主権(しゅけん、仏: souveraineté, 独:Souveränität, Souveränitätsrechte, 英: sovereignty)は、主として憲法・国際法で用いられる概念であり、一般にはジャン・ボダンの学説に溯る概念だと説かれることが多いが、実際にはボダンの前にもレジスト(ローマ法に通じ中央集権論者たる法律家)によって説かれており、ボダンはそれを理論的に集大成したにすぎないという説もある。
また、本来形容詞「souverain(e)」「souverän」の名詞化であり、性質を表す語であり、権利そのものではないから、「権」という訳語を用いることには違和感があるとの批判があるが、ドイツでは文字通り権利を表すSouveränitätsrechteという概念が用いられるため必ずしも間違いとは言えない。ドイツ語のHoheit(hoch: 「高い」の名詞化)やHoheitsrechtも"主権"と訳されることがあるが、もともと東西ドイツ分割時代に、互いの主権SouveränitätまたはSouveränitätsrechteが、真の国家主権ではないというニュアンスでHoheitないしHoheitsrechteの訳語が用いられたのであるから、やはり"高権"と訳すのが正確な翻訳だろう。
日常的な意味は「至上であること」「最高であること」であり、これを軸に法的な概念を理解すると分かりやすい。
しかし、このような中世的秩序は、次のような過程を経て、徐々に崩壊していくことになる:
このような過程を経て生み出された近代国家を形容する語が「主権」である。
まず、ドイツ流の議論では、君主主権説と人民主権(Volkssouveränität)説が対立し、その折衷説として国家主権説が唱えられることになる。この論争は、日本に輸入されて、いわゆる天皇機関説論争となった。天皇機関説は、国家主権説の系であり、天皇機関説論争は、要するところ、君主主権説と国家主権説の論争である。
次に、フランス流の議論では、フランス革命によって君主(ブルボン家のルイ16世 (フランス王))がギロチンで処刑されたために、君主主権説の前提が存在しなくなったので、ドイツ流の三者間の対立とは異なり、ナシオン主権(souveraineté nationale)論とプープル主権(souveraineté du peuple)論の二者の対立となる。強いて比較をするとすれば、さしずめプープル主権論が人民主権説に相似し、ナシオン主権論が国家主権説に相似するといえるだろう。しかし、こちらの議論で重要なのは、特に帰結である。ナシオン主権論は、抽象的なナシオン(nation)が主権者であり、ナシオンが授権した代表者はナシオン(の利益)を代表するのであるから(「純粋代表制(régime représentatif pur)」という)、選挙民による命令委任(mandat impératif)は否定すべきであると考えられることになる。これに対して、プープル主権においては、具体的なプープル(peuple、人民)こそが主権者であり、具体的な人民の具体的利益こそが政治に反映されるべきであり、命令委任は肯定すべきと考えられることになる。
ナシオン主権を体現したのがフランス1791年憲法であり、プープル主権を体現したのがフランス1793年憲法であるといわれる。フランス革命以前のアンシャン・レジームにおいては、三つの身分の利益を代表する身分制議会(これを「三部会」という)が存在していたが、そのような身分社会に対する第三身分の反感が、フランス1791年憲法において、唯一のナシオンを標榜するナシオン主権論に帰着したといえる。
その他:
先に述べたように、近代国際法においては、国家間の「主権平等の原則」が認められており、国際連合もまた、この原則によって立つものとしている(国際連合憲章2条:「The Organization and its Members, in pursuit of the Purposes stated in Article 1, shall act in accordance with the following Principles. * 1. The Organization is based on the principle of the sovereign equality of all its Members.」)。この法的認識枠組によれば、カトリック教皇庁もまた、バチカン市という領土を統治するひとつの「国家」(バチカン市国)であり、他の国家と平等の存在でしかないということになる。ここに中世の法秩序との大きな違いがある。いうまでもなく、この「主権」概念は、対外的な最高独立性という意味で用いられており、そのコロラリーとして、一国一票(one state, one vote)の原則が導かれる。
三つ目に掲げられた条文により、日本国憲法は国民主権原理を採用したと解されている。
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