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バラ(薔薇)とは、
バラ科バラ属の
種の総称。しかし、一般にはそれらから品種改良で作られた栽培植物を指す。薔薇と書いて「そうび」「しょうび」とも読む。
観賞用および香料原料に使われる。観賞用に品種改良されたものは香りの少ないものが多い。茨城県を始とし多くの自治体がシンボルとして指定している。6月の誕生花である。季語は夏(「冬薔薇」「ふゆそうび」となると冬の季語になる)。
生物学的な意味で
バラ属の
植物は、灌木、低木、または木本性の
つる植物で、葉や茎に棘があるものが多い。葉は1回奇数羽状複葉。花は5枚の花びらと多数の雄蘂を持つ。ただし、園芸種では大部分が
八重咲きである。
北半球の
温帯域に広く自生しているが、
チベット周辺、
中国の
雲南省から
ミャンマーにかけてが主産地でここから
中近東、
ヨーロッパへ、また
極東から
北アメリカへと伝播した。南半球にはバラは自生していない。
世界に約120種がある。
そのうちで、園芸植物となっているのは、主として次の8種、およびそれらの交配等で生まれたものである。
- Rosa multiflora
- R. wchuraiana
- R. moschata
- R. chinensis
- R. gigantea
- R. galica
- R. damascea
- R. foetida
人類とバラの歴史
バラが人類の歴史に登場するのは古代
バビロニアの『
ギルガメシュ叙事詩』である。この詩の中には、バラの棘について触れた箇所がある。
古代ギリシア・ローマでは香りを愛好され、香油も作られた。プトレマイオス朝エジプトの女王クレオパトラはバラを愛好し、ユリウス・カエサルを歓待したときもふんだんにバラの花や香油を使用した。
ローマにおいてもバラの香油は愛好され、北アフリカや中近東の属州で盛んにバラの栽培が行われた。
中世ヨーロッパではバラの芳香が「人々を惑わすもの」として教会によってタブーとされ、修道院で、薬草として栽培されるにとどまった。
イスラム世界では白バラはムハンマドを表し、赤バラが唯一神アッラーを表すとされた。また、香油などが生産され愛好された。『アラビアンナイト』などやウマル・ハイヤームの『ルバイヤート』にもバラについての記述がある。
十字軍以降中近東のバラがヨーロッパに紹介され、ルネサンスのころには人々の愛好の対象に再びなった。
イタリアのボッティチェッリの傑作「ヴィーナスの誕生」のおいてもバラが描かれ、美の象徴とされているほか、ダンテの『神曲』天国篇にも天上に聖人や天使の集う純白の「天上の薔薇」として登場する。
バラの母ジョゼフィーヌ皇后
ナポレオンの皇后ジョゼフィーヌはバラを愛好し、夫が戦争をしている間も、敵国とバラに関する情報交換や原種の蒐集をしていた。ヨーロッパのみならず日本、中国など、世界中からバラを取り寄せマルメゾン宮殿に植栽させる一方、ルドゥーテに「バラ図譜」を描かせた。
このころにはアンドレ・デュポンによる人工受粉による育種の技術が確立された。ナポレオン失脚後、またジョゼフィーヌ没後も彼女の造営したバラ園では原種の蒐集、品種改良が行われ、19世紀半ばにはバラの品種数は3000を超え、これが観賞植物としての現在のバラの基礎となった。
モダンローズの誕生
ハイブリット・ティ(HT)系の誕生
1867年に
フランスのギョーがハイブリット・パーぺチュアル系の「マダム・ビクトル・ベルディエ」を母にティ系の「マダム・ブラビー」を交配し「ラ・フランス」を作出し、これがモダンローズの第一号となり、
品種改良が一層進むことになった。「ラ・フランス」が冬を除けば一年中花を咲かせる性質は「四季咲き性」と言われ画期的なものであった。
英国のベネットはこれに追随し、ティ系「デボ二エンシス」とハイブリット・パーペチュアル系「ビクトール・ベルディエ」を交配し、「レディ・マリー・フィッツウィリアム」を
1882年に作り出し、これを新しいバラの系統として「ハイブリット・ティ」系と命名。ベネットの新品種は整った花容から交配の親として広く利用されていった。
黄色いバラの誕生
当時のハイブリット・ティ系には純粋な黄色の花はなかった。そこで、黄色のハイブリット・ティ系の品種を作り出すことが課題とされた。
1900年にフランスのドュシェが「アントワーヌ・ドュシェ」の実生に原種の「ロサ・フェデダ(ペルシアン・イエロー)」をかけあわせて「ソレイユ・ドール」を作出。黄バラ第1号となった。しかし「ソレイユ・ドール」は「四季咲き性」がないので、一層の改良が加えられ
