革靴(かわぐつ)は、動物の皮をなめして革とし、靴に成型したものである。
歴史的にはギリシア・ローマのサンダルをも革靴の範疇に含め、起源とする場合もある。しかしながら、一般には靴の起源は中世のゲルマン人が多用していたブーツに起源を求めることが多い(ブーツを参照のこと)。ブーツは保温性と耐水・耐塵性に優れており、沼地や森林を踏破するには適した履物である。しかしながらより沼沢の少ない地中海沿岸地方における歩行や、着脱には不便をきたした。このため、ブーツのくるぶしより上を切り落とした形の履物が考案され、現在の革靴の原型となった。
一般的な革靴は甲革・中敷・中底・ソール・シャンク・踵で構成されるが、モカシンにおいては甲革と中底が一体化しており、中底が存在しない。また、革靴は製法・デザイン・用途などによって幾つかの分類が可能である。
製造工程
革靴は基本的に以下の工程で製造される。
- 採寸:
使用者の足のサイズを測る。量産される靴は、あらかじめ一般的な使用者を想定してラストを作成する。
- ラスト作成:
採寸したデータを基に、ラストと呼ばれる木型を作成する。
- 断裁:
あらかじめ提供されたデザインに基づき、型紙から各パーツを革から断裁する。
- 縫製:
甲革と内張りをそれぞれ縫製する。
- 内底張り:
ラストに内底を固定する。この段階ですでにシャンクが内底に装着済みの場合もある。通常釘で打ち付けるが、釘の抜き忘れが懸念されることから最近では糊張りも見られる。但し、糊張りだと後工程でずれてしまうこと、きれいにはがれないことなどから、現在でも尚釘うちが主流である。
- 補材挿入:
甲革と内張りの間に、かかと芯・つま先芯など、固さを出したい部位に補材を挿入する。
- 釣り込み:
ソールに補材と内張りが施された甲革を乗せ、内底の上に固定していく。この際、釘が多用される。
- くぎ抜き:
全ての釘を抜き、ラストを甲革から抜き取る。この段階で、ようやく靴の外観が現れる。
- シャンク付け:
シャンクを取り付ける。シャンクはかかとが高くなっている革靴の、足の裏の強度を保つ金属部品である。
- 底つけ:
甲革に底をつける。底のつけ方は多種あるが、下記「製法による分類」を参照のこと。
製法による分類
- グッドイヤー・ウェルト製法:甲革に腰革と呼ばれる細い帯状の革を縫い付け、ソールと縫合する。この際、ソールと甲革の間に中底・シャンクを封入する。ソールと甲革が直接縫い付けられていないため、ソールが磨り減った場合はオールソールと呼ばれる、靴底全体を新たなものに付け替える修理が可能である。但し、構造的に堅牢であるため比較的重く、硬い仕上がりになる。工程も複雑なために他の製法による靴にくらべ、販売価格が高めに設定されることがある。主にビジネスシューズなどに用いられる。
- マッケー製法:甲革とソールをマッケーミシンで直接縫い付ける。グッドイヤー・ウェルト製法に比べ構造が単純で、やわらかく仕上がる。また、グッドイヤー・ウェルト製法に対して軽量化が可能で、廉価化が可能である。主にビジネスシューズなどに用いられる。
- サイドステッチ製法:甲革とソールを直接縫い付けるが、カップソールと呼ばれる縁がせり上がったソールを甲革にはめ込み、外周を縫合する。縫い目が地面に直接触れないので、地表に水分が有っても靴の内側まで水がしみこむことは無いが、びしょ濡れの場合は足がぬれてしまう。テニスシューズなど、スポーツシューズにこの製法が多い。かかとが無い平底になるため、シャンクは入れない。
- ステッチダウン製法:甲革の縁部分を内側に巻き込まず、外側に広げ、中底・ソールに縫い付ける製法。靴の内側に縫い目が存在しないため、しばしば雨靴などにこの製法が採用される。但し、外見上は外側に広がった甲革が美観を損ねるので、高級靴にはこの製法は採用されない。
- ラバー製法:甲革とソールを縫い付けず、糊で接着する最新の製法。糊が改良され、非常に強力な接着力を実現することができた結果実用化された。ミシン工程が存在しないので、靴底から水分が浸入する可能性は無く、雨靴にも採用される。大量生産に最も適しており、一般のビジネスシューズの中では最安価な製法である。
デザインによる分類
- 紐靴:甲革の上部に左右に分かれた部分(羽と呼ぶ)があり、これを紐で結ぶことで足に装着する際の着脱を容易とし、かつ歩行時に脱落することを防止する。
- ストレートチップ:ドレスコードが上位の場合は黒のストレートチップを履くこととされる。
- プレーン:1枚の皮で作り接合部、縫い目などがないもの。
- ストラップ:
- モンク:一枚の革を足の裏から上部へ向かって引き上げ、別の革で蓋をするように縫い付けたデザイン。
- ウィングチップ
