インドネシア語(Bahasa Indonesia)は、インドネシア共和国の国語。この地域の交易語(リンガ・フランカ)であったマレー語の一方言を、国家の共通語としたもの。マレーシアのマレー語と非常によく似ており、互いに通じ合うばかりでなく、現在では正書法もマレーシア語(のラテン文字表記)と共通である。形態論上では日本語と同じく膠着語に分類される。オーストロネシア語族に属する。
もともとインドネシア語を母語として話す人口は非常に少なく、インドネシアの中でも西部のマレーシアに近い所だけであった。国語となっている現在でも、首都ジャカルタの地域の母語はジャワ語であったり、スンダ語など数百もの地域語が存在したりするが、最近ではインドネシア語を母語とする人口がジャカルタを中心に増えているとのことである。東ティモールでも用いられている。
正書法
ラテン文字(ローマ字)を用いる。マレー語と異なり、現在では
アラブ系の文字(
ジャウィ:Jawi)は、特別な場合を除いて基本的には使わない。日本語の
ヘボン式ローマ字と異なるのは、次の通りである。
- c 外来の固有名詞を除き、tch の発音/tʃ/=/tS/。
- e エの発音の場合と曖昧母音の場合とがあり、単語により決まっている。辞書や初心者向けの本のように区別する必要がある場合には、エの発音の時にéと表記する。
- f、v 正しくは f の発音であるが、普通は p の発音になる。
- sy sh の発音/ʃ/=/S/(X-SAMPA)はこう書かれる。
- w v の発音になる。
- ng 日本語東京方言の「わたしが」の「が」の g の発音/ŋ/=/N/(X-SAMPA)で、gともnとも明確に区別される。
- h 母音の後では発音が弱くなったり発音されないことがある。
そのほか、
- ny ニャやニの子音であるが、nにyが続いた音ではなく、別個の発音とされる。すなわち/ɲ/=/J/(X-SAMPA)である。
- kh のどの奥からハッと出す音/x/(?)。現代では/k/で発音することも多い。
そのほか、語尾の閉鎖音ははっきりと開放されず、その舌もしくは唇の形をして終わる。
アルファベットの読み方は次のようである。
| アー | ベー | チェー | デー | エー | エフ | ゲー | ハー | イー | ジェー | カー | エル | エム | エヌ | オー | ペー | キー | エル | エス | テー | ウー | フェー | ウェー | エクス | イェー | ゼッ
|
| A | B | C | D | E | F | G | H | I | J | K | L | M | N | O | P | Q | R | S | T | U | V | W | X | Y | Z
|
Cは、古くから使われている略語の時、「セー」と発音する。例:AC=アーセー=エアコン、WC=ウェーセー=トイレ
アルファベットの並び順は上の通りであるが、辞書によっては、語頭に限りKh、Ng、Ny、Syを別の文字として
- A B C D E F G H I J K Kh L M N Ng Ny O P Q R S Sy T U V W X Y Z
のように並べることがある。すなわち、
- nusuk→nganga
- dingin→dinihari
文法
交易語(
リンガ・フランカ)として外国語として学ばれ話されることが多かったせいか、文法は世界の各言語の中でもきわめて簡単な方に入る。
語形変化
- 印欧語によくみられる、文法上の数、性の区別がないので、意味の変化を伴わない語形変化はない。
- 時制がないので(後述)、当然、時制による語形変化はない。
- 語形変化はもっぱら接頭辞、接尾辞による。原則として語幹は変化しない。
- ただし、後述のように、特定の接頭辞が付いたときに規則的に語幹の語頭の子音が鼻母音化することがある。
- 口語では、接頭辞が付いて語幹の語頭の子音が鼻母音化した後に接頭辞部分が省略され、あたかも語頭が変化したかのような変化をする場合はある。
- 語は必ず規則的に変化する。
- 代表的な語形変化
- 命令文以外の文で、動詞が他動詞として目的語を明確に示すときに語頭にme-を付ける。このとき、語幹の最初の音によって、me-がmen-やmeng-になったり間に挟まれた子音が鼻音化する規則的な変化がある。
- 人称代名詞が前後に接頭辞、接尾辞として付着することがある。
語順
- 基本的に S-V-O であるが、日本語のように主語を省略することがある。
- 修飾語は、被修飾語のあとに付く。例えば orang-hutan (オラン・ウータン)は日本でもよく知られたインドネシア語だが、orangは人、hutanは森であるから、orang hutanは森の人という意味である。
- ただし、数を表す語および時の経過を示す語は前に付く。例えばdua jamは、duaが2でjamが時なので「2×時」すなわち「2時間」である(この2を「基数」という)。jam keduaだと「第2の時」で「2時」の意味になる(この第2を「序数」という)。