1907年には四季咲き性の「リヨン・ローズ」、さらに
1920年には完全な黄色のバラ「スブニール・ド・クロージュ」を完成させた。
ドイツのコルデスは「スブニール・ド・クロージュ」の子の「ジュリアン・ポタン」から
1933年に「ゲハイムラート・ドイスゲルヒ(ゴールデン・ラピチュア)」を作出。これが今の黄色のバラの親である。
欧米での品種改良の進展
ドイツのコルデスは黄色ののみならず赤バラの改良に尽力。
1935年に「クリムゾン・グローリー」を作り出し、これが後世の赤バラの品種改良に広く利用されることになる。英国では
1912年に「オフェリア」を発表、花容、芳香に優れるだけでなく実をつけ易いことから、多くの品種の親になる。このようなヨーロッパでの品種改良は
第2次世界大戦で中断。品種改良の中心は戦火に見舞われない
アメリカ合衆国に移る。
1940年にラマーツが「クリムゾン・グローリー」から「シャーロット・アームストロング」を作り出し、フランスのメイアンの「アントワーヌ・メイアン」がアメリカで「ピース」と名づけられ
1945年に売り出された。「ピース」は大きな花をつけることから、「巨大輪」とよばれ品種改良に利用されるともに、戦後のバラの流行を作り出すことになる。
フロリバンダ系(FL)の誕生
デンマークのポールセン兄弟が従来ある「ドワーフ・ポリアンサ系」の花を大きくし、北ヨーロッパの寒さに耐えれる品種の作出しようとしていた。1911年にポリアンサ系の「マダム・ノババード・レババースル」とランブラー系の「ドロシー・パーキンス」をかけ合わせ「エレン・ポールセン」を作り出し、続く1924年にはポリアンサ系の「オルレアンローズ」とハイブリット・ティ系「レッドスター」の交配で「エルゼポールセン」「キルステンポールセン」などを出し、「ハイブリット・ポリアンサ系」と命名された。これを受けてアメリカのブーナーなどが改良を続けこの系統は「フロリバンダ系」と命名される。さらにドイツのコルデスが1940年に「ピノキオ」を発表。ブーナーがこれに追随して「レッド・ピノキオ」「ラベンダー・ピノキオ」を発表しこれがフロリバンダ系の完成と言われる。その後フロリバンダ系の改良は色の多様性を求めることに重点がおかれ1944年にはドイツのタンタウが「フロラドラ」、1949年ブーナーが「マスケラード」を、1951年にコルデスが「インデペンデンス」が作出。新しい系統であるが「フロリバンダ系」は切花ではスプレーバラとして利用されるため多くの品種が作り出されることになり、またハイブりット・ティとの交配も試みられ、益々多様性を強めている。
青いバラへの挑戦
「青いバラ」はオールド・ローズの「カーディナル・ド・リシュリュー」などが「青のバラ」として知られていた。しかし、純粋な青さを湛えたバラを作り出すことは世界中の育種家の夢であり、各国で品種改良競争が行われた。
1957年アメリカのフィッシャーが「スターリング・シルバー」を出し、「青バラ」の決定版といわれた。しかし、競争はやまず、
1957年にはタンタウが一層青い「ブルームーン」を発表。それにコルデスが「ケルナーカーニバル」を出し、フランスのメイアンは「シャルル・ドゴール」を発表と熾烈な品種改良競争を展開。バイオテクノロジーの発展でバラには青の色素がないことが判明すると、「青いバラ」の作出は「
遺伝子組み替え」などの
バイオテクノロジーにゆだねられる。そして、青色色素であるデルフィニン/デルフィニジン(
アントシアニン/アントシアニジンの一種)を作り出すために必要な酵素の遺伝子をパンジーから遺伝子導入することにより、成功したと
サントリーが2004年6月30日に発表した。
日本におけるバラ
日本はバラの自生地として世界的に知られており、品種改良に使用された原種のうち3種類は日本原産である。
古くはバラは「うまら」「うばら」と呼ばれ、『万葉集』にも「みちのへの茨(うまら)の末(うれ)に延(ほ)ほ豆のからまる君をはかれか行かむ」という歌がある。『常陸国風土記』の茨城郡条には、「穴に住み人をおびやかす土賊の佐伯を滅ぼすために、イバラを穴に仕掛け、追い込んでイバラに身をかけさせた」とある。常陸国にはこの故事にちなむ茨城(うばらき)という地名があり、茨城県の県名の由来ともなっている。
このように日本人にはゆかりのある植物といえる。
