Engine.f15.arp.750pix.jpgイーグルのエンジン。エンジン背後のトンネルは炎と排気の逃げ道。左の方にある、吸気口を覆っているガーゼはエンジンとは別の物。]]
開発の歴史
1936年にナチスドイツで開発され、第二次世界大戦中~後期にナチスドイツでジェット推進のミサイルや戦闘機が初めて実用化され、大戦末期には大日本帝国でジェット推進の航空機が開発された。
戦後、枢軸国は軍事に転換できる技術の開発を一時的にではあるが禁止されたため、アメリカやソ連で徹底的に研究され、爆発的に普及した。
2006年現在では旅客機・輸送機といった民間機や戦闘機・爆撃機といった軍用機、それにヘリコプターのほとんどが広義のジェットエンジンを使用している。
原理
燃料としては主に
ケロシン(
灯油)が使用される。
燃焼に際し、酸化剤を内蔵するものは、
ロケットと呼ばれ、区別される。現在では、ジェットエンジンはラムジェットエンジンやパルスジェットエンジンを除き、ほとんど全てが、
ガスタービンエンジンの一方式である。
ガスタービンエンジンのサイクルは、2つの断熱変化と2つの等圧変化から成り立つ
ブレイトンサイクルである。
一例として、空気の流れとターボジェットエンジンの構造(セクション)を対応させたものを示す。英語で呼ぶことも多いため英語名も併記する。
| 吸気 | →圧縮 | →燃焼 | →膨張 | →排気
|
空気流入口 (エア)インテイク | →圧縮機 コンプレッサ | →燃焼室 コンバッションチャンバ(CC) | →タービン | →排気口(排気管) イグゾーストノズル(パイプ)
|
圧縮方式
誤解されやすいこと
たとえ航空機がマッハ2の超音速で飛行していても、超音速の気流を吸い込んでそのまま燃焼させているわけではない。
インテークセクションで、マッハ0.4から0.5程度の亜音速にまで減速し、圧力を増加させる(圧力回復)必要がある。
燃焼室へ送り込まれる前段において流入空気は圧縮されるが、その方式は主に「遠心圧縮式」と「軸流圧縮式」に分けられる。圧縮機は通常複数が設けられ、その数は「段数」で数えられる。遠心式圧縮機と軸流式圧縮機が併用される場合もある。
遠心圧縮式
流入して来た空気をエンジン回転軸の遠心方向に90°偏向させ、ディフューザで圧力を高める方式。構造が簡単で、ある程度の圧力比までは軸流式よりも軽量にすることができる。ターボプロップエンジン・ターボシャフトエンジンに(軸流式との組み合わせも含めて)多い。
しかし、遠心式圧縮機は得ようとする推力に比例して半径を大きくとる必要があるため、エンジン直径が大きくなるという欠点を持つ。前面投影面積が大きくなって空気抵抗が増大する。したがって、大推力エンジンにはほとんど用いられない。
軸流圧縮式
F100JetEngine Blade.jpg
流入して来た空気を、エンジン回転軸方向に流れて行く間に数段の静翼(ステータ)と動翼(ロータ)を通過させて圧縮する方式。複雑な構造になるが、エンジン直径を小さくすることが出来る。大型のターボジェットエンジン、ターボファンエンジンは軸流圧縮式を用いている。
ジェットエンジンの種類
ジェットエンジンには以下のような種類がある。しばしば、語尾に「エンジン」を付けずに単に「ターボファン」などと呼ばれる。
狭義には次の2つを指す。
- ターボジェットエンジン(「ピュア」ジェットエンジン)
- ターボファンエンジン
広義には以下のものも含む。
- ターボプロップエンジン
- プロップファン
- ターボシャフトエンジン
- ラムジェットエンジン
- スクラムジェットエンジン
- パルスジェットエンジン
- パルスデトネーションエンジン (PDE)
初期のジェットエンジン
ジェットエンジン黎明期に製造された形式で、前段の圧縮機が存在しないテストモデル。
流入圧縮効果が期待できる速度域では良好な性能を発揮できる。
ターボジェットエンジン
タービンの回転力を利用して空気を圧縮し、そこに燃料を噴きつけ燃焼させ、後方に噴射する排気ガスによってのみ推力を得るエンジン。後述するターボファンエンジンに比べ燃費は悪いが、飛行速度(対気速度)に比例して出力が向上するという特徴をもっている。
実装
ジェットエンジンが実際の
航空機に使われ始めたのはターボジェットエンジンからだった。
近年ではこの方式を使う航空機は減ってきている(2004年現在)。
ターボファンエンジン
ターボジェットエンジンの前方に、直径の大きなコンプレッサともいえる