- 例を挙げると、sayaは私、tamuは客なので、Saya tamu. ならS-Vであり「私は客です」となり、tamu sayaなら修飾・被修飾の関係となり「私の客」の意味になる。
時制
インドネシア語に文法上の時制はない。過去、現在、未来を言い表したいときには、「昨日」のような時間を表す語を添える。
表現
あいさつなど
- Selamat datang (スラマッ・ダタング) - ようこそ
- Terima kasih (トゥリマ・カシー) - ありがとう
- Sama-sama (サマ・サマ) - どういたしまして(Terima kasihに対して必ず答えられる。)
- Selamat pagi (スラマッ・パギ) - おはようございます
- Selamat siang (スラマッ・スィアング) - こんにちは(など、日中の挨拶)
- Selamat sore (スラマッ・ソレ) - こんばんは(など、夕方の挨拶)
- Selamat malam (スラマッ・マラム) - おやすみなさい(など、夜の挨拶)
- Selamat tidur (スラマッ・ティドゥル) - おやすみなさい
- Selamat jalan (スラマッ・ジャラン) - さようなら(立ち去る人に対して)、いってらっしゃい
- Selamat tinggal (スラマッ・ティンガル) - さようなら(留まる人に対して)、いってきます
- Jumpa lagi (ジュンパ・ラギ) - ではまた
- Apa kabar? (アパ・カバル) - いかがですか?、お元気ですか
- Baik (バイク) - 元気です
- Maaf(マアフ) - すみません、ごめんなさい
- Tidak, apa-apa(ティダク・アパアパ) - かまいません、大丈夫です
数
数字の語順は、11~19の例外をのぞけば、日本語と同じく左の桁から右の桁へ、桁の名前を挟みながら読んでいく。ただし、3桁ごと。3桁ごとに
ピリオド (.) を添えて表記することもある。小数点は
コンマ (,) で表す。
- 0 - nol(ノル)
- 1 - satu(サトゥ)
- 2 - dua(ドゥア)
- 3 - tiga(ティガ)
- 4 - empat(ウンパッ)
- 5 - lima(リマ)
- 6 - enam(ウナム)
- 7 - tujuh(トゥジュフ)
- 8 - delapan(ドゥラパン)
- 9 - sembilan(スンビラン)
- 10 - sepuluh(スプルフ) < se=1, puluh= ×10 の意味
- 11 - sebelas(スブラス) < se=1, belas= +10
- 12 - duabelas(ドゥアブラス) < dua=2, belas= +10
- 20 - duapuluh(ドゥアプル) < dua=2, puluh= ×10
- 21 - duapuluh satu(ドゥアプル サトゥ)
- 30 - tigapuluh(ティガプル) < tiga=3, puluh= ×10
- 100 - seratus(スラトゥス) < se=1, ratus= ×100
- 200 - dua ratus(ドゥア ラトゥス)
- 300 - tiga ratus(ティガ ラトゥス)
- 1000 - seribu(スリブ) < se=1, ribu= ×1000
- 2000 - dua ribu(ドゥア リブ)
- 10000 - sepuluh ribu(スプル リブ)
- 100000 - seratus ribu(スラトゥス リブ)
- 1000000 - sejuta(スジュタ)
- 1000000000 - satu miliar(サトゥ ミリアル)
- 0,12 - nol koma satu dua(ノル コマ サトゥ ドゥア)
語
- jalan(ジャラン) - 道
- Jepang(ジュバング) - 日本
- bahasa(バハサ) - ことば
- bahasa Jepang(バハサ ジュバング) - 日本語
- orang - 人(オラン)
- orang Jepang(オラン ジュバング)- 日本人
- saya(サヤ) - 私
- anda(アンダ) - あなた
- nasi(ナシ) - ご飯
- kopi(コピ) - コーヒー
- makan(マカン) - 食べる
- minum(ミヌム) - 飲む
- minta(ミンタ) - 欲しい
- mau(マウ) - したい
日本語によく見られる、同じ音を繰り返す語(畳語という)がよく見られるという共通点もある。
- negara (ヌガラ) - 国 → negara-negara - 国々、諸国
- orang - 人 → orang-orang - 人々
文
- Saya orang Jepang. - 私は日本人です。
- Saya makan nasi. - 私はご飯を食べます。
- Minta kopi. - コーヒーをください。
外部リンク
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