江戸時代には身分を問わず園芸がはやったが、バラも「コウシンバラ」「モッコウバラ」などが栽培されおり、江戸時代日本の訪れたドイツ人ケンペルも「日本でバラが栽培されている」ことを記録している。また与謝蕪村が「愁いつつ岡にのぼれば花いばら」の句を残している。
また、ノイバラの果実は利尿作用があるなど薬用に利用された。
このように日本人にゆかりのある植物であるが、バラがいまのように「花の女王」として愛好されるようになるのは明治以降である。
明治維新を迎えると明治政府は「ラ・フランス」を農業試験用の植物として取り寄せ青山官制農園(いまの東京大学農学部)で栽培させた。馥郁とした香りを嗅ごうと見物客がしばしば訪れたので株には金網の柵がかけられたという。
まだ、バラは西洋の「高嶺の花」であった。
その後、バラが接ぎ木で増やせることから、優秀な接ぎ木職人のいる、東京郊外や京阪神地域の郊外で栽培が行われるようになった。バラは華族や高級官僚といったパトロンを得て、日本でも徐々に愛好され始め生産量も増え始めた。
大正から昭和のころには一般家庭にも普及し、宮沢賢治が「グリュース・アン・テプリッツ(日本名:日光)」を愛し、北原白秋の詩にもバラが登場している。
第二次世界大戦で日本でもバラの栽培より野菜の栽培が優先され、生産が停滞する。
しかし、戦後すぐの1948年には銀座でバラの展示会が開かれた。さらに1949年には横浜でバラの展示会が開かれ、そのときにはアメリカから花を空輸して展示用の花がそろえられた。
鳩山一郎や吉田茂などのバラの愛好は、戦後日本でのバラの普及に大いに貢献した。このように戦後の高度成長の波に乗り、バラは嗜好品として庶民にも普及していき、日本でも品種改良が行われるようになった。また、鉄道会社が沿線開発の一環として、バラ園の造営を行うようになり、各地にバラ園が開園された。
日本ではバラは花卉としてはキク、カーネーション、とならぶ生産高があり、ハウス栽培で年中市場に供給されるようになった。
また、園芸植物としてのバラは、ハイブリット・ティの花のできばえを競う「コンテスト」などが、行われている。
その一方で最近ではガーデニングの流行などで、オールドローズなどが植栽素材に再び注目を集め、多くの人に愛好されるようになった。
バラの種類
バラの分類方法は定まったものがなく、以下に示すのは一例である。
オールドローズ
- 1867年に発表された「ラ・フランス」より前の品種をいう。野生の原種であるワイルドローズを含めるが、含めない場合もある。主な系列としてガリカ、ダマスク、アルバ、ケンティフォリア(センティフォリア)などがある。優雅な花形に豊かな香りが特徴である。オールドローズには一季咲きの品種が多い。
モダンローズ
- 「ラ・フランス」以降のハイブリッド・ティー系、フロリバンダ系など。現在一般的に見られるもので、主として四季咲き性、華やかな花形と色彩が特徴である。
イングリッシュローズ
- 1969年にデビッド・オースチンが発表した、オールドローズとモダンローズの特徴を合わせ持つ新たな系列。モダンローズに含める場合もある。
このほか、樹形によってブッシュ(立木)、シュラブ(半つる性)、クライミング(つる性)などに分類する方法もある。また小型のものはミニチュアローズといわれそのコンパクトさは多くの人々を惹き付けている。花の形には、剣弁高芯咲き、ロゼット(多芯)咲き、カップ(盃状)咲き、一重咲き等その形状別に分類がなされ、バラを選ぶ際の重要な要素となっている。
系統別の分類
原種
- 原種・栽培原種
- Species
- ロサ・アルバ(Rosa alba )
- ロサ・カニナ(Rosa canina)
- ロサ・ガリカ(Rosa gallca)
- ロサ・キナモメナ(Rosa chnamomea )
- ロサ・ケンテフォリア(Rosa cettifolia)
- ロサ・スピノッシマ(Rosa spinosissma)
- ロサ・ウィクライナ(Rosa wichuraiana)
ほか
- 中近東の原種
- ロサ・フェテダ(Rosa fetlida)
- ロサ・フェテダ・ビコロール(Rosa fetida bicolor )
- ロサ・フェテダ・ペルシアナ(Rosa fetida perciana)
- ロサ・フェッシコアナ(Rosa feicikoana)
- ロサ・ダマスケナ(Rosa damascena)
- 中国の原種
- コウシンバラ(Rosa chinensis)
- ナニワイバラ(Rosa liviegata)