ファンを取りつけたエンジン。ファンはコンプレッサと同じくタービンによって駆動される。
空気流入口から取り入れた空気すべてを圧縮機→燃焼室へ通すのではなく、一部はファンだけを通過させ、圧縮機などをバイパス(迂回)させ、そのままジェット推進力として利用するのが大きな特徴。
ターボジェットに比べると、
- 燃焼ガスの噴出速度は遅くなるものの、全体として流れる空気の量が増えるため、結果として推力が向上する。
- 燃焼に使わない空気をそのまま推力に利用するため、燃費性能が向上する
- バイパス空気流が燃焼ガスを覆うため、騒音が抑えられる
といった利点がある。ターボジェットを「勢いはあるが、細い噴射」だとすれば、高バイパス比ターボファンの場合は「勢いはさほど強くないが、太い噴射」だと言うことができるであろう。
バイパス比
ファンのみを通過する空気の量 (F) を、燃焼させる空気の量 (C) で割った値 (F/C) を
バイパス比 (By-Pass Ratio, BPR) と呼ぶ。たとえばバイパス比5のエンジンならば、圧縮機→燃焼室へと流す空気の、5倍の量の空気がファンだけを通過している、ということになる。通常、バイパス比が高いほど燃費が良く、亜音速飛行に適した性能特性を持つ。
一般的に、バイパス比が1前後のものを低バイパス比、4以上のものを高バイパス比と呼ぶ場合が多い。今日ではバイパス比が9に迫るエンジンが稼動しており、バイパス比10の大台を突破するエンジンも、ボーイング787などの新型旅客機に向けて開発中である。
実装
2000年代現在のジェット
旅客機の多くが高バイパス比のターボファンエンジンを採用しているが、低バイパス比エンジンを搭載した旅客機も近年まで製造され続け、日本にも数十機単位で存在する(
MD-81/87)。
超音速飛行を行う戦闘機の場合、バイパス比の低い、より高速に適したものが採用されている。たとえば、F-22が装備するF119エンジンのバイパス比は1よりも小さい。これは超音速巡航を可能にするためだが、こうなるとかなりターボジェットエンジンに近い。
ターボプロップエンジン
原理はターボジェットエンジンと同じだが、燃料から得られるエネルギのほとんどを、プロペラの駆動に使うエンジンのこと。
タービンで得られる出力の一部はコンプレッサの駆動に使われるが、残りは減速ギアボックスを介してプロペラを回転させる。このプロペラによる推力が全推力の大部分を占める(ジェット排気による推力も10%程度あると言われている)。
- マッハ0.5程度までの、亜音速域での飛行が可能
- 亜音速域ではターボファンエンジンよりも燃費に優れる
- ターボファンエンジンよりも推力が小さい
- 高速飛行には適さない
といった特徴がある。
出力単位は軸馬力(shp)で表すが、排気推力を併せた総計等価出力(ehp)で表す場合もある。
実装
その特徴を生かして、中近距離の路線に多く就航している。こうした路線は利用者もさほど多くないため、搭乗者数に応じた中小型の機体が使われる。機体重量が大きくないため、大推力のターボファンエンジンは必要としない。2005年現在、日本では
SAAB340Bや
ボンバルディアの
DHC-8 Q300/Q400が就航している。また唯一の日本製旅客機
YS-11もこの方式だった。
一方、ターボプロップエンジンを装備したC-130軍用輸送機は世界中の軍で使用されている。これは燃費の良さからだけのチョイスではなく、ターボファンエンジンよりも排気ガスの温度 (EGT) が格段に低いことを生かし、赤外線追尾式が多い地対空ミサイルから捕捉されにくくすることも企図している。
ターボシャフトエンジン
コンプレッサ駆動用のタービンと別に、フリータービンと呼ばれるタービンを備えるガスタービンエンジン。
フリータービンにより取り出された出力(トルク)はシャフトとギアボックスを介してロータや車輪に伝達される。
実装
主に
ヘリコプタの動力として用いられている。排気による推力はほとんどなく、排気口が真後ろを向いていないものもある。軍用ヘリコプタでは、赤外線追尾式ミサイルへの対抗手段として、排気温度抑制の試みを行っている。
ラムジェットエンジン
超音速の空気流をインテイクで亜音速まで減速し、そこに燃料を噴きつけて燃焼させ、推力を得るエンジンのこと。
純粋なラムジェットエンジンはタービンとコンプレッサの組み合わせを必要としない。
マッハ3程度以上の超音速飛行に向く出力特性を持っているが、音速以下ではほぼ作動しない。そのため、離陸して音速を超えるまでは別の推進方法を必要とする。
