トランシーバー transceiver とは、ひとつで送信機能と受信機能を兼ね備えた無線機または回路ブロックである。回路ブロックの場合 TRX と略されることもある。送信機を表す transmitter と受信機を表す receiver とを合わせた造語である。一般的に、無線の送信機と受信機との間では、回路に共通した部分が多いため、共用できる回路を共用し、一つの機器として送信機と受信機との機能を持つように作られたものである。
なお、無線にあまり興味のない人の間では「片手で持って使う携帯型無線機」に限った意味に使われることがあるが、誤用であり、「据え置き型トランシーバー」も何ら矛盾した存在ではない。誤用である根拠としては以下のものが挙げられる。
- 造語成分に「携帯」を表すものがない。
- 英語の transceiver は携帯型でないものを含む。
- 日本語の「トランシーバー」も無線専門家や無線機メーカー、アマチュア無線家の間では携帯型に限らない意味で使われている。
広辞苑でも第4版までは「携帯用無線通話機」との誤った語釈だったが、第5版では訂正されている。
本項では、トランシーバーの中でもアマチュア無線機と呼ばれる無線機について記す。アマチュア無線では、愛用するアマチュア無線機(トランシーバーに限らない)のことを愛着を込めて一般的にリグ(rig)と呼ぶ。
形状による分類
トランシーバーは形状、大きさにより、次のように分類できる。
- 固定機
- 室内で机の上などに設置して用いる機種。モービル機との兼用を意識した機種ではAC100Vの直接入力ではなく、DC12Vを出力する外付けの安定化電源装置を必要とする場合がある。さらに大型の機器になると床上に直接設置することもある。
- ポータブル機
- 固定機よりもやや小型の機種。可搬型。持ち運んで利用できるように肩掛けバンドなどが付いていたり、電池での使用に対応したりしている。弁当箱のような形状であったことから、「弁当箱」と呼ばれることもあった。RJX-601やTR-2200が有名である。アイコムがIC-2Nを発売するまではポータブル機が「ハンディ・トランシーバー」と呼ばれていた。
- ハンディ機
- 手で持って使えるような小型の機種。「ポケット機」または「ポケトラ」とも呼ばれていた。アマチュア無線用ではカードサイズを謳い文句にした超小型の機種もある。近年は専用のリチウムイオン電池を内蔵し、長時間の使用が可能な製品が多く見られる。
- モービル機
- 自動車に取り付けて用いる機種。近年は本体と操作パネルを分離する形式の製品が多い。
電波型式
トランシーバーには、用途により、
CW、
AM、
FM、
SSB、
RTTYなど多くの
電波型式をサポートした機種や、単一の電波型式のみをサポートした機種がある。複数の電波形式をサポートした機種では
モードスイッチにより、送受信する電波型式を切り替える。
周波数の設定
複数の
周波数を送受信できるトランシーバーでは、いくつかの方法で送受信の周波数を切り替えることができる。特にアマチュア無線用のトランシーバーでは、複数の
周波数帯を切り替えて送受信することができる。
バンドスイッチでこれを切り替える。
メインダイアル
メインダイアルは、周波数を連続的に切り替えることができる。メインダイアルを回すことにより、古くは
VFO、最近は
PLLシンセサイザ方式により可変周波数
発振回路の周波数を操作する。SSB方式では周波数を数十Hzの精度で設定しないと良好な音声受信ができないため、微調整しやすいように大径のつまみ(ダイヤルノブ)が採用されることが多い。
セレクタスイッチ
セレクタスイッチ(チャンネル切替スイッチ)により、送受信する周波数を飛び飛びの値に切り替えることができる。FMで通信するアマチュア無線用トランシーバや、
CB無線機などはこの方法である。セレクタスイッチにより、PLLシンセサイザの発振周波数を切り替える、あるいは発振回路の定数の異なる
水晶振動子や、定数の異なる
コイルまたは
コンデンサを切り替えることにより周波数を変える。PLL方式の場合は周波数設定を、回転スイッチだけでなく、UP/DOWNボタンや周波数の各桁ごとに設けたスイッチで設定することもできる。
水晶振動子の差し替え
ソケットに、希望する送受信周波数を発振する
水晶振動子を差し替えることで、周波数を変える。1960年代には、50MHz帯以上で周波数が安定したVFOを自作不可能なアマチュア無線家は、やむなく水晶方式で固定送信周波数の運用を行った。
クラリファイア
通信中に相手局の周波数が変動した場合に、それに合わせて自局の周波数も変化させると正常な通信ができなくなる可能性がある。そのため、送信周波数はそのままで受信周波数のみを変化させる回路があり、
クラリファイアと呼ばれる。
八重洲無線がこの呼称を使用しているのに対し、
ケンウッドと
アイコムではRIT―Receiving Incremental Tuningと呼称。また送信周波数に対し同等に作用する回路も独自に開発、こちらはXIT―Transmission Incremental Tuningとして内蔵。
スプリット
送信と受信で異なる周波数を用いる方式を
スプリットと呼ぶ。1局のCQ呼出しに多数の局が応答する交信において呼出側が受信する周波数の範囲を指定して識別をしやすくする場合、各国の法制度上電波を発射出来る周波数帯が違う場合(例:7MHz帯はアメリカと諸外国で電話バンドの位置が大幅に違う)などに用いられる。送受信で異なる周波数帯を用いる交信は
クロスバンドと呼び、双方向同時(全二重)通話などに用いられる。
送受信切り替え
PTTスイッチ
一般的にトランシーバーは
電話と異なり、同時に
送信か
受信のどちらかしかできない「単信式」の通信方式を用いる。これを切り替えるのが
PTT(Push To Talk)スイッチである。PTTスイッチを押すと送信、放すと受信に切り替わる。アマチュア無線再開当時、従来の送信機受信機別体の設備ではいくつものスイッチを操作して切り替える必要があり、
リレー一つで切り替えられるようになったのは大きな進歩であった。
PTTスイッチを使わなくてもマイクから入力された音声を感知して自動的に送受信を切り替える機構をVOX(Voice Operated Relay)と呼ぶ。
電信において電鍵をON(マーク)にした時に送信、OFF(スペース)にしたときに受信がされるよう瞬時に切り替える方式をフルブレークイン、電鍵のマークが途切れて数秒後に受信に切り替える方式をセミブレークインと呼ぶ。フルブレークインの方が瞬時に電波の状況を把握できるなどの長所があるが、大出力の送信機ほど機能の実装は難しくなる。
トランシーブ動作
トランシーバーではないが、送信機と受信機とが別々にある場合、通常連続可変の受信周波数数と同じ周波数で送信機が動作できるように、受信機の可変周波数発振器(VFO)の出力を送信機に供給し、あたかも別筐体のトランシーバーのように動作させることがある。これを
トランシーブ動作という。
受信機能
ノイズブランカー
自動車の点火プラグ、
雷などから発生するパルス性のノイズを電気的に除去する回路が
ノイズブランカーである。
FMの受信では、無信号時にザーという耳障りな雑音が聞こえるため、これを消去する回路を
スケルチと呼ぶ。
送信機能
スピーチプロセッサー
振幅変調の送信では、一般に音声信号の振幅の平均値が大きいほど了解度が増す。そのため音声信号の電圧の低い部分を増強することで振幅の平均値を増加させる回路を
スピーチプロセッサーと呼ぶ。これにより出力は増加するが、音質は逆に低下する。また過変調が発生しやすい。
関連項目
無線 | 通信機器
Transceiver | Transceiver | Transceiver | Luuri | Émetteur-récepteur | Transceiver | Transceiver