- ロサ・ギガンティア(Rosa gigantea)
- ロサ・プリムラ(Rosa primula)
- ロサ・ムルガシー(Rosa mulluganii)
- ロサ・ケセカア・プテラカンサ(Rosa sericana pteracantha)
- ロサ・ユゴニス(Rosa hugonis)
- ロサ・バンクシアエ・ルテア(Rosa banksiae lutea)
ほか
- 日本の原種
- イザヨイバラ(Rosa roxburghii)
- サンショウバラ(Rosa roxburgii 'hirthua' )
- タカネイバラ(Rosa aciculaisis nipponensis)
- ノイバラ(Rosa mulitiflora)
- テリハノイバラ(Rosa wichuraina)
- ハマナス(Rosa rugosa)
- サクライバラ(Rosa uchiyamana)
- モリイバラ(Rosa jasminoidesu)
- フジイバラ(Rosa fujisanesis)
ほか
- アメリカの原種
- ロサ・キナモメナ(Rosa cinemoemea)
- ロサ・ニティダ(Rosa nitida)
- ロサ・カリフォルニア(Rosa california)
ほか
- 品種改良に使用された原種
- ロサムルティフローラ(ノイバラ)(Rosa mulitiflora)
- ロサ・ウィクライアナ(Rosa wichuraiana )
- ロサ・キネンシス(Rosa chinensis)
- ロサ・ガリカ(Rosa gallca)
- ロサ・アルバ(Rosa alba)
- ロサ・ダマスケナ(Rosa damacena)
- ロサ・ケンティフォリア(Rosa centifola)
- ロサ・フェティダ(Rosa foetida )
- ロサ・モスカータ(Rosa mosscata)
- ロサ・ギガンティア(Rosa gigantea)
以上11種
園芸品種
- アルバ(Alba)
- ケンティフォリア(Centifolia)
- ダマスク(Damask)
- ガリカ(Gallica)Image:Rosa sp.6.jpg
- ブルボン(Bourbon)
- ノワゼット(Noisette)
- ティ(Tea)
- チャイナ(China)
- モス(Moss)
- ポートランド(Portland)
- ポリアンサ(Polyanyha)
- ランブラー(Rambler)
- エグラテリア・ローズ(Eglanteria Roses)
- ハイブリット・ミセラネアオス(H.Macrantha)
- ハイブリット・パーペチュアル(H.Perpetual)
- ハイブリット・ムスク(H.Musk)
- ハイブリット・モエシー(H.MoyesiiI)
- ハイブリット・センパビエレン(H.Semperviren)
- ハイブリット。ムルティフローラ(H.Multiflora)
- ハイブリット・ティ(Hybrid Tea)
- フロリバンダ(Floribunda)
- ミニチュア(Miniature)
- つるハイブリット・ティ(Climbing Hybrid Tea)
- つるフロリバンダ(Climbing Floribunda)
- つるミニチュア(Climbing Miniature)
- つる(Climbing)
- シュラブ(Shrub)
- イングリッシュ・ローズ(English Roses)(シュラブに分類されことがある)
- 修景用(Landscape Roses)
- ハイブリット・コルデシー(H.Kordesii)
など
花弁の数による分類
花型による分類
- 平咲き
- カップ咲き
- ロゼット咲き
- クオーター咲き
- ポンポン咲き
- 剣弁高芯咲き
- 半剣弁高芯咲き
- 丸弁抱え咲き
関連事項
バラ園
育種家と研究家収集家
その他
慣用句
- 慣用句「青いバラ(the blue rose)」=かなわぬ望みの意
- 慣用句「under the rose」=秘密の意
- 慣用句「Run for the roses」=ケンタッキーダービーの意
}}
バラ科 | 花 | 観賞用樹木
Rosa | Rosen-slægten | Rosen | Rose | Rosa | Rose (fleur) | ורד | Rosa (botanica) | 장미 | Bunga mawar | Roos (plant) | Róża (krzew) | Rosa | Rosor | 蔷薇属