実装
初期加速用
ブースターに
固体燃料ロケットを使用したものでは、
アメリカの
巡航ミサイルナバホ、ボマーク(
BOMARC)、
イギリスの
艦対空ミサイルシーダート、
フランスの
空対地ミサイルASMPの例がある。また
旧ソ連/
ロシアでは
ミサイルの動力として多用されており、
地対空ミサイルの2K11クルーグ(SA-4 Ganef)、S-200アンガラ(SA-5 Gammon)、2K12クブ(SA-6 Gainful)、艦隊艦ミサイルのP-270モスキート(SS-N-22 Sunburn)、P-800ヤッホント、
対レーダーミサイル/空対地ミサイルのKh-31(AS-17 Krypton)などの実装例がある。特にKh-31では固体ロケット統合型ラムジェットエンジンが搭載されており、ブースターロケットの固体燃料が燃え尽きた空洞をラムジェットエンジンの燃焼室とする設計が特徴である。
ターボラムジェットエンジン
ターボジェットエンジンを内蔵したラムジェットエンジン。飛行速度に合わせて流入空気をターボジェットエンジン側へ回すか、完全にバイパスしてラムジェット燃焼させるかを、バイパスフラップなどで制御する。
実装
MiG-25戦闘機や
SR-71偵察機などの例がある。
スクラムジェットエンジン
マッハ5以上の極超音速空気流をインテイクで減速し、そこに燃料を噴きつけて燃焼させ、推力を得るエンジン。
減速後も超音速であるところがラムジェットエンジンと違う。分類時は、ラムジェットエンジンに含めることもある。
燃焼速度の速さが要求されるため、燃料に
水素が用いられることが多い。
実装
宇宙往還機の大気内航行用エンジンとしての利用が考えられている。
2004年3月に、
NASAのX-43A 実験機がマッハ7での作動試験に成功した(マッハ7までの加速自体は
ペガサスという
ロケットブースターによるものと考えられている)。さらに2005年同機でマッハ10に迫る、マッハ9.6という世界記録を打ち立てた。
パルスジェットエンジン
空気取り入れ口に設けられたシャッターを高速で開閉することにより、燃焼過程と燃焼ガスの噴出が交互かつ間欠的に行われる方式のジェットエンジン。間欠給排気に由来する独特の排気音が特徴である。
実装
第二次世界大戦時の
ナチス・ドイツで、
V1飛行爆弾(現在で言う
巡航ミサイル)という兵器の動力として採用した。
コア分離型ターボファンエンジン
現在
JAXAが研究中の新型ジェットエンジン。ターボファンの一種だが、圧縮機・燃焼機・タービンを搭載した「コアエンジン」と推力を担う「クラスタファン」を分離しているのが特徴。ファンはコアエンジンからの
圧縮空気で作動する。複数のコアで複数のファンを作動させる。JAXAはコアエンジンからの圧縮空気供給先を切り替えることで
リフトファンから推進ファンに出力を切り換える
VTOLを計画している。
実装
現在設計段階であり、実用機・試作機共にない模様。
その他
- 一部のターボジェット / ターボファンエンジンはアフターバーナーと呼ばれる再燃焼装置を燃焼室後方に設けることにより、ジェットエンジンに欠ける加速性の改善と推力の増大を図っている。主に離陸や超音速飛行、戦闘機動時に用いられるが、高温の排気に燃料を噴射すると言う構造上、非常に燃費が悪い。
- ジェット排気流をコアンダ効果を用いて偏向させ、短距離離着陸性能を向上させる「パワード・リフト方式」が各国で研究された。日本では航空宇宙技術研究所により「飛鳥」が実験機として製造された。ロシアでは実際にこの方式を用いた輸送機 (An-74) が実用化されている。(詳しくはUSB方式などを参照)
- ロールズロイス製スペイなどのように、航空用ジェットエンジンが船舶用や発電用のガスタービンに転用される例も少なくない。
- ターボフロップエンジンにおいて、高い巡航速度の高効率フロップファンの開発計画などもあるが、実現性は乏しい。
関連書籍
- J.L.ケルブロック著、梶 昭次郎訳 ジェットエンジン概論―ガスタービンからスクラムジェットまで-東京大学出版会 ISBN 4-1306-1152-6
- ビル・ガンストン著、見森 昭訳 世界の航空エンジン②ガスタービン編-グランプリ出版 ISBN 4-87687-173-6
関連項目
外部リンク
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