イノンド(Anethum graveolens)はセリ科の一年草。英名はディル(dill)。種子や葉を香味料や生薬として用いる。
イノンド属(Anethum)に属する唯一の種であるが、稀にカワラボウフウ属(Peucedanum)に分類されることもある。西南アジアから中央アジアが原産。成長すると高さ40-60cmに達し、細い茎には細かく裂開した柔らかな葉が互生する。成長した葉は長さ10-20cm、幅1-2mmほどとなる。花は白か黄色で、2-9cmほどの小さな繖形花序をつくる。種子は長さ4-5mm、厚さ1mmほどで、直線またはやや湾曲した形をしており、表面は縦方向に波状のうねりをもつ。
英名(dill)はノルウェー語またはアングロサクソン語で「なめらかな」あるいは「あやす」を意味する言葉「dylle」に由来すると考えられており、これはこの植物が駆風薬として痛みを和らげる作用を持つためである。
イノンドはセム系言語では「シュビット」と呼ばれており、タルムードには十分の一税をイノンドの種子、葉、または茎で支払うことと命じた箇所がある。新約聖書にはパリサイ人がイノンドで税を支払っていたことを記述する場面がある(「マタイによる福音書」23章23節)。
シダ状の葉にはキャラウェイのような芳香があり、今日でも香草として、Gravlax(酢漬けの鮭)、ボルシチなどのスープ、ピクルスなど、様々な料理に使用されている。ただし、イノンドの葉は乾燥するとすぐに香りが失しまうため、新鮮なうちに使用する必要がある。
種にも強い香りと味があり、スパイスとしてカレーやピクルスなどに使用する。また、種は薬用としても使用される。
種を収穫するときは、種が熟成しはじめたら花頭を茎から切り取り、紙袋に上下逆に入れて乾燥した暖かい場所に一週間ほど置く。茎から離れた種は密閉容器に保存する。種子は3年から10年は生育可能である。
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