『ゴッドファーザー』(The Godfather)はアメリカに生きるイタリア系移民の一族の栄光と悲劇を描いたマリオ・プーゾの小説、および1972年から1990年にかけて三本つくられた同名のアメリカ映画の題名。
映画も「不朽の名作」として原作以上の高い評価を受け、フランシス・フォード・コッポラおよびマーロン・ブランドの名声を不動のものにし、アル・パチーノやロバート・デ・ニーロをスターダムに押し上げた。
アメリカにおけるイタリア系移民社会でも本国同様に代父・代母とのかかわりが重視されていたため、場合によってはイタリア人社会の実力者であるマフィアのボスに代父を頼み、協力を惜しまない代わりに庇護を求めていたという歴史的背景がある。
マリオ・プーゾの原作は組織の首領であるヴィト・コルレオーネ(Vito Corleone)と彼の家族の絆に焦点を当てている。少年時代に父と兄を殺され、シチリアの寒村を追われアメリカへたった一人で移住した彼は「家族を守り」「友達を信じる」という信条を貫いた結果、政界や芸能界、労働組合の奥深くにまで影響力を及ぼす存在となる。犯罪行為に手を染めながら同民族の力を借りてアイデンティティを保ち、周囲の恐怖と尊敬の視線を集める彼はミステリアスな「ゴッドファーザー」である。
ドラマは古い価値観が壊れた第二次世界大戦直後から始まり、ここではコルレオーネ・ファミリーだけでなく、それに関わるアメリカにおけるイタリア人社会の変質「イタリア人からアメリカ人へ」歩もうとする姿にもに光を当てている。原作で歌手のジョニー・フォンティーンやソニーの愛人だったルーシー・マンティニにも多くの筆が割かれているのもこの新世代群像であり、その中には「新しいドン」への道を歩むことになるヴィトの三男マイケルもいる。
一方、映画の『Part I』では、ほぼ原作に忠実であるが、ヴィトーの前半生と他のイタリア人社会の住人の描写が削られており、よりマイケルを中心としたコルレオーネ家族の絆の物語になっている。『Part II』、『Part III』では、ヴィトーの前半生とマイケルの現在を対比させ、家族(ファミリー)を守るためにマフィアとなり、組織(ファミリー)を作ったヴィトーと、家族を守るためにマフィアを継いだが、いつの間にか組織を守るために、家族を失っていくマイケルの姿を対照させている。
『ゴッドファーザー』は単なる組織犯罪やギャングの物語ではなく、家族の愛憎とファミリーを守ろうとする男たちの姿が主要なテーマになっている。
映画版では『Part II』においてヴィト・アンドリーニ(Andolini)という名前であった少年が家族を殺されて逃れ、アメリカにやってきた際、エリス島にあった移民局での手違いから出身地名であるコルレオーネ村を取ったヴィト・コルレオーネという名前になる次第が描かれている。(役人が異文化の住民の姓名を適当に変えてしまうことは移民局ではよくあったことであった)。
パラマウントは監督としてイタリア系のフランシス・フォード・コッポラに白羽の矢を立てた。当時のコッポラは批評家からの評価は高かったが、興行的にはまだ成功がなかったいわばマイナーな監督であった。コッポラはプーゾと組んで脚本を作っていったが、脚本の改稿が進む中で徐々に物語の中心が父ヴィトから息子のマイケルに移っていった。
キャスティングにおいてヴィト役にはプーゾが想定したマーロン・ブランドが起用された。ブランドは当時すでに大物俳優であったが、落ち目と見られており、さらにわがままで現場をかき乱す俳優だと思われていたのでプロデューサーたちは敬遠した。ブランドは同作品の企画を知り、ヴィト役に自分を売り込むため、自分のイメージ・フィルムをコッポラに送った。このとき口に綿を含み、渋みの演技が行えることを強調した。この努力が功を奏し、彼は見事ヴィト役を獲得することが出来た。
さらに製作者側はマイケル役に当時若手の売れっ子俳優ロバート・レッドフォードを起用したかったが、コッポラは無名のアル・パチーノこそが適役といって譲らず、もめにもめたすえにイタリア系(母方の先祖はシチリア島出身)のパチーノの起用にこぎつけた。この配役は結果的に成功だったと考えられている。
また若手であったコッポラをサポートするために、スタッフにもトップクラスの人材が集められることとなった。コッポラは彼らとの綿密なミーティングを重ねた。撮影中はコッポラの作家主義により、トラブルも多かったが、結果的には最高の結果を残すこととなった。その中でも撮影監督であるゴートン・ウィリスと美術を担当したディーン・タラボリスの功績は素晴らしく、壮大でドラマチックなストーリーを、完璧な時代考証で彩り、かつ格調高い映像美を提供した。特に、ゴートン・ウィリスはトップシーンを、当時としては型破りともいえる陰影で表現し、巷の評判をさらった。
