絹(きぬ、silk)は、蚕の繭からとった天然の繊維。独特の光沢を持ち、古来より珍重されてきた。主成分は蚕が体内で作り出すたんぱく質・フィブロイン。絹の糸を生糸(きいと)ともいう。養殖して作る家蚕絹と野性の繭を使う野蚕絹に分けられる。1個の繭から約800~1200mとれるため、天然繊維の中では唯一の長繊維である。
西暦6世紀に絹の製法は東ローマ帝国に入ったが、品質は中国製に及ばず、生産量も多くはなかった。このため中国絹は依然として東西貿易の重要な交易品であった。中世ヨーロッパではヴェネチアが絹貿易に熱心で、イタリア各地で絹生産が始まり、フランソワ1世 (フランス王)はイタリアの絹職人をリヨンに招いて絹生産を始めた。リヨンは近代ヨーロッパにおける絹生産の中心となる。
日本にはすでに弥生時代に絹の製法は伝わっていたが、品質は中国絹にはるかに及ばず、このため日本の上流階級は常に中国絹を珍重し、これが日中貿易の原動力となっていた。明代に日本との貿易が禁止されたため、倭寇などが中国沿岸を荒らしまわり、この頃東アジアに来航したポルトガル人は日中間で絹貿易を仲介して巨利を博した。鎖国後も中国絹が必要だったため、長崎に中国商船の来航が認められていた。しかし、徳川吉宗は貿易赤字是正のため、日本絹の品質改良を奨励し、江戸時代中期には日本絹は中国絹と遜色がなくなった。幕末開港後は絹が日本の重要な輸出品となる。養蚕業、製糸業は明治以降の日本が近代化を進める上で、重要な基幹産業であった。殖産興業の立役者のひとつである。
第二次世界大戦で日本、中国、ベトナムなど東アジア諸国との貿易が途絶えたため、欧米では絹の価格が高騰した。このためナイロン、スフなど人造繊維の使用が盛んになった。戦後、日本の絹生産は衰退し、現在は中国からの輸入国となっている。
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