Red.pngが網膜に入射すると現れる、赤のクオリア]]
クオリア(複数形 Qualia、単数形 Quale) または感覚質 とは意識が何かの感覚刺激を受け取った時に発生する感触のことを指す。例えば「赤さ」は、特定の波長の光という感覚刺激が目を通じて受け取られた時に発生する感触のことであり、クオリアの一種である。
クオリアとは
Qualia of sound.jpg)が、笛の音のクオリア「ピー」を発生させるまでの流れ。
(左端:笛、 青:音波、 赤:鼓膜、 黄:蝸牛、 緑:有毛細胞、 紫:周波数スペクトル、 オレンジ:神経細胞の発火、 黄:笛の音のクオリア)]]
人が痛みを感じる時、
脳のニューロンネットワークを走る電気信号自体は「痛みの感触そのもの」ではない。脳が特定の状態になると痛みを感じる、という対応関係こそあるものの、両者は別のものである。クオリアとは、ここで、「脳の状態」だけからは説明できない「痛みの感触それ自体」にあたるものである。しかしクオリアそれ自体を
言語で記述することは難しい。
物理学との関係
クオリアは感覚刺激の物理的状態と深い関係を持っている。しかし(2006年時点の物理学が記述できる範囲の)物理状態の中にクオリアは含まれていない。または含まれているのかもしれないが、どの量がクオリアに対応する量なのかは知られていない。(もちろんこれはそう単純な問題ではない。クオリア自体はこの世界内で生起している現象の一つではあるが、けれどもそれを何らかの方程式内の量と対応づけようとするその姿勢自体が、そもそも妥当なものなのかさえ、定かではないからだ)
物理的には、林檎の色は林檎表面の分子パターンによって決定される。そのパターンが林檎にあたる光の内特定の
波長だけをよく反射し、それが眼球内の
網膜によって受け取られると、赤さの刺激となるのだ、ということになる。
この一連の現象の内、次のような点に関しては既にほとんどの研究者の間で意見が一致している。
- どのような分子がどのような波長の光をどれぐらい反射するか
- 反射した後に眼球に入った光がどのように網膜の神経細胞を発火させるか
- その発火がどのような経路を経て脳の後部に位置する後頭葉(視覚野)まで伝達されるか
- その発火はその後どのような経路で脳内の他の部位に伝達していくか
だが一般に、こうした物理、化学的な知見を積み重ねても、「この波長の光が何故あの「赤さ」という特定の感触を与え、この範囲の光はどうしてあの「青さ」という特定の感触を与えるのだろうか」といった問題の解明にはつながらないと考えられている。
このような問題は意識に関する他の諸問題とは特に区別され、
意識のハード・プロブレムと呼ばれている。
批判
科学者、哲学者の中にはクオリアの存在を否定している人もいる。
これはクオリアの存在を認める事が、人間の意識に関して既存の物理学の範囲内で説明できない部分があると認める事につながるためである。
しかしクオリアの存在を否定することは「私は
哲学的ゾンビである」という発言と等価であり、そればかりか「寝ているときも、起きている時も私の意識には何の変化も見られない」とまで言わねばならず、その主張者が本当に哲学的ゾンビであった場合を除けば合理的な主張ではない。
発展
また、クオリアは言語や物理的特性として記述しきることができないことは、
哲学でしばしば議論される幾つかの疑問と結びついている。
- 同じ波長の光を受け取っている異なる人間は同じ「赤さ」を経験しているのか。
- また、人工知能など、一般に意識を持つと考えられていない物が、センサーを通じて光の波長を処理できるとしたら、その時その人工知能には意識があり、人工知能は赤さを感じているのか。
- 生物である犬や魚、あるいは昆虫は、意識があると言えるか。また、その意識は同じクオリアを経験しているのか。
- 自分以外の人間に意識があり、クオリアを経験しているのか。
関連記事
心理学 | 心 | 心の哲学 | 認知科学 | 脳
Qualia | Qualia | Qualia | Qualia