えら(鰓、腮)とは、水中で生活する動物が、水中の溶存酸素を取りこみ、体内の二酸化炭素を排出して呼吸(ガス交換)を行うための器官である。
他方、水中ではプランクトンやデトリタスといったセストン(懸濁物:けんだくぶつ)を食べる動物も多く、そのような動物では、鰓が摂食器官としての働きも兼ねており、鰓が水との接触面積を増やすのは、そちらの方でも効果が大きい。
アサリやハマグリなどの二枚貝では、外套腔に通じる水管(取水管、出水管)が目立っている。これらの水管は外套膜の後端がのびたもので筋肉が発達しており、オオノガイやミルクイ、トリガイなどでは特に大きく発達する。マテガイなどは自切能力があり、捕食者に食いつかれると水管だけが切り離される。二枚貝は通常砂の中などに潜って生活しているが、この水管によって、外套腔の中の鰓に新鮮な水を送ることができるようになっている。二枚貝の鰓は非常に複雑な構造に発達しており、呼吸だけでなく、水中の餌を濾し取って食べる役割も兼ねている。
タコやイカなどの頭足類は、もともと2対の鰓を持っていたと考えられている。今日でも原始的な形態を保つオウムガイは2対4枚の鰓を持つ。しかしタコやイカではこの鰓が1対2枚にまで減少している。胴と頭の間から、鰓のある外套腔へ海水を取りこみ、漏斗から水を吐き出す。敵に襲われた時は漏斗から勢いよく水を噴き出すことでジェット噴射の要領ですばやく飛び退くことができる。
しかしカゲロウ、カワゲラ、トビケラ、トンボなどは、水生昆虫として水中で生活する幼虫期に鰓呼吸をするため、この期間は息継ぎをせずに生活することができる。これらの鰓は気管鰓と呼ばれ、薄い袋状、あるいは細かい糸状に突出した体表の突起の中に空気の入った気管が入り込んだ構造になっている。気管鰓の中の気管内部の空気と昆虫が生息する水の間で酸素と二酸化炭素のやり取りが起こり、この気管内の空気と全身の組織の間でガス交換が行われる。
カゲロウの幼虫は腹部に葉状の鰓、カワゲラの幼虫は胸部に房状の鰓を持つ。水中にミノムシやクモのような巣を作るトビケラ類も腹部に鰓を持つが、目立った鰓を持たないものもいる。
トンボでは、イトトンボ類やカワトンボ類の属する均翅亜目が尾部に3枚の外鰓を発達させている。その他のムカシトンボ亜目や不均翅亜目のトンボは目立った鰓を持たないが、直腸の内壁の構造が複雑化して気管鰓となっており、尾部から水を吸いこみ、直腸内で気管との間でガス交換を行っている。
昆虫としては例外的に、ユスリカの幼虫(赤虫)など一部の水生昆虫は血鰓と呼ばれ、気管が中に入っておらずに血液が循環する鰓を持っている。この鰓を持つ水生昆虫では鰓の中の血液と体外の水との間でガス交換が行われ、酸素や二酸化炭素は血液によって運搬される。
オキアミなど体外に鰓が露出したものもいるが、エビ、ヤドカリ、カニなどは胸部の背甲がひさし状に張り出して脚の付け根の鰓を取り囲み、この中の空洞で保護している。これらの大型甲殻類では鰓が体外に露出していないので、狭い隙間や砂の中に潜る生活に有利になっている。顎脚と呼ばれる頭胸部の付属肢の一部が水を動かす機能を持っており、鰓を納めた空洞の中の水を循環させている。
スナガニやアカテガニなど、成体が陸上生活をするカニは、鰓で呼吸した水をいったん口から吐き出し、胴体の横を伝わせて、脚の付け根部分から再び水を取り入れる循環を行っている。鰓呼吸でありながら水を繰り返し利用することで陸上生活に適応し、かなりの乾燥にも耐えることができる。
サメやエイなどの軟骨魚にも5-7対の鰓穴がある。軟骨魚類の場合は鼻の穴とは別に、目の後ろに噴水孔(ふんすいこう)という穴があり、ここから水を取り入れている。水族館などで生きたエイ類を観察すると、硬骨魚のように口をパクパクすることはないが、目の後ろにある噴水孔が開閉するのがわかる。
硬骨魚では1対の鰓蓋(えらぶた、さいがい)が発達し、5対の鰓を覆っている。口と鰓蓋を交互に開閉させることで水流を起こし、呼吸が効率よく行われる。硬骨魚の鰓は、血管が通っている赤い弁状の器官が鰓弓にたくさん並ぶ構造となっている。この赤い部分を鰓弁(さいべん)といい、ここでガス交換が行われる。
なお、硬骨魚の鰓弁の反対側には鰓耙(さいは)という櫛状の器官がある。これはイワシやアユなどのプランクトン食性の魚で特に長く発達しており、吸い込んだ水の中から餌のプランクトンを濾しとる役割を果たす。プランクトンより大きな動物を捕食するアジやスズキなどの魚では、鰓耙が短く、数も少ない。
また、魚類の鰓には塩類細胞という細胞が多く存在する。これは体と水の間での浸透圧に対抗して塩類の能動輸送をする細胞である。海水魚では海水中へ塩分を放出し、淡水魚では逆に淡水中の塩分を積極的に取り入れ、体内の塩分調節を行う。
カエル(無尾類)では、卵からふ化した直後は外鰓があるが、いわゆるオタマジャクシになると鰓は皮膚のひだがのびた鰓ぶたの内側に取り込まれ、目の後ろに口から取り込んで鰓裂を通過した鰓ぶたの内部の水を外に排出する鰓穴が開く。成体になると鰓が消失する。
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