ステロイド皮膚症(ステロイドひふしょう)とは、ステロイド(この場合は糖質コルチコイドを指す)剤を長期に渡って使用し続けることによって起こるとされる一群の副作用が現れた状態の皮膚の症状名。主として外用剤において問題となるが、まれに内服、皮下注射においても全身性の皮膚萎縮などをきたす症例が存在する。これは正式な医学用語ではなく、定義もはっきりとしないものであるが、アトピー性皮膚炎に関する代替医療業者や、その患者の間では広く用いられている言葉である。ここではステロイド外用剤の副作用を指す語として一般的な説明をする。
とはいえ製薬メーカーによるステロイド外用剤の添付文書では「ステロイド皮膚症」という用語そのものは使用されることは少ないものの、副作用としておおよそ上述の‐症状‐にあるようなものがあげられている。
皮膚科学会ではステロイド外用剤はアトピー性皮膚炎をはじめとした炎症性皮膚疾患にひろく効用を確立された薬剤であり、デメリットも考慮した上でメリットを認めて使用しているとしている。もちろん薬事法認可の薬剤である。一般の患者に対する副作用の説明では、大量使用時の内科的影響や皮膚萎縮など明らかに皮膚炎症と異なった症状に焦点を当てることが多い。
アトピー性皮膚炎の患者の多くは皮膚科学会の指導に基づく医師の治療を受けているが、一時的に軽症になってもまた重症化したりなどなかなか完治には至らないこともあるため、治療法に疑問を抱いている患者も少なくない。
いわゆる「アトピービジネス業者」は、そういった疑問に対しステロイド薬の害を過剰に煽り、自らの利益につなげようとしている。
ステロイド剤の副作用は、症状によっては原疾患の症状と鑑別が困難であり、またときに原疾患と複合的に病態を形成するとされる。そのため、ほぼ同じ症状であっても立場によって原疾患か副作用かの判断が分かれることが多い。またリバウンドに関しても、単なる治療の中断による症状のぶり返しとの間に明確な判断基準は無い。極端な例では、成人におけるアトピー性皮膚炎の大部分がステロイドの副作用とであるとして「ステロイド皮膚症」とする一部の医師や業者もいる。
皮膚科における診療は主に医師の観察に頼ったものであることに加え、治療者により厳重に管理された状況下で患者を長期観察することも少ないため客観的検討が困難であり、この論争は容易に決着を見ない。
ステロイド外用剤による治療をめぐっては裁判の事例もある。長期に顔面にステロイド剤を使用した患者が、症状の悪化はステロイド外用剤が原因として医師を訴えた。皮膚科の診療システム上、疑いを掛けられた医師自身の書いたカルテを元にかつての症状を類推せざるを得ず、鑑定を担当した医師の意見書が決め手となり患者は敗訴した。客観的検討が難しい疾患の性質と、客観的記録が残っていないことの多い皮膚科の診察のあり方の問題点が浮き彫りとなった裁判といえる。 またステロイド剤の中止を主として行う医師のもとで、極度に悪化した女児の親が医師に損害賠償を求めた裁判もある。この裁判では非ステロイド治療を行った医師は敗訴したが、ステロイドを否定する立場からは、悪化の原因はさらにその前医のステロイド治療にあり、女児を最終的に治療した大学病院の皮膚科教授による非ステロイド治療に対する弾圧であると主張されている。 法的な立場からは、ステロイドを使用した治療に分があるといえる。
一部の患者たちはステロイドを推奨する医師よりも業者の言い分を信じたり、またはそのどちらも否定し自前の理論を作ったりして、ステロイド薬を拒否し、いわゆる民間療法を探して転々としている。 これらの民間療法には正しく治癒するという保証はないが、ステロイドよりはましとして数多くの人が流れて行っている。
そのような中で、すべて天然成分で製造され、アトピー性皮膚炎に効くという触れ込みで販売された中国製クリームに、通常病院で処方される中で最強クラスのステロイド外用剤と同じ成分が混入されていたこともあった。ステロイド外用剤を忌避しつつも、著効する治療法を求める患者心理を利用した悪質な商法といえる。販売ルートは某宗教団体によって運営されていた。
学会では悪質業者のせいでステロイドの評判が過剰に落ちているとし、正しく使えば本来は危険な薬でないとアピールしている。これを、学会トップは製薬メーカーと繋がっており、売り上げが落ちないように副作用を隠しているとする陰謀論までもが存在するが、医師側はステロイド外用剤の使用は科学的根拠に基づいた保険診療であり、的外れなものだと反論している。また、数十年前に開発がピークに達し、現在では特許期限が切れ、開発社以外の他社による同等品の生産も行われている薬剤に対して大きな利権が絡むとは考えにくいという意見もある。
そして医師の立場は、疑問を感じている患者とステロイド推進の学会にはさまれた非常に複雑なものである。自らステロイドの危険性を訴えている医師も少数いる。つまり、この問題はまだまだ現在進行形のテーマだと言える。
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