- 内羽根:ベロの甲革への接合部が左右の羽の内側にあり、紐によって締められる際ベロの露出が無い、または少ないデザイン。冠婚葬祭等のフォーマルな場には、内羽根式のほうが適したものとされている。
外羽根:ベロの甲革への接合部が左右の羽の外側にあり、紐によって締められる際ベロの露出が多いデザイン。
- スリップ・オン:ローファとも。紐によらず甲革上部とかかとで装着するデザイン。構造的にくるぶしを守ることは不可能であり、開口部は大きくなる。
- モカシン:一枚の革を足の裏から上部へ向かって引き上げ、別の革で蓋をするように縫い付けたデザイン。アメリカ原住民の着用していた靴がこのデザインであったといわれている。
用途による分類
- ビジネスシューズ:一般的に革靴と呼ばれるものの8割程度がこの用途である。歩行性・緩衝性に優れ、また長時間着用を続けるため通気性も優れたものが多い。最近ではソールに通気口を設けてさらに通気性を高めたものもある。
- ドレスシューズ:社交の場などで着用される装飾性・デザイン性の高い靴。エナメルなどで化粧されたものも多く、一般的に高価なものであることが多い。
- スポーツシューズ:特定の用途に特化した靴。スパイクシューズなども含む。
原料
通常革靴は動物の皮をなめしたものを主な原材料とする。主なものは牛・馬・カンガルー・豚・ヤギなどである。このうち、豚は主に甲革の内張に多用される。豚革は日本が唯一輸出している皮革である。
- 牛革:最も一般的な革であり、革靴に使用される革としては最大数量。一般的に成牛の背中から脇までの皮を使用する。カウ・ブル等の分類があるが、基本的に全て肉牛の皮である。表面にエンボス加工を施すことにより、オストリッチ・ワニ・ヘビなどの模造をすることも可能である。外見上の特徴は特に無い。
- 馬革:日本ではあまり使用されないが、欧米で沼地などの狩猟でよく使用される狩猟靴にしばしば採用される。コードバン等と呼ばれる。臀部の分厚い皮が適している。オイルレザーなどに多い。
- カンガルー革:近年特に使用が増えた皮革である。世界的に肉牛の需要が減少し、副産物としての牛革が減少するに伴い、徐々に採用された。基本部位は肉牛と同じく背中から脇であるが、カンガルーは二足歩行するため、革の形状も三角形に近い形を成しており、製造過程で若干の技術的困難が見られた。外見上は牛革と大差なく、見分けはつきにくい。
- 豚革:非常にやわらかいのが特徴で、靴の内革に使用される。3本づつ揃った毛穴が特徴で、一見して豚革と判別できる。
- ヤギ・羊革:表面が平滑で、皺になりやすい。目の細かい毛穴が特徴である。
- その他:このほか、高価なものとしてはオストリッチ(ダチョウ)、ピッコリー(ノブタ)、ワニ・ヘビなどの皮も甲革として使用されることがある。
寸法表示
靴の寸法表示には現在幾つかの標準がある
- センチメートルによる表示:
特定の寸法を持つ足の長さ(かかとからつま先まで)をセンチメートルで表示する。この場合、靴に入る足の大きさを表示するので、厳密には靴の寸法ではなく足の寸法である。22.5cm、25cmなどの表示。端数は通常0.5cm単位であるが、まれに0.25cmのものもある。主に日本・中国などで使用されている表示法で、日本では最も一般的である。
- インチによる表示:
靴の甲革のかかとからつま先までの内側の長さをインチで表示する。6、7 1/2等の表示。端数は1/2インチ単位であるが、『インチ』或いは『"』という単位表示は施されないのが通例。主に米国・南米などで使用されている表示法で、輸入靴の寸法表示で日本でも見ることができる。
- オート麦による表示法:
脱穀したオート麦を並べ、その個数で靴底の大きさを表示する。35、40などの表示になり、端数は無い。通常単位表示はなされず,数字だけの表示となる。主に欧州で使用されている表示法で、輸入靴の寸法表示として日本でも見ることができる。
- 文数による表示:
一文銭を並べて足の大きさを表示する表示法。この場合も、靴の大きさではなく足の大きさを表示する。七文、十文半等と表示する。尚、この表示法は現在革靴にはほぼ見られなくなり、下駄・草履・地下足袋などに僅かに見られるのみである。
- 幅の表示
日本では、足囲の表示としてEの数で表示することがある。日本人の足は西洋人に比べて甲高といわれており、このため洋靴(革靴)は日本人には幅が狭いことが多い。また、日本の寸法表示が足の大きさでなされ、靴の大きさを示す洋靴(革靴)の着用に際して誤解を生じることも多かった。このため、足の大きさを長さだけでなく幅でも表示する必要に迫られた結果である。E、EE、EEEと、Eの数が増えるほど甲高・幅広になる。
関連項目
履物