1972年に映画が公開されると爆発的なヒットとなり、『ジョーズ』(1975年)に破られるまでのハリウッドの興行収入記録を打ち立てた。
マーロン・ブランドはヴィト役での年齢を重ねていく演技が絶賛され、アカデミー主演男優賞を獲得した。アル・パチーノやロバート・デュヴァルなど共演した俳優たちもこの作品によって一気にスターダムにのし上がった。
映画は第二次世界大戦後のニューヨーク市郊外で行われる、ゴッドファーザーであるヴィトの娘コニーの結婚式の場面から始まる。まぶしい太陽の下でにぎやかに繰り広げられる祝宴と対照的に、暗い室内でファミリーの「ドン」(ボス)に、法で裁けない復讐を願うボナセーラという葬儀屋を経営する男の嘆願の静かな場面がコントラストを描いている。ここでファミリーのドンというものが、いかなる存在であるかが示される。長男、次男は父を手伝っているが、三男のマイケルは家族の仕事を嫌い、第二次世界大戦の英雄となり軍務を終えて大学に通っている。
やがて組織同士の争いにより、父ヴィトが重傷を負うことでマイケルが初めて家族のために協力を申し出、兄ソニーが殺害されるにいたって、マイケルが新しいドンとして権力を継承していく姿と、その苦悩が描かれる。
物語終盤、マイケルがコニーの子供の洗礼式に立ち会う場面と、マイケルの指示によってニューヨークの5大ファミリーのボスたちが次々に殺害される場面の静と動、生と死のコントラストもまた映画史に残るワンシーンである。
コッポラは前作でソニー役として起用を検討していたロバート・デ・ニーロに若き日のヴィトを演じさせた。デ・ニーロはこのヴィトの演技で絶賛され、アカデミー助演男優賞を獲得、ほとんど英語を話さずに助演男優賞を獲得した珍しい例となった。『Part II』もまた批評家から第一作に劣らない名作という高い評価を受け、興行的にも大成功を収めた。
本作品は現行シーンと回想シーンが交互に織り交ぜられる形で物語が進行する形式をとっている。そのため、特に字幕でストーリーを追う視聴者には一部、混乱をきたすことがあったとされる。
後にコッポラはテレビ用に二作を再編集して時系列で並び替え、『ゴッドファーザー・サガ』という作品にしている。複雑な時間の流れが整理されて理解しやすい作品となったが、批評家からは評価されなかった。
フランシス・フォード・コッポラは当時、撮影に至るまで、『ゴッドファーザー』は『Part I』、『Part II』で完結すべき作品と考えており、第三作はあくまで、「マイケル・コルレオーネの死」という題(もしくは副題)で語られるべき外伝的な位置づけだった、と後年に語っている。
マイケルの晩年を描き、世界を揺るがす大スキャンダルとなる、ロベルト・カルヴィ暗殺事件を筋のモチーフに用いた作品となった『Part III』は、味わいのある作品ではあるが、アカデミー賞にはノミネートされながらも、ヴァチカンの内幕に対する批判的な内容も災いしてか、結局、受賞には至らず、批評家の評価もかんばしくないまま、興行的に振るわない結果となった。本作ではマイケルの娘を演じたコッポラの娘ソフィア・コッポラの演技に批判が集中したが、後に彼女は『ヴァージン・スーサイズ』や『ロスト・イン・トランスレーション』などの作品で監督としての才能を開花させることになる。
本作でのマイケルには『Part I』、『Part II』の時のような冷酷さ、非情さが消え、物語は彼の懺悔と苦悩を中心に描かれている。総じて評判の良くなかった『Part III』だが、オペラの名作、カヴァレリア・ルスティカーナのストーリーと合わせ、進展してゆくラストシーンの出来が秀逸なため、佳作と評する声も多い。
2004年にランダムハウス社はマーク・ウィンガードナーの手による新作『ゴッドファーザー・リターンズ』を発表した。
続編の『PartII』もまたアカデミー作品賞を獲得したため、正編・続編が作品賞を受賞した唯一のケースとなっている。
また、『ゴッドファーザー』はそれ以外にも5つのゴールデングローブ賞、グラミー賞など数々の栄誉を受けている。
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