって赤いブヨブヨが広がる状態も見られる。古くは「木の切り傷から血が流れていた」などという記録があるのもこれであるらしい。

この状態が長く続くことはなく、樹液の分泌が止まれば栄養の供給が断たれるから、次第に干からび、それに連れて菌の種類も変わり、最後は黒っぽくなって終わると言う。また、この状態でフザリウムの完全世代が見られることもあるとのこと。

なお、湿ったところに赤い色で繁殖するのはこのカビだけではない。不完全酵母のロドトルラ(Rodotorura)などの場合も多いので、外見だけでの判断はできない。

利害


植物質の上で腐生菌として生活するものがよく見られるが、樹液や汚水中に出るものもある。しかし、この菌は植物の病原菌となるものが数多く知られ、農業上の害が大きい。広い範囲の栽培植物が宿主となる。

フザリウムによる被害は、一般には宿主植物を萎れさせる。これを青枯れ病、あるいは青凋病と言う。フザリウムは普通、土壌中に生息しており、宿主植物のから感染し、木部道管に菌糸体を広げる。そのため、水の吸い上げを物理的に阻害することになり、植物全体がしおれるのである。

また、毒素を分泌するものがあることも知られている。これは、細胞膜の透過性を阻害するもので、そのために宿主細胞の生理活動の障害となる。

特に F. oxysporumのさまざまな変種は多くの植物の青枯れ病の原因となることが知られており、その対象となるのは、例えば以下のようなものである。

トマトバナナジャガイモエンドウ

また、先に述べたの馬鹿苗病は、稲の苗がむやみと徒長するもので、病原菌はGibberella fujikuroiであるが、当初はその不完全世代としてFusarium moniliformeの名が使われた。この種は植物の生長ホルモンの活性があるジベレリンを分泌するため、稲の生長が異常になるのである。

他に、フザリウムには魚やエビに寄生するものも知られている。そのなかには、養殖漁業において大きな被害を与えるものがある。

また、水中的な環境にも出現することから、台所やおふろの排水溝周辺などに生育して赤い汚れになる場合がある。コンタクトレンズの洗浄剤に繁殖して被害を出した例もある。

さらに、フザリウムは保存中の穀物に寄生してトリコテセン系マイコトキシン(デオキシニバレノール、ニバレノール、T-2トキシン)、 ゼアラレノン、フモニシン、ブテノライドなどのマイコトキシンを生成する。
前者では、汚染された穀物を摂取することにより、食中毒性無白血球症(ATA)と言われる中毒症状(悪心、嘔吐、腹痛、下痢、造血機能障害、免疫不全など)を起こす。このトリコテセン系マイコトキシンは、旧ソ連により生物兵器として研究され、実戦に用いられた。
後者のうち、ゼアラレノンは女性ホルモン様作用を持ち(環境ホルモン)、家畜に不妊、流産、外陰部肥大を引き起こす。

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